第45話 メアリーは悩んでいた。 物凄く静江の血が飲みたいと
「人が多い場所は嫌いだから人が少ない場所に住居を買うがそれで良いか」
「もちろんです。私もメアリーさんと同じで人が多いところは苦手なのでむしろ助かります」
念のため、静江にも人が少ない閑散とした場所に住居が欲しいということを伝えると、静江もメアリーと同じ気持ちだったらしくすぐに賛同する。
「地上だとどこに家があるのか分かりづらいからな。静江、少し失礼するぞ」
「えっ、急にどうしたんですか。いきなり抱き上げて」
なにかを探す時は地上よりも空から探した方が効率が良い。
それに人間は空を飛べないらしいから、メアリー自身が抱えて飛ぶしかない。
急にお姫様抱っこされた静江はこれからなにをされるのか分からず困惑する。
「我にちゃんと掴まっておれよ」
「えっ……えぇー……」
メアリー一応静江に忠告してから空へと飛び上がる。
いきなり空を飛んだメアリーに静江は困惑の表情を隠せないでいる。
「なんで空を飛んでいるんですかー」
「だって我は吸血鬼だからな」
「吸血鬼って空も飛べるんですね。凄いです」
静江の質問にメアリーは端的に答える。
吸血鬼は空を飛ぶことができる。鳥と同じように。
それ以上でもそれ以下でもない。
空を飛べる吸血鬼に静江は興奮を抑えきれずにいる。
「静江って夜の時よりも結構子供っぽいんだな。今、何歳なんだ」
「確か十五だと思います」
子供のようにはしゃぐ姿を見て、静江の年齢が気になるメアリーは静江に質問する。
静江の答えが断定形でないことに少し引っ掛かりを覚えたが、すぐにそおの違和感は消えていった。
「凄く若いな」
「そんなことないですよ。私ももう大人です。十五歳ですから」
吸血鬼からすれば十五歳なんてまだ赤ちゃんなのだが、人間だと思う大人らしい。
「そうなのかっ」
衝撃の事実を知ったメアリーは驚きを隠せないでいる。
「でも大人になってすぐにメアリーさんのような優しい人……ではなく吸血鬼ですよね。吸血鬼の方に買われて幸せです。あそこは長くいて良い場所ではありませんから。あそこに長くいればいるほど、最後は悲惨ですから」
静江はメアリーの腕の中で安堵の表情を浮かべる。
性を売って生活している人がどんな最後を迎えるのは想像はできないが、静江の口ぶりからするとかなりせい惨なことは想像できる。
「なのでお買い上げありがとうございます。これから一生尽くしていきますね」
重い空気を感じとったメアリーが、その空気を払拭すべくわざと明るい声を出す。
静江は一生メアリーに尽くしてくれると言ってくれたが、永久の時を生きるメアリーにとってそれはあまりにも短い。
その後、町はずれの集落を発見する。
そこは山と田んぼしかない小さな村らしく、家同士の間隔も広い。
そこで空き家はないかと探していたらすぐに見つかり、メアリーは即一軒家を購入する。
そしてそこがこれから五年間、静江とクラスマイホームになったのであった。
ある時。
メアリーは悩んでいた。
物凄く静江の血が飲みたいと。
もちろん、血を飲まなくても吸血鬼は生きてはいけるが、大切な人の血を飲みたいと思うのは人間でいう好きな人とエッチなことをしたいというのと同じことだ。
やらなくても生きていけるが、好きな人とはどうしてもやりたいという感じだ。
家の中を不必要にうろつくメアリーに、静江は痺れを切らして話しかける。
「いったいどうしたんですかメアリーさん。ずっと家をうろついて」
「べ、別に……なんでもない」
さすがに静江の血を飲みたいと言えなかったメアリーは適当に誤魔化す。
しかし、静江の怪訝そうな視線は緩まない。
「はぁ~、そんな言い方で納得するわけないでしょ。もう一年もいるんですから、メアリーさんが嘘ついていることぐらい分かります。一体、どうしたんですか」
下手な嘘を吐くメアリーに静江はため息をこぼす。
どうして嘘だとすぐにバレてしまったのだろう。
メアリーは不思議に思う。
「どうして一瞬で嘘だと分かるんだ」
もう嘘だと白状したのも同然だが、メアリーはなぜ嘘だとバレたのか静江の聞く。
「メアリ―さんの嘘って凄く分かりやすいですよね。バレバレですよ。嘘をつく時メアリ―さん、物凄く動揺してカミカミなんですから」
静江は少し呆れていたが、答えを教えてくれる。
静江の言うとおり、メアリーは嘘をつくとき動揺しすぎるせいで言葉を噛んでしまう。
自分で言うのもなんだが、確かに分かりやすい。
「私たちもうつがいなんですから。ちゃんと話してください」
静江はメアリーの手を握り、まっすぐメアリーの瞳を見つめる。
静江とこの家に住み始めて一年。
その半年前、メアリーは静江と結婚した。
人間と吸血鬼なのでもちろん、非公式だがお互い夫婦になったのは事実だ。
そして目下、メアリーは静江の尻に敷かれていた。
力は圧倒的にメアリーの方が強いのだが、なぜか静江には勝てないのだ。
こんな相手は初めてである。
「……我は吸血鬼だからな。好きな人の血は飲みたくなるのだ」
「血……ですか?」
メアリーも吸血鬼である以上、吸血衝動はある。
好きな人がいるならなおさらだ。
そのことを静江に告白すると、すぐに理解できなかったらしく頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
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