第44話 もうーからかわないでください
「この子を身請けしたい。大丈夫か? 金ならいくらでもある」
「あんた正気かい。こいつは男で病弱だから安いが、それしか価値はないよ。あたしなら買わないね。もっと良い女や男がいるけど本当に良いのかい。こちらとしては余りものの在庫処分ができて大助かりだけど。いらなくなったからといって返品も返金もできないからね」
この店の人は静江が相当いらないらしく、最初は戸惑っていたがお金を払うととても喜んでいた。
静江を侮辱されたようで殺したかったが、静江がメアリーの手を握り冷静になったメアリーは殴るのを我慢した。
その後、着物は店のものらしく着物は店に返してその代わり、汚くてぼろい着物を渡され外に出された。
「凄くぼろくて汚いな」
「あはは、でも着られるので問題ないですよ」
「そういう問題ではない。まずは着物を買いに行くぞ」
あまりにもぼろい着物に嫌な顔をするメアリーに静江は着れるだけで良いのらしく、ぼろいことをきにしてはいなかった。
これではさすがに静江が可哀そうだと思い、強制的に静江を連行し着物屋に連れていく。
そこで、一番高くて静江に似合いそうな着物を静江にプレゼントした。
「こ、こんな高いもの受け取れません」
「お前はもう我の所有物だ。文句を言うな」
庶民には手の届かない物らしく、静江は遠慮していたがメアリーは無理矢理静江にプレゼントする。
静江はすぐ遠慮して安い物を買おうとする。
その心遣いは嬉しいのだが、メアリーと静江は対等な関係なのだ。
だから変な遠慮はしてほしくない。
「……ではお言葉に甘えて。ありがとうございますメアリーさん」
「うむ。よく似合ってるぞ静江」
「あ、ありがとうございます」
ここは折れる方が早いと感じ取った静江はメアリーにお礼を言い、着物を受け取る。
水色を基調とした着物はよく、静江と似合っていた。
その後、着物屋を出てメアリーは静江と散策する。
「久しぶりの外です。なんかテンションが上がっちゃいますね」
久しぶりに外に出た静江は本当に幸せそうに舞い上がっていた。
それを見たメアリーもつられて幸せな気持ちになる。
「なんか良い匂いがしますね。あそこで団子を焼いてますね」
メアリーたちが団子屋の前を通ると、団子の良い匂いが漂ってくる。
焼いている団子を見て静江はとても声を弾ませていた。
そして静江のお腹の音が鳴る。
どうやらお腹が減って団子を食べたいらしい。
夜の相手をしていた時はあんなにも大人ぽかった静江だが、今はまるで子供のように可愛らしい。
そんな静江を見てクスリと笑っていると静江が頬を膨らませる。
「もうーからかわないでください」
「すまんすまん。なんか可愛らしくてな」
「……でも苦しそうな顔をしているより笑ってくれる方が嬉しいです。少しは楽になれましたか」
静江も本気で怒っているわけではなく、むしろメアリーのことを心配していたようだった。
本当に気の利く男の娘である。
そしてまた静江のお腹の音が鳴り、再び静江は顔を赤く染める。
「静江もお腹を減らしていることだし、買いに行くぞ」
「はいっ」
お腹を鳴らし、食べたそうに団子屋を見ていたら買わないわけにはいかないだろう。
買ってもらえると分かった静江はとても目を輝かせていた。
本当に静江を買って良かったと静江は思う。
その後、団子を二本買って店先の席が空いていたのでそこに座って団子を食べる。
「これはなんという食べ物なんだ。オレンジ色のタレが付いてるぞ」
「これはみたらし団子と言って甘じょっぱい団子です。食べてみれば分かります。とてもおいしいですよ」
初めて見る食べ物にメアリーは食べることを躊躇してしまう。
そんなメアリーに静江は、この食べ物のことを説明する。
これはみたらし団子と言って甘じょっぱい食べ物らしい。
全然想像できないが、食べてみれば分かるので一口食べてみる。
口の中に甘じょっぱさが広がり、噛めば噛むほど団子とみたらしが絡み合い、さらに団子までおいしくなる。
「うまいな、これ」
「でしょ」
メアリーがみたらし団子のおいしさに舌鼓を打つとなぜか静江は嬉しそうに相づちを打つ。
「ずっとあそこにいたのに静江は食べたことがあるんだな」
「はい。たまにお客さんが持ってきてくれましたから」
長い間お店の中に軟禁されていた静江がどうして外の食べ物を知っているのか疑問に思ったメアリーは静江に質問する。
どうやら、お客さんがお土産として静江に持ってきてくれていたらしい。
「やっぱり出来立てはおいしいですね」
でも出来立ては初めてらしくとてもおいしそうに静江はみたらし団子を食べていた。
その後食べ終えたメアリーたちは、住居を求めて街の外に出る。
なぜ街の中ではなく街の外に住む場所を求めたかというと、メアリーは人混みが好きではないからである。
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