第20話 あらら~、静香も男の娘だね~
閑話休題。
「月もやってみるか?」
「わ、私は運動とか苦手なので大丈夫です」
男の娘の静香たちは参加できないから、同性の月を誘ったメアリーだったが運動が大嫌いな月はその申し出を断る。
その時、一瞬メアリーが悲しそうな表情を浮かべたのを静香は見逃さなかった。
「……絶対に本気出しちゃダメだからね。フリじゃないからね」
「……何度も言わなくても分かっとる」
天音がメアリーになにか耳打ちをしているが声が小さくてここまで聞こえない。
メアリーはなにやら呆れているようだが、全くなにを話しているのか想像もつかない。
「それじゃー早速見学というか体験してみますか。まずは軽く体育館を走って準備運動から始めようか。君たちは体育館の端で見ててくれ」
メアリーに指示を出しながら、静香たちの気遣いも忘れない春香。
さすが先輩である。後輩への気遣いも忘れない。
メアリーは女子更衣室で体操着に着替え、アップを開始する。
「……せっかくメアリーさんが誘ってくれたのに、私断っちゃった」
「しょうがないよ。私も女だったら断ってたし。運動は嫌いではないけど部活なみにガチでやりたくないし」
メアリーの誘いを断ったことに申し訳ない気持ちになる月。
月はとても優しい女の子だ。
だから、誘いを断ったせいでメアリーを傷つけてしまったとでも考えているのだろう。
そんな月に静香は罪悪感を覚えさせないためにフォローを行う。
「……メアリーさんって二年生ですよね。それなのに三年生にタメ口で大丈夫なんでしょうか」
静香の隣では帆波が一人、首を傾げていた。
確かにそれは静香も気になったが、特段、春香は気にしていなかったのでスルーしてた。
アップを終えたメアリーは部活見学もとい、体験を始める。
メアリーの運動神経はすさまじく、バレーのことを詳しく知らない静香ですら上手いと分かるぐらい上手かった。
春香にやり方を一度教わるとすぐにそれを吸収し、完璧にこなしていく。
あまりの上達ぶりに、他のバレー部の自分の練習そっちのけでメアリーの練習に目を奪われるぐらいメアリーは凄かった。
「これはいくらなんでも凄すぎでしょ」
部長の春香もあまりにも凄すぎて、顔を引きつっていた。
レシーブをすればセッターの真上にボールを上げたり、セッターになればスパイカーが一番打ちやすい位置にボールを上げたり、スパイクはレシーバーがいないところに完璧に打ち込み、高身長ということもあり、ブロックも次々決める。
それにしてもメアリーは凄かった。
もちろん、バレーの技術も凄いのだがメアリーが凄いのはそれだけではない。
とにかく揺れるのだ。
おっぱいが。
ジャンプをするたびに、激しく上下に揺れるおっぱい。
静香だって年頃の男の娘だ。
女の子のおっぱいに興味があるお年頃だ。
男の娘と女の子の大きな違いの一つがおっぱいだろう。
激しく上下に揺れるおっぱいはまさに催眠術士が使う五円玉の振り子のように目が奪われる。
「あらら~、静香も男の娘だね~。メアリーのおっぱいに釘付けだ~」
「べ、別に違うから。メアリーさんのテクニックを見てるだけだからっ」
「はいはい。そういうことにしておくね~」
急に天音にからかわれた静香は言い淀む。
ニヤニヤしている天音を見てると、どうやら誤魔化しきれなかったらしい。
「大丈夫だよ。男の娘はみんな女の子のおっぱいが好きだから」
「さっきからおっぱいおっぱいうるさいですよ。破廉恥ですよ」
「そういう帆波だって女の子のおっぱい見てるじゃーん。このムッツリスケベ」
「あーまーねー」
なにが大丈夫なのか分からないが、天音は余計なことを静香の耳元で囁く。
あまりにも天音がおっぱいおっぱいと連呼していたせいで、とうとう帆波がキレてしまった。
そんな帆波に意に介せず帆波を茶化し、案の定帆波がそれにキレる。
そもそもたくさん女の子がいる場所でおっぱいおっぱいと連呼する方が破廉恥である。
バレー部の女子部員は真面目に部活をしているおかげで多分聞こえていないと思うが、月は分からない。
さすがに内容がアレなだけに聞いて確認することもできない。
「……はぁ~……」
月はメアリーのプレイを見ながらため息をこぼしていたが、静香は月がため息をこぼした理由が分からなかった。
「それじゃーもう下校時間になるからそろそろ片づけるよ」
「「「はいっ」」」
下校時刻十五分前になり、春香が号令をかけ片付けの準備を始める。
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