第19話 ……まっ、メアリーの場合本気を出せば女子だろうと男子だろうと関係ないけどまぁ良いっか……

「でもメアリーさんが友達になってくれて良かったと思いますよ。これで月にも同性の友達ができましたし。同性の友達がいないと体育の授業や修学旅行とか大変ですしね」

「うんうん。どうしても異性だと同性と違ってあまり踏み込んだり、一緒にはいられないからね。着替えとかお泊りするとかになったら」


 帆波は素直にメアリーと友達になれたことを感謝している。


 それは静香も同じで、帆波の言うとおり同性と異性では踏み込める距離が違う。


 当たり前だが、異性よりも同性の方が距離を縮めやすい。


 もちろん、友達になるだけだったら同性も異性も関係ない。


 でも体育の着替えや、今年の秋に行く修学旅行の部屋割りは男女で別れるのが当たり前だ。


 そうなると静香たち以外に友達がいない月はあぶれてしまう。

 月が男の娘だったら一緒に着替えたり、一緒にお泊りもできるのだが異性ではそれもできない。


 だから、同性のメアリーが静香たちと友達になってくれたおかげで、これからは月が女子の輪で孤立することはなくなるだろう。


 その時、月の表情が曇っていたことに静香は気づいていなかった。


「どうした月。表情が暗いぞ」

「ううん、どうもしてませんよ」

「知り合ったばかりの我が言うのはおこがましいかもしれないが、なにか言いたいことがあるならすぐに伝えた方が良い。後に伸ばすと言い辛くなるぞ」

「……」


 月の変化にメアリーは目敏く気づく。

 悟られたくなかった月は咄嗟に嘘を吐く。


 メアリーはなにか言いたそうな顔をしていたが、月の気持ちを察したのか深く追及してくることはなかった。


 月も月で嘘をついている引き目もあり、メアリーから視線を逸らす。


 そんな四人を傍観者の立場から見ていた天音はいろいろと気づいてはいたが、なにも言うことはなかった。


「言いたいことがあれば月も自然と私たちに話すでしょう。友達なんですから」

「ありがとう……帆波ちゃん」


 帆波のフォローにより、これ以上月が追及されることはなかった。


 そんな帆波に月はお礼を言う。


「それでメアリーさんはどこの部活に行ってみたいんですか」

「そうだな。我が気になってるのはバレーかな。バレー部の部長からもお誘いがあったし、今体育でもやってるからな。初めてバレーというものをやったが結構面白かったな」


 部活見学するにもどの部活を見学をするのか決めないと部活見学はできない。

 部活と言っても野球部やサッカー部、吹奏楽部に茶道部と上げればキリがない。

 静香がメアリーにどの部活に行ってみたいか聞いてみると、おおよそ想定内の答えが帰って来た。


 メアリーは体育の授業でバレーをしている時、本当に生き生きとしていたからだ。


「メアリーって昔からバレーが好きだったの?」

「いや、学校に入って初めてやったのだが結構ハマってな。もっとやってみたくなってな」


 天音の聞き方は少し妙だったが、それほどおかしいことは聞いていないため静香は少し覚えた違和感をスルーした。


 体育の授業で結構気に入ったらしく、メアリーは少し浮かれていた。


「それじゃーバレー部が練習している体育館にレッツゴー」


 部活見学の部活が決まり、天音はハイテンションでみんなの前を歩いていく。


「そんなに急がなくても部活は逃げませんよ」

「早く行かないと部活見学する時間が減っちゃうよ~」

「……ぐぬぬ、今回は天音の言うとおりですね」


 珍しく天音に言い負かされる帆波。


 時間というものは有限で部活は逃げないが、確かに天音の言うとおり早く行かないと部活見学できる時間は減る。


 珍しく言い負かされた帆波は本当に悔しそうな表情をしている。


「ここがバレー部が活動している体育館か。確かにバレーをしてるな」


 バレー部が部活をしている体育館に静香たちは到着すると、実際に部活をしているバレー部部員を見て、メアリーは声を弾ませる。


 そこでは男子バレー部と女子バレー部、奥に男子バスケ部と女子バスケ部が部活動をしていた。


 もちろん、男女別々である。


「今日はメアリーの部活見学だから女子バレーだね」

「我的には男子の方が女子よりも迫力があって好きなのだが、人間社会ではスポーツは同性同士でやるのが一般的なのだろう。そっちで良かろう」

「……まっ、メアリーの場合本気を出せば女子だろうと男子だろうと関係ないけどまぁ良いっか……」


 静香や帆波たちは男子だが、今回はあくまでもメアリーがメインだ。


 だから今回は女子バレ―部を見学をする。


 メアリーは男子とやりたがっているがさすがに、メアリーも男子では荷が重いだろう。

 天音が小さな声でなにか呟いていたが、あまりにも小さかったため、静香は聞こえなかった。


「あれ、メアリ―さん来てくれたんだ。そっちはお友達かな?」

「そうだ。部活見学に来たぞ。最近バレーに凄く興味わいてな。部活見学しても良いか?」

「もちろんだよ。メアリーさんは背も高いし運動神経も抜群だから即戦力になるよ。私は部長の佐々木春香です。よろしくねメアリ―さん」


 静香たちが女子バレー分に近づくと、すぐに部長の春香が気づいた。


 日本人離れしているメアリーの風貌はよく目立つ。


 メアリーが部活見学しに来たことを伝えると、春香の顔がパァッと明るくなる。


 顔を見ただけでメアリーが部活見学をしに来てくれたことが嬉しいのか分かる。


 ちなみに春香は静香たちの一つ年上の先輩で、黒髪ボブというとても動きやすそうな髪型をしている。

 爽やかな女の子で身長も百七十後半ぐらいあるだろう。

 静香からすれば結構高い。


 さすがバレー部の部長である。

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