第27話
カンカンカン と小気味良く音が響く。ここだけ気温が高い。ここは全国でも有数の鍛冶場だ。国綱、安綱、正宗、吉光、宗近、といった名刀工の技術を受け継ぐものたち。かつての名工達に比べれば技術は劣ると言われるが、産み出される刀は鋼鉄をも容易く切り裂く。伝えられなかった技術もあるらしいがそれでもかなりの業物が出来るらしい。
「着いたぞ」
「ここが鍛冶場ですか……すごい光景ですね」
「あっちぃ……こんなところにずっといんのかよ……すげぇな」
「あらあら、雷くんじゃないか、よー来たな」
「じーさんか、元気?」
「この通りじゃ!」
そう言って腕を曲げて拳を見せつけてくる翁。
「あの、白川さん、この人は?」
「あぁ、このじーさんはここの五番組頭の礼だ。俺の刀を打ってもらってる。すごい技術をもってるぞ」
「ワシこそが礼じゃ。今日は何のようで?お主のは前に打ったぞ?」
「いや、今日は俺じゃなくてこいつらだ」
「ほう?この若造らがか?まだ騎士になって五年以内と見るが」
「そうだ。特注で刀を作ってやって欲しいんだ」
「まさかこの若いのがその様な魔物を倒すとは…世も捨てたものじゃないのう」
「いえ、白川さんが来なかったら死んでたんで、まぁ、はい」
「そう謙遜せんでもエエ。その年でそこまでやれるやつはそうおらぬ。民を守りきったことを誇りなさい」
「「はい」」
「すまんなじーさん。こいつら焦りすぎてんだ。良い言葉だったぜ」
「鍛冶の仕事も同じじゃ。焦っていては伸びもせず、良い刀も打てぬ さて、とりあえず筆頭組頭に話を持っていって鍛冶師を割り当ててもらわんとな」
「失礼します」
「うん?お前ら誰や?」
「あの、特注の刀を打って貰いに来たのですが‥」
「ん?お主のをか……」
「あ、いえ。俺ではなくこの二人のをお願いしたいのですが」
「ほう、その若いの二人か。んー、そうやなぁ、ついてきな」
そういって筆頭組頭は立ち上がる。
「お前ら!若いのが刀を打って欲しいと言うとるが打てるやるは居るか!」
若い鍛冶師が集まっている場所に連れてこられて筆頭組頭は開口一番にそう言った。
「あ、一応手は空いてます」
「おう、じゃあ竜平!こっちへ来な」
「どうも、紀平竜平です」
「あ、どうも、星龍騎士団金烏隊所属一等士星川輝政です」
「同じく金烏隊所属一等士武田翔です」
「竜平。お前にこの二人に刀を打って貰いたい」
「はい、承ります」
「若いの。いくら鍛冶師の腕が良くても騎士の技量が未熟では意味がない。そう言うことだ」
それだけ言うと筆頭組頭は立ち去っていった。
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