第23話
「大丈夫か?」
「白川さん?……すみません。あのまだ一体残って今すぐ。そっちは翔が相手をしてくれています」
「でかいな……行くぞ」
ぶんっ!! と唸りをあげて振り下ろされる戦鎚を避ける、避ける。素手とは桁違いの威力。その巨躯から繰り出される攻撃は人間一人を容易く潰すだろう。
「これなら……どうだっ!」
魔物のほうに向き直る。振り下ろされる戦鎚を前に走ることで避ける。この戦闘でわかってきたことーーー戦鎚は重い。そして俺の長所は素早さ。ならまだ未熟な俺がコイツに勝るために導かれる戦いかたはただ一つ、振り下ろされる戦鎚をギリギリで避けての攻撃。前に駆ける速度を利用した回転切り。気で強化された刀が脛を削る。足に気を集める。上に飛び上がりながら腹から胸までを一気に切り裂く。それで魔物の体がのけ反る。ピンと伸びる腕。腕と刀にに身体中の気をかき集めて流し込む。描く色は青。水の色だ。この気は滑らかで硬いものを切るのに向いている。
「はぁっ!!」
〈時雨虹流:〉ひゅっ! とんっ!という音とともに魔物の右腕が肘の辺りから落ちていく。
「ぐおぉぉぉぉ!!!」
咆哮。次の瞬間には唸りをたてて左拳が迫る。まずい、体勢を崩してまで攻撃をしてくるとは。攻撃にすべての力を集約した魔物の拳が迫っている。とっさに両手を交差させて籠手で受けるも吹き飛ばされてしまう。地面をゴロゴロと転がる。
「ぐぅっ……」
ぐぉぉぉぉぉぁぁ!!
咆哮とともに駆け出す魔物。
がぁぁぁごっ!
? 足が飛んでいく。魔物の足が。魔物の横に人影が……
「よかった……応援だ……」
少しほっとした瞬間、意識が飛んでいった。
翔が一番大きいやつと戦闘をしている。
「翔っ!」
「先にいくぞ」
そう言って白川さんは足に気を込めて一気に駆け出す。緑色の線が魔物の方に迫り、交差していく。その次の瞬間には両足が膝上から両断されていた。
ぐぉぉぁぁぁぁ!咆哮とともに崩れ落ちる魔物。しかし魔物は倒れながらも戦鎚を振りかぶり、地面を強く打ち据えた。黒く禍々しい気が波紋状に広がり……収束、そして一気に弾ける。この先には翔が……
「はっ!」
気を足に回し全力で駆ける。地面に倒れている翔の服を掴んでぐっと引っ張る。翔の鎧を気の玉が掠める。ずざぁぁぁぁ! と音を立てて着地する。魔物の方を見る。その後ろに飛び上がり宙に浮く白川さんの姿。気が腕、そして刀に注がれていく。練り上げられた気に描かれた色は金、そして緑。刀が緑色に輝く。ぱっと刀に3つ、五芒星が描かれる。魔物が起き上がろうとする、がその上から白川さんの攻撃が叩き込まれる。
「ぐぉぉぉ…………」
崩れ落ちる魔物。霧となり、完全に消えてなくなるまでは気を抜いてはならない。念のため魔物の方に向けて刀を向け、気による結界をはる。
完全に消えてなくなる魔物。静けさを取り戻す街。
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