第21話
魔物の手に握られているのは戦鎚。ムリだ。頭が真っ白になる。
それもそのはず。翔にはそんな武器を持った相手との戦闘の経験はないのだ。
槍、斧、短刀、拳、棒等々いろいろな武器を想定して鍛練を積んでいるので、あまりに実力さが開いてない限りはなんとか戦うことはできる。現にいまコイツの拳相手に倒れてはいない。しかしこれは……
「でかすぎんだろ……」
デカい体躯の魔物に合わせて戦鎚も大きい。戦鎚なんて武器図鑑で何度かしか見たことがない。しかも戦鎚が使われていたのは五百年以上前、中世の欧州だ。今は欧州では銃が主流で使っても長剣、槍くらいだ。使い方を知っている人なんかほとんどいないし、いてもこの国にはいない。
「そんなん相手に…どうやって戦えって言うんだよ……」
俺はじりじりと下がることしか出来ない。しかし魔物を戦鎚を手にぶら下げてじりじりとよってくるので、距離が空くことはない。体を絶望が支配していく。
二体同時の攻撃を受ける刀を伝って衝撃が手をビリビリと痺れさせる。完璧な連携。偶然ではあり得ないほどの精度で同時に攻撃を打ち込んでくる。後ろに下がりながらそれを刀で払う。何度か払われると急に攻撃を変えてきた。一撃、半テンポ遅れでもう一撃。リズムの掴み辛い攻撃。さっきの攻撃が身体に結構なダメージを与えているのか、かなり体が痛い。徐々に受け流しが間に合わなくなっている。魔物が刀を創り、それで突きを繰り出してくる。それを刀を立てて横に弾こうと当てに行ったその時、急に魔物が刀を強振し、俺の刀が打ち払われる。がら空きの胴に二体目の魔物の足が蹴り込まれる。それを俺は 腕につけられている籠手で受けた。うまく力をいなしなが斜め後ろへ飛ぶ。星龍騎士団の使用する籠手は腕近くまであり、とても頑丈な物だ。これ自体が一種の小型の盾として使用できる。 辺りを見回す。広い大通りだから家屋に被害はほとんどない。が、このままで行ける保証はない。増援が来る前に1体でも倒しておかないと。刀を正眼に構えてぐっと力を込めて握る。足の下に2つ、それを囲むように大きく一つ五芒星を描く。小さな2つが身体に大気中の気を流し、大きな一つが結界を創る。次に両肩に一つずつ、鍔に1つ五芒星を描く。描く色はすべて金。いくつもの五芒星が光を放ち輝き始める。魔物二体はそれぞれ拳と刀を構えるが警戒しているのか近づいては来ない。
「そのままそこで止まってろ」
そう呟きながら身体に気を通し、それを練り上げていく。練り上がった気を刀に流していく。刀が黄金色に輝いていく。同時に足、肩、腕、にも気を流していく。描く色は緑。ぐうっと身体の力が上がっていくのが実感できる。最後に手に一つずつ五芒星を描く。描く色は赤。その五芒星を通して刀に気を注ぎ込む。黄金色と赤色が混ざり合い、刀身が太陽のように輝く。そこにさらに気を注ぎ込む。気が凝縮されて高エネルギー状態へ。危険だと思ったのか魔物が気を飛ばしてくる。青黒く刺付き鉄球のようなものが迫ってくる、が俺の張った結界に止められる。それも一瞬で破られる。しかし俺にはその一瞬だけでよかった。地面を蹴り、疾風のように駆ける。〈天河流:三日月〉〈天河流:星刻〉
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