第20話

 目の前のでかいやつに刀を向ける。すくみそうになる。とにかくでかい。さっきはテルのおかげで動けるようになったが今は別々に戦っている。自分で守らないといけない。魔物がテルの方へ向かい始めた。

「お前はこっちだ!」

刀を振りかぶり斬りかかる。背中への一撃。だが効いている様子はない。だが対象は再び俺に戻る。目と目が合う。飛び出したのは同時だった。魔物は右から拳を、俺は右横から刀を振り抜く。ガッ! 跳ね返された!      

 拳とぶつかった刀は一瞬で跳ね返され、俺は刀と一緒に吹き飛ぶ。ブンッ!と空気を震わせながら左の拳が振るわれる。刀を引き寄せ横に寝かす。ガスッ!と刀と拳がわずかに当たる。下にドサッと落ちる。足が迫ってくる。転がって避けたところは壁だった。横の窓からは不安そうにこちらを見る住民が。前を見ると……地面が少し抉れていた。背子を冷や汗が伝う。気の防御のなしであんなものを食らえばまず即死だ。一度大きく息を吐くと思いっきり吸って地面を蹴りとばす。〈時雨虹流:隕突〉刀、腕、足にありったけの気を注ぎ込み、さらに刀身には五芒星を三つ。この速度でここまで強化できたことはない。火事場の馬鹿力的なヤツかもしれん。過去一番の威力が出るであろう一撃を持って突進する。それに対しての魔物の攻撃は回し蹴りだ。格闘系の魔物か。回し蹴り脚を狙って斬撃を繰り出す。全身を使って刀を振るう。重く固いものがぶつかる音が響く。反動で俺の体は少し浮いて後ろへ飛ばされる。前を見ると、魔物がうずくまっている。その前には切断された右足が。まともに損傷を与えられた。しかし俺の刀は僅かだが刃こぼれれしている。練った気を流しているにも関わらず負けたんだ。しかも限界を越える量の気を身体に通したため、体が悲鳴を上げる寸前まで来ている。同じ威力をもう一度出すのは無理だろう。刀に気を流し込み横に三度振る。金色の気が刃状になって飛んでいく。魔物に当たるが与えられるダメージは微々たるものだ。西洋から伝わったレイピアがあればまたダメージが入っただろうが残念ながら俺が手にしているのは連続の刺突には向いていない刀だ。リーチも俺に合わせて短めだ。そんなことを考えている間にも魔物は損傷を回復させていく。少し離れたところでテルが苦戦しているが、加勢することもできない。立ち上がり刀を持ち上げる。〈時雨虹流:吹き下ろし〉突進。目の前では魔物が再び立ち上がろうとしている。

「間に合えっ!」

ザシュ!と魔物を肩口から腰まで切り裂く。そこを気のエネルギーの爆発でけ反らせてそのまま素早く刀を振るう。攻撃の主導権は渡さない!しかし魔物は焦る様子はない。接戦時に追い詰められた時、魔物は焦っているような行動をすることが多いが、コイツはすごい落ち着いている。すっ、と後ろに手をやると何かがヌッと出てきた。それをみた瞬間の俺の絶望は言葉で表すことは出来ないだろう。

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