第19話

 刀を振り下ろす瞬間、気が刀から飛び出るような想像イメージをする。一撃は相手の刀で防がれるが、飛び出した気がもう一体に向かう。これも止められるが問題ない。必要なのは端の二体の対象を俺にすることだ。でかいヤツのそばに侍られていては俺も翔も動きづらい。もう一度、今度は横から刀を叩き込む。気を纏わせて無理やり吹き飛ばす。その音ででかいヤツがこちらを向くが翔が上手くやってくれるだろう。

「お前はこっちだ!」

翔が叫ぶ。俺はその場から離れながら二対一の戦闘にはいる。飛び込み気味の拳をかわす。横から漆黒の槍が迫る。刀でそれを掬い上げてその狼のような体躯の懐に飛び込む。勢い良く踏み込み、一閃。胴を両断するも崩れない。横から二体目の拳が迫ってくる。狼が後ろへ少し下がったので左手に気を集めて、つき出す。バヂンッ!と音が鳴り響く。魔物は即座に逆の拳を突き出してくる。とっさに後ろに下がる。ボッ!と音が弾けて俺は吹き飛んだ。

「がっ、もろに食らった‥こいつら……」

もうひとつ驚くべき事実。こいつらは。今度は同時にかかってきた。左に結界を造り右を刀で迎え撃つ。衝撃がすごい。刀を握る手が痺れそうだ。後ろに飛び気をためる。〈天河流:激流うねり〉 二体の手と首、脇腹を斬る。即座に今度は〈天河流:流星〉腰、脚、腕、を使った飛び込み気味の斜め切り下ろし。肩口からバッサリと切る。そのまま二体目、狼の方へ突っ込んでいく。人間型の方が俺を追ってくるが俺が傷口に意識を向けると、傷口が爆発して魔物は倒れ込む。切ったときに気を注ぎ込みエネルギーを急に解放したので爆発した。古くから星龍騎士団に伝わる術だ。そのまま狼に〈天河流:星刻〉を叩き込む。下からの切り上げ、即座に刃を返して切り下ろしの二連撃。後ろから人間型が迫っているので、狼を蹴り飛ばして飛んでくる拳を峰を使って横に流していく。一撃一撃が強力な代わりに連打はそんなに速くないのでまだ対処できる。ここで魔物の行動パターンが変わった。こちらに飛びかかりストレートを一発。だがその一撃にのせられた気の量、そして何より威力が今までとはけた違いだ。拳とすれ違うように刀を突き込み、刃が腕を切り裂いた瞬間刀を少し引くようにして切り払う。〈天河流:滑空〉 横に流れた拳を視認してから俺は後ろに飛び退く。だが俺は一つ失念していた。俺が今戦っている魔物は。飛び退いて着地した直後、細くしなやかで、それでいて筋肉質な足ががら空きの脇腹に叩き込まれる。

「がっ!」

蹴りをもろに食らって吹き飛ぶ。受け身を取ることも出来ず地面を転がる。

「ハァッハァッハァッ…」

防具のお陰で脇腹に目立った傷はないもののかなり衝撃が身体に加わったので動けないほど痛い。立ち上がろうとするが力が入らない。その状態を見て、好機だと思ったのか、二体同時に突進してくる。それを俺は片膝立ちの状態で迎え撃つことになった。

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