第17話

正門を出て左に曲がり大通りに出る。そこから少し歩くと噴水がある円形の広場があるので取り敢えずそこまで歩く。この時間帯は人が多いから走るなんてことは出来ない。道の右端を早足で歩いていく。広場に着くと右にまわりそのまま進む。十分弱駆けていったところが、皇都北区の郊外の一部が俺の担当だ。中央に行くほど強くなる魔物に対して、騎士も中央に行くほど強く経験のある者が配置されるようになっている。ついでに俺の担当区域の隣は翔の担当区域の隣だ。

「こんばんはー」

「いつもありかとうねぇ」

「気をつけなさいねー」

町の人が声をかけてくれる。騎士と民の距離は案外近い。副騎士長なんかは特に好かれていて良くお菓子とかをもらってもいた。あの人は強すぎるからお菓子をもらってる途中でも直ぐに駆けつけて一撃。まぢ お前ら人間じゃねぇ! てやつだ。

「ふぅ。余計なことは考えないで集中しないとな」

大きく深呼吸をしてから俺は集中力を上げる。大気には気のエネルギーが満ちている。魔物が出現すると気が少し乱れる。俺たち騎士はそれを関知して討伐していく。因みに魔物の出現の方法についてはあまり分かっていない。洋風の創作のようにご丁寧にダンジョンから現れたりはしないのだ。…あの一件を除いては…だが。世間一般では公表されていないが、あの一件で専門家たちの魔物についての議論や調査がかなり活発になっているらしい。  

「………………変わったな?」

わずかだが流れが変わった。少し探る。………

「右側だな」

家の列を二つはさんだところのようだ。少し助走をつけてから屋根に飛び上がる。こういう時は屋根を伝っての移動が認められている。屋根から屋根へと飛びながら目と気の両方を使って位置を特定しに行く。 見えた! 逃げる民を居っている。刀を抜き放ち、気を流し込む。その色は赤。赤の気はとにかく単純に強い。爆発力がある。視線の先で、逃げる民の一人がこけた。魔物が駆けた。と同時に俺は足に緑色の気を元々の気に重ねるようにして掛けて、屋根を蹴り飛ばす。俺の方が少し速かった。転けて地面に尻をついている男性の前に立ち、防御姿勢をとる。すでに魔物の武器が上から振り下ろされ始めている。刀を横にして左手を添える。全身を強化してる暇がない。腕、膝、肩を優先して強化する。ガァァァン!!という轟音と衝撃が伝わってくる。相手の得物は大きな鉈のようなもの。それに魔物が使う荒く禍々しい漆黒の気が纏わりついている。やはりここ最近でよりいっそう強くなっているみたいだ。耐える。耐える。後ろには退けない。まだ男性が後ろに残っている。身体をグッと沈めて力を貯め、腕ではなく体全体を使って押し返す。膠着状態だ。どちらも動かない。後ろの男性も動けない。これで二体目が居ましたなんていうことがあったら隙だらけなので笑えないのだが、幸い今は目の前のこいつだけだ。押し返すために力を加えながら俺は刀に気を集めていく。そして交錯点に持っていく。何も気は防御や補助にしか使えないわけではない。もちろん攻撃にも使うことが出来る。大切なのは想像》力だ。頭の中で思い描いたように、気は成ってくれる。エネルギーが凝縮され暴発寸前の様子を想像イメージする。交錯点が輝きだした。そこに刀に力を込めながら気を一気に流し込む。蛇口をおもいっきり捻るように。爆ぜる。俺は必死に踏みとどまったが、魔物は武器と両腕を持っていかれて吹き飛ばされていた。俺は地面を蹴り飛ばし魔物へと迫る。ここを逃せば逃げられる。魔物は後ろへ下がろうとするがそうはさせない。さらに深く懐に入り込み、腰を捻りながら加速をつけて刀を振るう。ガッ!と音がして魔物の首が飛ぶ。さらに二度、魔物に刀を叩き込み、再生が効かないようにする。魔物は気となって霧散していく。討伐完了だ。転けていた男性に手を伸ばして立ち上がらせる。どうやら腰が抜けていたようだ。無理もない。急にあんなものに襲われたら、恐怖が体を支配して動けなくなるかもしれないから。

「終わりましたよ」

「ぁ、ありがとうございます」

「えぇ。気を付けて帰ってください。後魔物に遭遇したらあの棒を使ってくださいね」

「はい。ありがとうございます」

「では、失礼します」

そういって俺は気を感知しながら巡回に戻る。

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