第13話

 それから数日間は全員で警備と修復を行った。その間は魔物の出現頻度も通常道理で変わった事は起きなかった。先の件については星龍騎士団及び近衛騎士団、警察にまで共有された。但し一部の情報は本部上層と関係者のみに限定されることとなった。


 修繕が終わった鍛練場にカンカンと木刀のぶつかり合う音がする。

「防御力はあるみたいだな」

「ハァハァ、ありがとうございます」

「じゃあ次は攻めこんでこい」

「はい」

木刀を正眼に構えて俺を見る東良さんに対して、俺は剣先を下げて前傾姿勢を作る。 

飛び出す。下段から剣先よりも手元から先に上がるように調整する。東良さんの木刀が横に傾き、振り下ろされたタイミングで刀身ををくるりと上段側に持ってきて、振り下ろす。それに対して東良さんは俺とすれ違うようにしてそれを避ける。再び間合いが空く。お互いにじりじりと距離を詰めにいく。再び俺のほうから動く。突き気味に放った縦切りをが峰で左側に打ち払われる。それを利用してコンパクトにくるりと回転するとそのまま木刀が円を描いて東良さんの胴に襲いかかる。それを刀身を横にして東良さんは受け止める。ガッ!とぶつかり合い、弾けて浮いた刀身を握りしめ今度は剣道の面の要領で木刀を振り下ろす。それを東良さんは柄で受け、そのまま横に流した。俺の木刀は虚しくを宙を切り、床に当たる。素早く刃を返して切り上げるが、今度はきっちり受け止められる。そのまま鍔競り合いに移行する。ぐっと力をいれると、東良さんも力をいれて押し返してくる。そこを鍔迫り合いのまま木刀を上に滑らして、鍔で上に押し上げる。だがしかし、東良さんのほうが速かった。木刀と体との距離を固定して前に突いてくる。俺の腕が少し上に上がっているせいで上手く力を相殺できない。そのまま後ろに突き飛ばされ、膝をつく。顔を上げると目の前にいるのが木刀の切っ先があった。

「ま、参りました」

そういって立ち上がる。

「やー、強かったね。良い攻めだ。こりゃ一人で魔物を複数体対応できるのも納得できるね」

「ありがとうございます。同期にもこれくらいの強いやつが何人かいましたね」

「今年は豊作だな。ここにも何人かお前の同期が入ってる。明日一人紹介しよう。良いやつだし切れのある素早い動きをする」

「楽しみにしておきます」

「ああ。気軽に話せるやつがいたほうが過ごしやすいからな」


 それから少し気術の訓練をしてから、飯を食いに行く。今日は外に食べに行くことにした。正門をでて左に少し歩くと大通りに出る。歩道を歩き店を色々見ていく。魔物が出るとはいえ、数はそう多くなく、すぐに討伐されるため、街は賑わっている。街に一定間隔である開けた場所は、騎士が魔物との戦闘を行いやすく、民に被害がでないようにと工夫されてできたものだ。


 

良さげな店屋にはいる。洋風のレストランだ。名前は‥シャンデリアといったか。席につき、メニューを眺める。ここ二百年で一気に欧州の文化が、流れ込んできたが、この国の民たちはうまく取り入れ新しい文化を作り出していった。その結果、元々の落ち着いた感じと新しいオサレな感じとがうまく調和し合い、良い雰囲気になっている。もちろんメニューもだ。取り敢えず和風ドレッシングのかかったサラダとスパゲッティ、キノコのスープ、オレンジジュースを頼み、背もたれに体を預ける。今日の訓練を思い出す。最後の場面、鍔迫り合いの所。東良さんはおそらく俺の動きを見る前から押そうとしていた。まったく間がなかったからだ。騎士団正式剣術〈時雨虹流〉の技術の一つ‘大黒岩’だ。攻略法を頭に思い浮かべる。足を払うか?いや、足に意識を寄せたその一瞬で削られるだろう。なら後ろに跳べば…餌食だな。交錯点を始点に刀身の柄側を押してから刃を滑らして相手方の横に体を持っていくのが一番良いかもしれない。

「アノー、オリョウリ… あのー、お料理をお持ちしました」

「んぁ?はっ!すみません。ぼけーっとしてましたね。ありがとうございます」

不覚だ。店員を困らせていたとは…

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