第8話

(隊長サイド)

「ハァッハァッハァッ」

ここまで本気で突っ走ったのはマジで久しぶりだな……。敷地内の魔物を切り飛ばしながら星龍騎士団金烏部隊隊長である柏尾礼一は呑気な思考をしている。しかし走る速度は並大抵の者では追い付けないほど速い上に道中で魔物を一太刀で切り伏せながら進んでいくその姿は呑気さなど一欠片も感じないくらいの雰囲気を出している。前方、修練場の方から金属音が聞こえてきたと同時にさらに加速する。切り結ぶ部下と魔人の姿が目に入ったと同時に身体に水色の気を纏わせ、疾走する姿は山を下る急流を思い起こさせる。魔人の横を水色の光が通りすぎた瞬間魔物の上半身がずり落ち、崩れていく。そして再び動くことはなく、霧散。

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

「隊長~!」

騎士達が歓声を上げる。

「お前ら!俺達は騎士だ!魔物になんか負けてたまるかという気骨のある騎士はこの俺に続け!殲滅する!」

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

その場にいる騎士達が吠え、刀に込められる気がさらに強い波動を放ち始める。そしてその勢いのまま一気に攻勢に転じる。それを見て礼一は ふっ と笑みをこぼした。そしてまた刀に気を流し込み敵の方へと突っ込んでいた。


(星川サイド)

「うぉ すごいな」

修練場の方で放たれた気を肌で感じ取った俺はそう呟いた。練り上げられた気、騎士達の咆哮、斬り結ぶ音が俺に動けと命じてくる。

「現在俺は星龍騎士団金烏隊駐屯本庁正門前、隊長及び大半の騎士は修練場側、副隊長と残りの騎士は任務で出払っている っとなると副隊長を待つのがベストになりそうだな。」

と目の前の消えかけの魔物に語りかける。勿論返事はないが、ほとんど整理のための独り言なので問題はない。親父の書斎にあった本によると稀にこういった魔人が集団で集まることもあったというが、騎士が苦戦するほどの魔物がいたという記述はない。やっぱり最近の魔物の個の強さが上がっている傾向と関係があるのか?どちらにせよ早めに対処しないと街に溢れだしたら色々と終わる。修練場周辺は隊長達がいるから俺は庁舎回りを当たるべきだな。そう考えて庁舎裏に回ると予想道理魔物がちょろついている。ここは出し惜しみをするところじゃねぇ。まだ気付かれてない。剣と身体に気を思い切り流し込み、師匠直伝の剣術を使う。【天河流 波切】水色に輝く軌跡がそこにいた四体の魔人を切る。その勢いのまま残りの一体に飛び掛かる。ぐぉぉぉん!! まるで銅鑼を叩いたかのような音が響き渡った。狼型の魔物の手には漆黒の刀が握られている。でも普通の刀じゃなかった。禍々しい気に覆われたそれは刀と呼ぶにはおこがましいほどに不気味だった。俺は固まって動けない。首もとに刃が迫る。

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