第6話

 それからお世話になった人たちに挨拶に回り必要な物を買い揃えていき、一週間がたった。今日から金烏隊に移動だ。

「いってこい」

「苦しいこともあると思うが頑張ってくれ」

「はい」

 隊長と騎士団長に見送られると言う破格の対応に少々ビックリしながらも丁寧に礼をして車に乗り込む。


 北へしばらく走ると赤屋根の建物が見えてくる。金烏隊の本部だ。大通りのど真ん中に大きめの櫓と門があり、騎士が数人見張りについている。そう、ここに本部を構える部隊こそが星龍騎士団主力五部隊が一つ、金烏隊だ。迎えの騎士に連れられて、敷地内に入り、隊長室に向かう。

「隊長、入りますよ」

「来たか!新入り!」

「うっ、」

 な、なんて騒がしい人なんだ…ちょっ!近い近いっ!

「隊長!引かれてますよ………」

「むっ、これは失礼した!ぐいぐい行きすぎたな、ハッハッハ!」

 なんか、いろんな意味ででかい人だな。

「えっと、今日付けで金烏隊に配属となりました。星川です。よろしくお願いします」

「あぁ、よろしく頼むぜ!俺は柏尾礼一一等中佐だ。ここの隊長をやってる。それで、そっちがうちの隊の」

「本田正治三等中尉です。一応ここの管理者を勤めさせてもらってます」

「じゃあ俺が本部を案内するんで正治、頼んだぜ」「雑務が面倒なだけでしょ逃げないでください」「なら公平に決めようではないか」

「わかりました。隊長を雑務地獄に落として差し上げましょう」

「ふっ。やれるもんならやってみろ。最初はグーじゃんけんぽん!! しゃーー!!」

「くっ………ま、負けた…」

「じゃあとは頼んだぜ」

「…了解」

 ウッキウキの隊長と部屋を出る、騒がしい、なんなら海より騒がしい。まぁ、明るいし暗い雰囲気になりがちな俺達を束ねる長としてはうってつけなんじゃね?と堂々巡りし始めた思考を納めて隊長の後ろをついていく。


 隊長に連れられて本部を見て回る。隊の人は皆いい人ばかりだった。

「どうだ?」

「いい雰囲気ですね。隊の人もみんな優しくて安心しました」

「ハッハッハ!そうか、それはよかった!改めてこれからよろしく………っ!」

「?、どうかしましたか。っ!」

 隊長に遅れて俺もその気配を感じ取った。嘘だろ?と思考をしている間に魔物が窓ガラス「突き破って侵入してくる。パリィィィン!とガラスが砕ける音がして魔物が現れた。鉈を持ち鬼のような相貌の魔人が十余り。「くっ!」腰に差してあった刀を抜き様に真横にいた魔人を切り伏せる。崩れ落ちていくのを見るまもなく二体目へ、ギィィン!キンキンキンキン 数合切り結び鍔迫り合いへ、腕力にものをいわせて相手の刀を押し上げ、突っ込むようにして斬り倒す。直後横から別の魔人が突進してきた。寸前で相手の刀の軌道に自分の刀を割り込ませて刃の逆方向に飛ぶ。瞬間、俺は反対側の壁に叩きつけられる。背中が少し漆喰に食い込んでいる。

「かはっ…強いな」

 もそもそと戦闘を続けていてはこちらが殺られる。そとう考えて、ゆっくりと立ち上がり、刀に気を流していく。そして刀を持ち上げた瞬間「頭下げてしょがめ!!」と後ろから声が。慌ててしゃがむとその上を隊長が飛び越えていき、勢いのまま強烈な突きを叩き込む。練り上げられた気を纏った強力な突きを受けた魔物は派手に吹き飛び爆散した。

「大丈夫か」

「…は、はい。なんとか」

 ふと後ろを見ると十余りいた魔人は全て消えていた。

「ここにいた魔人は全て消し飛ばしたぞ。ちらりと見たがお前もよくやったな。二体も倒したじゃないか」

 バケモンじゃんこの人

「なんとか倒せましたね。でも、隊長、ホントに強いですね。」

「頑張ればお前もここに到達できるかもな? さて、どうやらここが襲撃されているようだな。いままで単体で侵入してくる奴はいたことはいたがこんなことははじめてだ。俺はあいつらの方を見てくる。すまんな、案内はまた今度だ」

「いえいえ、いつでも大丈夫です。じゃあ隊長、俺は開けた少し外に出てみます」

「…無理をするなよ?新人に無理をさせたとあっちゃ先輩として恥ずかしいんでな」

「はい。ではこ武運を」

「ああ、お前もな」

 そう言って隊長はものすごい速さで駆けていく。はえぇ。と呟いて俺も歩き出す。

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