第5話
敷地北側にある新緑部隊の本部に向い歩いていく。こうしてこの道を歩くのも三年目だ。ちなみに新緑部隊の騎士は新人だからそんなに強くはないが、それを率いる棋士達、隊長、副隊長、小隊長辺りはすごく強い。向こう側から大きな声が聞こえてくる。館内に入り、隊長室に入る。
「………誰もいねぇ。じゃあ指南でもしてるな」
この近くには新人の騎士専用の鍛練場があり、週に四回、稽古をしている。もちろん俺も経験してる。…しかしあれは稽古というより地獄に近かった。当時の隊長は俺が新人の稽古を修了したのとほぼ同時期に近衛騎士団の指南役に就任したので今の新人騎士は知らないのだが、雷神と呼ばれ、地獄と呼ばれた稽古を施した恐ろしい人なのだ。海は一度あの人の目の前で口を滑らせて「あ、魔人くそじじ…」とか言ったのをばっちり聞かれて三日連続で六時間打ち込み稽古と4日連続で隊長直々の扱きを受けて、しなしなになって返ってきたことがあった。うん、あれは馬鹿だな。………
稽古場につくと新人の棋士達が元気よく刀を降っていた。
「隊長、お久しぶりです」
「おお、星川君久しぶりだね。聞いてるよ、金烏隊にうつるんだってね」
「はい。今までお世話になりました。ありがとうございます」
「あぁ、頑張って。で、どうだい?今年の新人は」「うーん、まだ一ヶ月なんで、まだまだ伸びますよ。たぶん」
「ハッハッハッ、君らとまではいかないだろうね。君たちの年は格別優秀なものが多い。君なんかは下級の魔物なら直ぐに討伐してくるから重宝したよ。それで今年のは少し土台のしっかりしてない奴が多くてな、今のままで任務に出すのには少々心配なのでな」
「なるほど。それで例年よりまだ楽だと感じるわけですね」
「あぁ、でも基礎が出来てきたら締め上げにいくけどね」
「隊長…悪い顔してますよ」
「君たちに劣らない騎士を育て上げなければな国にとっても彼ら自身にとっても、不利益しか出てこないからな。まぁ君も頑張ってくれたまえ。騎士団を担う者のうちのひとりなのだから」
「はい。ではこれで、お世話になりました」
「あぁ、たまには顔出してくれよ」
深く礼をしてその場を立ち去る。俺も精進しなければと思いながら。俺は稽古場を去った。
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