SS:ユニへの手紙
「ユニー?!」
「は~い、ちょっと待ってください。すぐ行きま~す」
よいしょ、っと。これで、薪は十分だよね。
マーサさんの呼んでいる方に小走りで駆けていくと、何か紙の束みたいなのを押しつけられちゃった。
「あの?」
「さっき、商人さんが届けてくれたんだよ。ユニ宛ての手紙だってさ」
手紙? もしかして!
「ああ! やっぱり!」
「すごいね、手紙で連絡をくれる知り合いがいるなんて、商人さんとか貴族様みたいだね」
えへへ~。羨ましそうなマーサさんの言葉がくすぐったい。
手紙を開いて読む。
まずはタマちゃんのから。
『めいきゅーとしついた たま』
タマちゃんの手紙短っ。
でも、無事に迷宮都市に着いたみたいで良かったよ。
今度はポチちゃんの。
『セーリュー伯領を出発したポチとご主人様は、山の麓で百を超える虫の大群に襲われたのです。圧倒的とも思える虫たちをポチ達は、ご主人様と一緒に弩で果敢に撃ち落として対抗したのです。そして出会ったのは赤い兜の鼠人に守られた妖精族のお姫様――』
え~っと、手紙よね?
ポチちゃんの手紙は百枚以上もあるみたい。
……うん、後で読もう。うん、それがいい。
次の手紙は、アリサちゃんからだ。そんなに仲良くなったわけじゃないのに、手紙を送ってくれるなんて、ちょっと嬉しい。
『拝啓 初冬の候、ユニ様ますますご活躍のこととお慶び申し上げます。
さて、ポチとタマの近況ですが、みな怪我も無く無事に迷宮都市へとたどり着きました。手紙と一緒に届けていただいた荷物は、私どもの主人サトゥー・ペンドラゴン士爵よりの心ばかりの品ですので、快くお受け取りください。
まずは、取り急ぎお知らせいたします。
敬具
アリサ・ペンドラゴン』
堅い。アリサちゃん、文章が堅いよ。
所々分からなくて女将さんに教えてもらったけど、子供の書く手紙じゃないよ。
サトゥーさん、お金持ちだと思ってたけど、やっぱり貴族様だったんだね。
荷物の中には、女将さん宛の「高級はんどくりーむ」とかマーサさん宛ての珊瑚の首飾り、それからわたし宛には櫛と手鏡が入っていた。
手鏡! 自分の鏡なんて初めて!
女将さんが言うには、セーリュー市で売ってる銅鏡よりもはるかに高価な硝子製の鏡なんだって。
うう、綺麗に写るのは嬉しいけど、そばかすがくっきり見える。
あれ? 他にも1枚の紙切れが入ってる。
「ありゃ、良かったじゃない。返事の手紙が書けたら、これを手紙と一緒に商会に持っていったらタダで迷宮都市まで届けてくれるってさ」
やったー!
迷宮都市までだと、1年くらいお金を貯めないと手紙を出せないんだもん。
さっそく近況をしたためて返事を書かなきゃ。
でも、その前に、今晩は徹夜でポチちゃんの力作を読まなくっちゃ!
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