第16話 ダンフォースside




 ジュディスは、少しずつ家族の話をするようになった。ジュディスの祖父母が、サミュエルと同じ病で亡くなったと聞いたときは驚いたが、それよりもジュディスの叔父の酷い仕打ちに怒りを持つようになった。上手く慰めることが出来ない自分が情けなかった。それでも、ジュディスは「ダンフォース、聞いてくれてありがとう!」と笑顔で帰っていった。



 ジュディスは、俺と同じように、大事な人を急に亡くして、それどころか住居も仕事も全て失ったのに、いつも明るい笑顔で、一生懸命働いている。そんなジュディスが、眩しくて、宝物のように思えた。





「ねぇ、早くジュディスちゃん、紹介してよ!」


 たまに俺の様子を見に来る姉は、ある時、ジュディスの差し入れの余りを目敏く見つけ、俺からジュディスのことを聞き出してからは、ジュディスに会いたいと煩かった。



「・・・いやだ。」


「えー!会いたい~!」


「姉さん、ジュディスに変なこと言うだろ。」


「ダンフォースが昔から暗くて、友達いないとか絶対言わないから!お願い!」


「そういうところが嫌なんだけど・・・。」



 ずっと塞ぎこんでいた俺に、友人のような存在が出来たことに姉は舞い上がっていた。いや、姉だけでなく、俺も舞い上がっていたんだろう。アパート探しをしている、ジュディスへ「ここに住んだらいい」なんて言ってしまうくらいには。



 俺に、色付いた景色を見せてくれた、ジュディスを助けたかった。でも、それだけでなくて、本当は友人以上の存在になりたくて、ずっとそばにいたくて、あんな突拍子もないことを言ってしまった。



 「ダンフォース!だいすき!」と、ジュディスが初めて抱き付いてきた、あのとき、俺がどれほど驚いて、どれほど嬉しかったか、ジュディスは絶対分からないだろう。



 

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