第14話 ダンフォースside
姉のレベッカが言うには、俺は赤ん坊の頃から愛想も可愛げもなかったらしい。
俺たちの両親は、あまり良い人間ではなかった。家にもほとんどおらず、気分次第で手が出る人たちだった。俺は子どもらしくない偏屈な息子だったから、余計に苛立たせていたようだ。怒ると食事も抜くような家庭で生き延びてこられたのは、年の離れた姉が上手いこと庇ったり、立ち回ったりしてくれたからだ。
だから、姉が弁護士になるために司法学校に入るとなった時、姉は俺のことを心配し、陶芸家をしている遠縁のサミュエルに助けを求めた。・・・因みに、あの両親が学費など出すわけがないので、姉は特待生枠をもぎ取って入学した猛者だ。
「あー・・・レベッカ。悪いが、俺は子どもを育てられるタマじゃないんだよ。」
「別にダンフォースを躾たり、叱ったり、導いてほしい訳じゃないの。ただ、置いてくれたらいいの。お願い、サミュエル。私が家を出て、あそこにダンフォース一人でいたら、ダンフォースが死んじゃうかもしれない。」
涙ながらに姉が説得した甲斐があり、サミュエルは俺を引き取ってくれた。両親が何の抵抗もなく、幼い俺を手放したことにショックも受けなかった。その頃から俺は感情の起伏がほとんど無くなってしまっていたからだ。
サミュエルは自分でそう話していたように、子育てにはあまり向いていない人間だった。とても寡黙な人で、話すことは殆ど無い。だけど、俺に手を上げることも、食事を抜くことも無かったから、家よりずっと居心地が良かった。
「・・・お前、友達とかと遊びに行かないのか?」
ある日、サミュエルが尋ねてきた。笑ったり、怒ったり、泣いたり・・・そんな感情を見せることもない俺は、学校の同級生から遠巻きにされていた。なので毎日真っ直ぐサミュエルの家に帰っていたのだ。
「暇なら、これやってみるか?」
そう言ってサミュエルは陶芸を教えてくれた。不器用な彼が、どうにか俺を気遣い、誘ってくれたのが、幼い俺にも分かった。俺が陶芸をしている間、サミュエルはいつもより優しい表情をしていた。それが嬉しくて、どんどん陶芸にのめり込んでいった。
それが何年も続き、俺は学校を卒業してから陶芸家になりたい、とサミュエルに言った。サミュエルは「物好きだな。」と言ったが、その顔は誇らしそうにしていた。
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