第11話



「あ、の、ひとが・・・。」


「あの人?」



 声が震えて、上手く話すことが出来ないのに、ダンフォースは甘く抱き締めたまま、優しい声で聞き返す。




「あの、綺麗な人。お洒落な服を着てた。工房に来てたでしょう。・・・ダンフォース、楽しそうだった。私と、話す時よりも、笑ってた。ダンフォースのこと触ってた・・・わ、たしは、ダンフォースのこと、触らないで、って、思って。」


 あの光景を思い出して、胸が引き裂かれそうな程痛くなり、涙が止まらなくなる。息が苦しい。



「ジュディス・・・。」



「手紙も、隠してた。嫌に、なったのは、ダンフォース、でしょっ・・・!」


 ダンフォースに、もういらない、と言われるのが怖くて、悲しくて、寂しくて、ジュディスがずっと聞けなかったこと。絞り出す言葉は、消えてしまいそうな程小さくて。だけど、ダンフォースには届いたようで、抱き締める腕にぐっ、と力が籠る。



「ジュディス、不安にさせてごめん。寂しくさせてごめん。だけど、違う、違うんだよ。」


 首を振りながら話すダンフォースの言葉は辛そうで、悲しそうで、嘘をついてるとは思えなかった。ダンフォースはジュディスの涙を丁寧に拭い、頬に手を添え、視線を合わせたまま言った。




「見せたいものがあるんだ。」


 ダンフォースは不思議そうにしているジュディスの手を強く握り、工房へと向かった。

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