第10話



 ジュディスは、しばらく悩んだ後、一度ダンフォースと離れたいと思うようになった。家の中で気まずい雰囲気が続いていたことと、またあの美しい女性とばったり会うことを恐れたのだ。ダンフォースに美女のことを尋ねることは、どうしても出来なかった。ダンフォースが美女を選んでしまうのではないか、聞いてしまったらもうジュディスの居場所が無くなってしまうのではないか、と不安で仕方なかった。


 ジュディスはサリーに相談し、一時的に従業員寮の一室を借りることにした。そして荷物を纏めているところにダンフォースがやってきた。



「ジュディス、何をしているの?」


「えっと・・・。」


 ジュディスは意を決して、しばらく従業員寮で生活することを伝えた。ジュディスは、ダンフォースがあの美女と会いやすくなるので喜ぶのではないかとすら思っていた。しかし、ダンフォースの顔をみるみる曇り、ジュディスを強く抱き寄せた。


「どうして?」


「・・・え?」


「・・・もう俺のこと嫌になった?」


 耳元で囁くダンフォースの声は、苦しみに溢れていた。ちがう、大好きなダンフォースにそんな声を出させたかった訳ではない。


「ダンフォース・・・。」


「悪いところ直すから、教えてほしい。」


「違う。嫌になって無いし、悪いところなんてないよ。」


「じゃあ、どうして。」


 ダンフォースに、自分の不安を伝えてもいいものか躊躇った。だが、目の前で捨てられた子犬のように悲しそうにしているダンフォースには伝えないといけないと、ジュディスは拳を握り締め、話し始めた。

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