第8話




 気が付いた時には、ジュディスは布団の中に潜り込んでいた。


(ダンフォース・・・楽しそうだった)


 ジュディスがほとんど見たことの無い笑顔を見せ、楽しそうに話していた。あの顔を思い出すと、胸がぎゅっと握り潰されたように苦しくなる。


(苦しい・・・。)


 ダンフォースに、自分のことを好きかどうか聞けないまま、今日まで来てしまった。寂しさでいっぱいになり、先程の二人が頭から離れなかった。



◇◇◇


「ジュディス、やっぱりまだ本調子じゃないんじゃないかい?」


 ダンフォースからは止められたが、ジュディスは翌日から仕事に復帰した。しかし、前日のダンフォースを思い出し、仕事中ぼんやりしてしまっていたようでサリーが気遣う言葉を掛けてくれた。


「いえ、もう元気です!心配させてしまってごめんなさい。」


「それならいいけど・・・ジュディス、もう宿の改築も終わったから従業員の寮も利用できるようになったんだ。ジュディスがダンフォースと仲良くしているようだから安心しているけれど、もし必要な時があったら遠慮なく使っていいんだからね。私たちは、ジュディスのじいちゃんばあちゃん代わりだと思っているんだよ。」


 サリーの暖かく優しい言葉に、思わず涙を溢れた。祖父母が亡くなってから、サリーとエドガーが助けてくれたが、どうしても遠慮してしまう壁があった。それは、同じ血の繋がる叔父から心ないことをされ、人を信じることを恐れるようになってしまっていたからだ。そこに、ダンフォースが現れ、ジュディスの心を癒す存在となってはいたが、やはり信じようとするとブレーキが掛かってしまっていた。


「サリーさん・・・ありがとうございます。」


 ふんわりとサリーに抱き締められ、ジュディスの涙は止まらなかった。

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