第5章 セシリーとの対決
翌日。
俺は依頼を受けるために午後からギルドに赴いた。
先日、Dランクへと昇格したことで受けることができる依頼も増えたため、次はCランクへ昇格するために次々と依頼を受けていこうと思った…のだが。
「まさか、受けられる依頼がないとは……」
依頼が貼られている掲示板を見ると、Dランク以下の依頼がなかったのだ。
「依頼を受けるのは早いもの順なので、今回は運がなかっただけかと……」
俺が呆けていると、フォローするかのようにエリスさんが言った。
「そうですか……」
「誰かに同行する形であればCランクまでの依頼を受けられるのですが……」
ギルドでは一つ上のランクまでなら他のギルドメンバーに同行することができる。
例えば、Cランクのリーサが受ける依頼に同行することで報酬を分配する形にはなるが、評価もされる。
「リーサは今朝から王都を離れる依頼を受けているし、他のギルドメンバーもいなさそうだしな……」
ギルドを見渡すと、またもや俺とエリスさん意外に人はいなかった。
俺は自分の間の悪さを恨んだ。
「こう言ってはなんですけど、報酬を分配することに抵抗感がある人もいますので、誰もが心よく受け入れてくれるわけではないので」
「ですよね……」
俺はエリスさんの意見に納得すると、リーサ以外に依頼を受けてくれそうな人がいないか考えてみる。
すると、俺の中ではセシリーが浮かんだのだが、Bランクの彼女を俺の都合に付き合わせるのはどうかと思ってしまった。
「あ、そうだ……」
俺はあることを思い出すと、ブレシスを取り出してはある人物に電話をかけ始める。
コール音が2回鳴り、相手に電話が繋がる。
「はーい!もしもーし!どうしたのー!?」
すると、電話越しに元気な女性の声が聞こえてきた。
ただ、声量が大きかったため、少し耳に響いてクラっとした。
「セシリー、良かったら前にした約束を果たそうかと思って電話してみたんだけど……」
電話の相手はセシリーだ。
以前、俺の依頼に付き合ってもらった代わりに勝負をしてほしいという約束をしていたが、先延ばしにしていたため、せっかくの機会なので試しに聞いてみることにした。
「約束って、シンと勝負することの話で間違いないよね……?」
セシリーは先程の元気そうな声ではなく、少しトーンを下げて話してきた。
「ああ。今日はどうかなと思ったんだけど、難しそうであれば他の日で……」
「……ふ、ふふふ……」
「えっと……セシリー?」
すると、セシリーは不気味に笑い始めたため俺は心配になる。
「ついに……ついに待ってたよ!このときを!今日……いや!今からやろう!どこに行けばいい!?」
「あ、ああ。ギルドの練習場でどうだ?」
いきなり高いテンションで話し出したセシリーに俺は動揺しながら答える。
「ギルドだね!?待ってて!10分……いや!5分で行くから!」
「あ、ああ……そんなに急がなくてもいいけど……って切れた」
気づいたら電話は切れてしまっていて、ブレシスの画面は通常状態に戻っていた。
「エリスさん、この後、練習場を借りることはできますか?」
俺はエリスさんに問いかける。
ギルドには模擬試合をしたりするための練習場があり、ギルドメンバーは申請をすれば自由に使用できる。
ただし、魔法の使用は危険なので禁止されているが。
「はい、大丈夫ですけど……もしかして、セシリーさんと試合をされるんですか?」
先程の俺の電話を聞いていて察していたのか、エリスさんは確認するように聞いてきた。
「はい、セシリーとの約束でしたので。あわよくば、依頼に同行させてもらおうかなとも思っていますが」
本当はセシリーに依頼に同行させてもらえないかお願いしょうと先に考えたが、まずは筋を通すべきだと思った。
「そうですか。シンさんとセシリーさんが……」
すると、エリスさんは何やら思い込んだような表情をし始めた。
「どうかしましたか?」
「あの……シンさん」
エリスさんは俺を心配そうに見て、口を開く。
「自信を、無くさないでくださいね?」
「え?それはいったいどういう……」
そして、俺がエリスさんにその理由を聞こうとしたときだった。
「おっまたせー!!」
ギルドの入口の扉が勢いよく開けられ、部屋中に大きな声が響きわたる。
その行動と声だけで、俺は誰が入ってきたかが分かってしまう。
「来たな、戦闘狂」
振り向いて入口を見ると、案の定、そこにはセシリーが立っていた。
そして、こちらに気づいたセシリーは勢いよくこちらに近づいてくる。
俺はギルドに置いてある時計を確認してみたが、電話が切れてからちょうど5分後の時刻を示していた。
「まさか本当に5分で来るとは」
「言った通りでしょ?いやー楽しみだなぁ!早くやろうよ!」
セシリーはその場で体を小刻みに上下に動かしている。
どうやら内なる感情が抑えきれないようだ。
「少しは落ち着けよ。じゃあ、練習場に行くか」
「オッケー!」
そして、俺たちはギルドに備え付けられている練習場に向かって歩き出した。
「武器はさすがに練習用でいいんだよな?」
「うん!本当は真剣がいいんだけどね」
俺は以前、リーサからセシリーは剣技においてはAランクのエリクさんを上回っていると言っていたことを思い出す。
つまり、剣の勝負でセシリーに勝てるものは少なくとも王都にはまずいないと言っても過言でないだろう。
そんな相手に未だに迷いを抱えている俺の剣技がどこまで通用するのか。
そんなことを考えているうちに、俺たちは練習場へと到着した。
「お、ラッキー。今は誰もいないから広々と使用できるね?」
セシリーが嬉しそうな顔をしながら言う。
練習場は共有スペースなので、使用している人が他にもいると狭くなってしまうからだ。
「さてさて、武器はあそこかな?」
俺たちは練習用の武器が置いてある倉庫に向かい、普段から使用している武器と同じ種類のものを探し、手に取る。
セシリーは長剣で、俺は太刀だ。
どちらとも刃がない仕様になっているため、怪我はするかもしれないが、切られることはないため大事にはならないだろう。
そして、練習用の武器を持った俺たちは練習場の中心に移動して、お互い向かいあった状態になる。
「よし!じゃあ、これで準備完了かな?」
「ああ、それで勝負の勝敗をどんな感じにするんだ?」
俺が問いかけると、セシリーは少し考えて口を開く。
「そうだね、倒されるか降参した方が負けってことにしよっか」
「分かった。それじゃあ、始めるか?」
「うん!本気でかかってきてよね?」
セシリーはそう言うと、先程まで試合ができるのが楽しみといったテンションだったが、徐々に集中し始めた様子を見せる。
「ああ、もちろんだ」
わずかに緊張を感じながら、俺も同じように集中し始める。
すると、セシリーはポケットから硬貨を取り出すと、親指の上に乗せて上に弾くような準備をする。
「それじゃあ、このコインが地面に落ちたら試合開始ね」
「了解だ」
「それじゃあ、いくよ……!」
セシリーはそう言って親指に乗せていたコインを上の方に勢いよく弾いた。
回転しながら宙に舞っていくコイン見た後、俺とセシリーはお互いに手に持っている武器を構える。
そして、コインが落下してきてキン、という音を立てて床に落ちると、それを合図に俺は足場を強く蹴った。
「一の太刀!“雷光”!」
俺はセシリーとの間合いを一気に詰めて切りかかった。
だが、セシリーは俺の一撃を見切り、いなしてしまう。
それにより、隙ができた俺に剣を振るってきた。
「くっ!」
だが、俺は剣を振るった勢いで体を思い切り回転させて、その一撃を何とか避けた。
そして、即座に距離を取ると、体制を立て直す。
(完全に見切られていた……俺の動きが読まれているのか……?)
以前、セシリーが驚いていた技を見切られてしまったことで、俺の中に動揺が生まれる。
動体視力がいいのか、それとも直感だったのか。
「ふふ、やっぱり早いなあ。じゃあ、ボクも!」
セシリーはそう言うと、先程の俺と同じように一気に間合いを詰めてきた。
その速度は“雷光”に匹敵するぐらいの速さだった。
「風月流 一の型“孤月”!」
そう言って放たれたセシリーの剣筋はまるで半月を描くかのように下から俺に向かって襲いかかってきた。
俺はその一撃を咄嗟に後ろに飛ぶことでなんとか躱したが、避けることができたのは完全に偶然だった。
剣を振る速さは目で追えないほどで、振り終わった後の風圧が俺の体に強くかかるほどだった。
そして、セシリーは間を置くことなく、剣を振り落としてくる。
「はあっ!」
「くっ!」
俺はその一撃を太刀で咄嗟に食い止めるが、地に足がしっかりと着いていない状態だったため、踏ん張りが効かずにそのままの勢いで地面に叩きつけられた。
「ぐっ……!」
背中を勢いよく打ちつけ、声が漏れる。
しかし、地面に仰向けに倒れている間にも、セシリーは容赦なく剣を振るってくる。
「くそっ……!」
俺は横に転がることでそれを回避すると、すぐさま立ち上がって、何とか体制を立て直した。
「はあっ……はあっ……」
まだ試合が始まって間もないのに、俺はすでに呼吸が乱れていた。
この前、戦った黒ずくめの人物より圧倒的に強く、数回の攻防で余裕がなくなっている俺に対して、セシリーはまだまだ余裕のある表情を浮かべている。
「ありゃ、“孤月”を躱されるとは思わなかったな。あ、ちなみにシンがこの前、使ってた縮地をボクも使ってみたんだけどできてたかな?」
「な……!?」
まさか、前に一度見ただけの技をもう使えたっていうのか……?
あの技を習得するのにシンやリーサは一体どれだけの年月をかけたと……
「じゃあ、次はあの技でいこうかな。まだ終わらないでよね」
セシリーはそう言って微笑むと、構えを取る。
俺はその表情に可愛さではなく、恐れを抱くと咄嗟に構えを取って応戦しようとする。
(それなら、こちらもあの技で勝負だ……!)
「風月流 二の型……」
そして、セシリーは何かを呟いた後、先程と同じように縮地を使って、俺との間合いを一気に詰めてきた。
「“円月風刃(えんげつふうじん)“!」
セシリーが俺目掛けて、横一直線に剣を振るうと、その速さに周りに風が巻き起こった。
もし、当たっていれば一溜りもないぐらいの威力だろう。
「えっ……?」
だが、その剣筋の先に俺はいなかったため、剣は空を切った。
目の前から突然消えた俺にセシリーは戸惑う。
だが、すぐさま俺の気配を感じとったセシリーは、頭上に顔を向ける。
(気づかれた……!間に合え!)
「雷鳴流 三の太刀……」
太刀を握る手に力を込める。
「“天雷 (てんらい)“!」
“天雷”は縮地で相手の頭上に飛び、上空から攻撃を仕掛ける技だ。
セシリーは俺が目の前から消えたように見えたかもしれないが、実は攻撃を受ける瞬間、瞬時に上空に飛んでいたのだ。
そして、俺はセシリーの頭上から剣を勢いよく振り下ろす。
「くううっ!」
だが、気づかれるのが早かったため、セシリーは思い切り体を捻ることで、体制を低くして、俺の攻撃を避けた。
「これもだめかっ……!」
俺は着地したあと、思わず声を漏らす。
すると、同時にセシリーもその場に立ち上がった。
「いやー、今のはさすがに焦ったよ。面白い技だったけど、もう通用しないかな」
「……だろうな」
きっと、同じ技をもう一度使用すれば、俺が空中か着地した時を狙って反撃されるだろう。
せめて、攻撃を当てるくらいはしておきたかったと俺は悔やむ。
「さて、まだまだいくよー!」
そう言って、セシリーは再度、剣を振るってくる。
目に追えない速さの攻撃が、間髪入れず襲いかかってくるため、俺は防ぐか避けるので精一杯だった。
しかも、あの小さな体から出せるとは思えないほどの威力が、急所を的確に狙ってくる。
ときに放つ俺の攻撃も見切られているのか、一撃も当たらない。
攻撃を少しずつ当てられ、ダメージが蓄積されていき、俺の体は徐々に動きが悪くなっていく。
さっき、エリスさんが言っていた意味が、ようやくわかってきた。
圧倒的な実力差に勝てる気がしない……
これが<剣姫>セシリー・アスベルの実力……!
「“円月風刃”!」
「ぐはっ!」
そして、隙ができてしまった俺は、セシリーの剣技をもろに受けてしまった。
強い衝撃が腹部を襲い、俺はその場に膝をつく。
「はぁ……はぁ」
「……く……そ」
セシリーは息を切らしながら俺を見下ろす。
俺は何とか立ち上がろうとするが、痛みで声を上手く出すこともできないくらいで、体がいうことを聞かなかった。
「ふぅ……さすがに今のはキツいかな?……まさかここまでやるとは思わなかったよ。やっぱり、リーサやエリクの言っていた通り、シンは強かったね」
セシリーは乱れた呼吸を整えながら俺に言ってきた。
「でも、ボクには敵わないよ。ましてや、迷いを抱えたままのその剣でね」
「っ!なん……で……?」
俺は図星をつかれて驚く。
「なぜって?剣を交えればわかるよ。強い意志のある人の剣は重みが違うから。それは剣の速さや重さの話じゃなくて、気持ちの重さのことだよ。シンの技術や経験は飛びぬけていると思うよ。だけど、剣を振るう意志の重さが弱い。だから、ボクには……ううん、リーサやエリクにも一生勝てないだろうね」
「なん……だよ……それ」
普段は少しおちゃらけた感じなのに、今のセシリーは真顔で俺に話し続ける。
そして、リーサにも言われた気持ちの問題という言葉を、まさかセシリーにまで言われるとは思わず、俺は困惑する。
「でもね、例え意志の強さを持っていたとしても、それでもボクには勝てないよ。だって、剣でボクに勝てる人なんていないんだから……」
そう言ったセシリーは切なそうな表情をした。
まるで辛い出来事を思い出すように。
「くそ……!」
「やめときなよ。ボクが言うのもなんだけど無理しないほうがいいよ」
心配してくれているであろうセシリーを他所に、俺は痛みに耐えながらも無理矢理、体を起こした。
「はあ……まだだ……!俺は負けられないんだよ……」
「……そっか。じゃあ、終わりにしてあげるね」
そう言ってセシリーが俺に再び剣を振るってきた。
「ぐはっ……!」
立っているのがやっとだった俺はその一撃を避けることもできず、もろに受けてその場に再び倒れる。
「……やっぱり、いないんだね。ボクを倒せる人は……」
セシリーが何かを言っていたが、身体中が痛み、立ち上がる気力も残っていない俺は聞き取ることができなかった。
そして、朦朧とする意識のなか、リーサやセシリーに言われた言葉が頭の中で響く。
(気持ち……?意志の強さ……?)
そもそも、なんで俺はこんな目にあってまで強くなろうとしているんだ?
なぜ、本当の妹でもないアーニャのことを、こんなにも助けたいと思っているんだ?
そして……アーニャを助けることができたとして、それからはどうするんだ?
(分からない……なんだよ、意志の強さって……俺は、なんのために……)
そして、俺は答えが出ることもなく、そのまま諦めて目を閉じようとする。
そのときだった。
(お兄ちゃん……!)
女の子の声が聞こえた気がした。
薄れゆく意識の中、こちらを見て俺を兄と呼ぶ女の子の姿が見える。
だが、その子はアーニャではなく、別の女の子だった。
そして、アーニャと変わらない背丈の女の子の姿を見て、俺は胸が締め付けられるように苦しい気持ちになる。
そうか……これはシンではなく、俺自身の記憶だ。
なぜ……忘れていたのだろう。
妹が、病気で亡くなった時のことを。
「あ、ああ……!」
いや、忘れていたんじゃない。
現実と思いたくなかったから、あの苦しみを、辛さを、悲しさを、全て俺は無かったことにしたんだ。
大切な妹と過ごした日々のことまで、全て忘れて。
そんな俺の姿を見ていた、両親の辛そうな顔までも俺は思い出す。
「ごめん……ごめんな、鈴……。最低な兄貴で、本当にごめんな……」
俺は、目の前に見える今はもう会うことのできない妹、鈴に謝る。
そして、鈴は俺の言葉を聞くと、微笑んだ。
(がんばってね、お兄ちゃん。どんなお兄ちゃんでも、私はずっと大好きだよ)
「鈴!」
鈴は俺にそう言い残すと、目の前からいなくなった。
「鈴……。ああ。俺たちみたいな思いはさせないよ、あの二人にはな」
俺は知らない間に、自分自身をシンとアーニャに重ねていたんだ。
だから、こんなにも助けてあげたいって思っているんだ。
きっと、俺だからこそ、シンの代わりにできることがあるんだ。
だから、俺はシンの代わりに剣を振るう。
そう、心に強く思うと、朦朧としていた意識が嘘のように冷めていった。
「くっ……!」
「え……?」
俺が立ち上がる姿を見たセシリーは、ありえない状況を見ているような顔をした。
「うそ……?なんで、まだ立ち上がれるの……?」
「……ここで負けたら、助けることができるものも助けられない気がしてな……」
俺は気力を振り絞ってセシリーに言う。
「……さすがにこれ以上は責任取れないよ。それでも、まだやるの?」
「ああ」
「……分かったよ」
俺の本気が伝わったのか、セシリーは戦いを続行してくれた。
セシリーが構えを取ったため、俺も太刀を構える。
先程までのダメージが蓄積されており、次に一撃を食らったらさすがに立ち上がれないだろう。
体中に痛みが走り、体が重い。
それなのに今の俺は気力が満ちており、さっきまでとは世界が変わって見えるようだった。
「じゃあ、いくよ!」
セシリーが一気に間合いを詰めて切りかかってくる。
俺はその攻撃を太刀で受け止めると、セシリーは間髪入れずに切りかかってくるが、それらを全て俺はいなした。
セシリーは自分の連撃を受け止められると思わなかったのか、驚いた表情を見せた。
(さっきまで見えなかった剣筋が、今は見える……!)
そして、今度は俺からセシリーに攻撃を仕掛ける。
その太刀筋はさっきよりも速く、そして重さが乗っているような感覚がしている。
「くっ……!」
「はあっ!」
俺が大きく太刀を振るうと、セシリーは後方へと飛ばされた。
さっきまで余裕を見せていたセシリーの表情からは焦りが見え始めた。
「どうして……!?さっきまでとはまるで別人みたいに……!でも、面白くなってきたよ!」
そう言って、セシリーは剣を構える。
「いくよ!この技で勝負だ!」
今まで放ってきた技と違い、集中しているように見える。
おそらく、大技をしかけてくるつもりだろう。
だが、俺はセシリーの攻撃を受け切るような構えを取る。
「……!まさか、ボクの技を受け切る気……!?」
セシリーは驚く様子を見せる。
なぜか、感覚が研ぎ澄まされている今の俺なら対応できる気がした。
「……ふふっ、じゃあ、やってみせてよ!いくよっ!風月流 四の型!」
セシリーは地を蹴って、瞬時に俺の元へと移動する。
「“七葉烈風(しちようれっぷう)”!」
今までよりも速く、そして複数の剣撃が俺に向かって放たれる。
さっきまでの俺ならどうすることもできなかった攻撃だっただろう。
だが、俺はその7発の斬撃を全て太刀で受け止めた。
「う……そ?」
信じられない、といったような表情をセシリーは見せた。
そして、技を繰り出し、唖然としているセシリーの隙を俺は見逃さない。
「雷鳴流 四の太刀」
俺は太刀を握る手に力を込める。
「“飛電 (ひでん)”!」
俺はそう言い放ち、斬撃を飛ばすかのような勢いで太刀を横一直線に振るった。
「がはっ!」
セシリーはその一撃を防御することもできず直に受けると、そのまま後方へと飛ばされた。
「う……あ……まだ……ま……だ?」
セシリーは痛みに耐え、何とか立ち上がろうとしていた。
だが、その首元にはすでに俺の太刀が突きつけられていた。
しかも、セシリーの手に握られていた剣は、先程の衝撃で手放してしまい、離れた場所にあったので、今のセシリーは素手の状態だった。
その状況は剣士にとっての試合では、負けを意味しているようなものだった。
「まだ、やるか?」
「あ……」
セシリーは俺を見上げながら、呆気に取られていた。
「負けた……の?ボクが……?」
セシリーは今の現状が信じられないといったような顔をしている。
「でも、どうしていきなり……さっきまで本気じゃなかったの?」
「いや、本気だったさ……悪いけど、俺も上手くは説明できない。ただ……」
俺はセシリーを起こそうと手を差し伸ばしながら言った。
「俺はお前に勝った、ってことでいいよな?」
「……うん、そうだね。納得いかないけど、ボクの負けだよ」
そして、俺の手を取ったセシリーを引っ張って起こした。
「うっ……!いたた……」
すると、セシリーは腹部を押さえて痛がっていた。
先程の、俺の一撃をもろに受けてしまったからだろう。
「大丈夫か?思い切りやっちまったからな」
俺はそう言うと、セシリーに回復魔法をかけ始めた。
「本当だよ……というかシンの方がひどい怪我してるんだから、自分を先に回復しなよ」
「いや、俺より女性のセシリーの方が先だ」
「なっ……!」
俺の言葉にセシリーは動揺した様子を見せ、心なしか、顔が少し赤くなっていた。
「ほら、どうだ?まだ痛むか?」
「……うん……大丈夫。ありがと……」
セシリーは自分の腹をさすって、痛みがなくなったことを確認すると、俺にお礼を言ってきた
だが、顔はまだ赤くなっているままだった。
そして、俺は自分にも回復魔法をかけて、傷を治癒し始めた。
正直、立っているのも辛いくらいだ。
「はあ……それにしてもボクが負ける日がくるとは思わなかったよ」
「なら、今日が勝負に負けた初の記念日だな。おめでとう」
「むぅー!なんか、その言い方むかつくー!」
俺の言葉にセシリーは腹が立ったのか、その場で地団駄を踏んだ。
「まあ、俺が倒れている時に何度も攻撃の手を止めてくれていたから、実践では負けだったと思うけどな」
「それでも、あそこまで追い込まれたんだから負けみたいなもんだよ。それに、最後に見せたあの動きを最初からされていたら、早いうちに負けていたと思うし」
セシリーはむすっとした表情をしながら俺に反論する。
そして、俺は自分にも回復魔法をかけ終わると、先ほどまであった痛みが嘘みたいに無くなった。
俺はシンが回復魔法を使えていたことに心から感謝した。
「ふう……じゃあ、約束はこれで守ったってことでいいよな?」
「うん、そうだね……」
俺の問いに、セシリーは何かを考えているような様子を見せながら答えた。
「……?じゃあ、武器を片付けて戻るとするか……」
「ま、まって!」
そして、俺が武器を片付けるため倉庫に向かおうとすると、いきなりセシリーに呼び止められた。
「ん?どうしたんだ?」
「あ、あのね……?その、ボクを……シンの仲間にして欲しいんだ!」
「……は?」
セシリーは顔を赤らめながら俺に言ってきた。
だが、言っている意味を理解できず俺は拍子抜けしたような声を出してしまう。
「いや、既に同じギルドメンバーという仲間じゃないのか?」
「えっと、そうなんだけどそうじゃなくて……」
セシリーは何やらもじもじしながら恥ずかしそうにしている。
そして、意を決したようにこちらを見ると口を開き始めた。
「あのね、ボクはずっと自分を倒せるくらいの強い剣士が現れるのを待っていたんだ。だから、ボクに勝ったシンとこれからも一緒に行動を共にしていきたいんだ!」
まるで告白でもされているかのような台詞だったため、俺は恥ずかしくなってしまう。
「えっと……それはつまり、俺が依頼を受けたい時とかは一緒に付いてきてくれる、ってことでいいのか?」
「もちろん!むしろボクが一緒に行動させてもらいたいくらいだよ!」
セシリーは前のみりになって、俺に言う。
理由はわからないけど、それでも俺としては願ったりなことなので、断る理由はない。
「分かった。なら、これからよろしく頼むよ。俺としてもセシリーが一緒に行動してくれるのはとても心強いからな」
「本当!?やったー!!」
俺が答えると、セシリーはその場で飛びはねて喜んだ様子を見せた。
「喜びすぎだろ。でも、よろしくな」
「うん!あ、でも、それだけじゃなくてね……」
セシリーはそう言うと、俺に腹に勢いよく抱きついてきた。
「お、おい……?」
「シンのこと、気になっちゃったってのもあるかな……」
「……へ?」
突然の発言に俺は固まってしまう。
「だって、シンってクールな感じかと思ってたのに、何度倒されても起き上がってきて、立ち向かってくる熱血さもあって……そんな、シンを見てたらキュンってしちゃったんだもん。しかも、ボクを倒せるくらい強いなんて……もうたまんないよ!」
セシリーは俺を抱きしめる力を強くする。
「ちょ、少し落ち着け……」
セシリーは恋する乙女のような反応を見せているため、俺は新鮮な気持ちになる。
可愛い女の子に抱きつかれている状況は悪い気はしないが、正直照れるのでそろそろ離してほしいという気持ちになってきた。
「ダメって言われても絶対に付いていくからね!あ、あと、さっき見せた動きについてもちゃんと説明してよね!」
「わ、わかったから……」
俺はセシリーの勢いに、たじたじしてしまう
そして、俺はなぜかこの状況に違和感を覚える。
前にもこんなことがあったような気が……
俺がそう考えた時だった。
「っ……!」
俺は以前にも感じたことのある殺気のようなものを感じた。
「こ、この殺気は……」
いまだいれに抱きついたまままのセシリーも、俺と同じようにこの殺気を感じているようだった。
「ま、まさか……」
俺は恐る恐る練習場の入口の方に顔を向ける。
すると、そこには鬼の形相をしたリーサが立っていた。
「……二人とも、こんなところでなにやってるの……?試合してたんじゃなかったの……?」
そう言ったリーサは以前と同じ、いやそれ以上の負のオーラを出しながら一歩ずつこちらに近づいてくる。
リーサが近づくにつれ、俺は冷や汗が溢れてきている気がする。
「ねえ、セシリー?なんでまたシンに抱きついてるの?二人は随分と仲が良いんだねぇ……?」
「ひっ!」
すると、あれだけ言っても俺から離れなかったセシリーが勢いよく離れた。
「そうだ、私も混ぜて欲しいなぁ?でも、手加減はできなさそうだから怪我させちゃったらごめんね……?」
そう言って、リーサは腰から太刀を引き抜く。
それは俺たちがさっきまで使っていた練習用のものではなく真剣だった。
いや、怪我どころか殺す気なのでは……
俺は死の恐怖を感じると、隣にいるセシリーを見る。
「……セシリー、準備はできてるか?」
俺がセシリーに問いかけると、セシリーは頷いた。
「うん。いつでも大丈夫だよ、シン」
どうやら、俺の考えていることは口に出さなくても伝わったようだ。
そして、俺たちは近づいてくる鬼……ではなく、リーサに対抗するように体制を低くして足に力を入れる。
「それじゃあ、1、2の3で一気にいくぞ?」
「了解だよ……」
「1、2の……」
「「3!」」
そして、合図と同時に俺たちはお互いに別方向に走り出し、リーサから離れるように全力で逃げた。
「……え?」
リーサは俺たちの取った行動に呆気に取られた感じでその場に立ち尽くす。
だが、それも一瞬のことだった。
「……にがすかあああああああっ!!!」
リーサは俺たちが逃げたことを理解すると、すぐさま俺たちを全力で追いかけてきた。
「にげろおおおおおおおっ!!!」
人生で一番恐ろしい鬼ごっこが始まった瞬間だった。
「本当に何をやっているんですか、あなたたちは……」
「……すいませんでした」
地獄の鬼ごっこから無事に生還した俺とセシリー、そして鬼だったリーサはその後、ギルドから呼び出しを受けていた。
そして、三人揃って床に正座させられており、エリスさんからお叱りを受けている最中だった。
「人が襲われているってパニックになったんですよ!?白昼堂々と刃物を持って人を追いかけまわす人がどこにいるんですか!」
はい、俺の隣にいます。
「まったく……!皆さんは王都では顔を知られているので大きな騒ぎにはなりませんでしたが反省してください!特にリーサさん!」
「はい……本当にすいませんでした……。もう、こんなことがないように気をつけます……」
リーサは今まで見たことないくらい落ち込んだ様子を見せている。
自分のしたことが相当申し訳ないと思っているのだろう。
そして、できれば被害者の俺たちにも謝ってほしい。
「シンさんとセシリーさんもです!なんで、リーサさんが追いかけてくるのが分かっていて外に逃げ出すんですか!」
「ええ!?それはさすがに理不尽じゃ……!」
「そうだよ!ボクたちは被害者なのに……!」
俺たちがそう反論すると、何か文句でもあるのか、と言わんばかりにキッとした顔で睨まれてしまう。
「「なんでもないです。すいませんでした……」」
その迫力に俺もセシリーも押されてしまい、ただ謝る。
普段、温厚な人ほど怒ると怖いって言うが、それを目の当たりにした瞬間だった。
「はあ……足が痛いよ……」
小一時間、説教された俺たちはようやくエリスさんから解放された。
いま、俺たちはギルドを出て王都内を歩いており、隣を一緒に歩いているセシリーは自分の足を痛そうにさすっていた。
硬い床に長いこと正座をさせられていたのだから、無理もない。
正直、俺も少し痛い。
「二人とも本当にごめんね……また我を失ってあんなことしちゃって……」
そして、リーサはというと未だに落ち込んでおり、頭を下げて俺たちに謝ってきた。
「まあ、俺たちに非があった……のかは分からないけど、あんな感じで我を忘れて斬りかかってくるのはもうやめてほしいな……」
「うん。あれは本当に怖いよ……」
俺はできれば思い出したくない光景を思い出しながら言った、
それはどうやら、セシリーも同じようだ。
「うん……本当にごめんね……もう、あんなことがないように気をつけるから……」
リーサは目に少し涙を溜めながら、声を振るわせて言った。
今にも泣きそうな感じな姿を見て、俺は見るに耐えられなくなる。
「その……なんだ。別に怒ってるわけじゃないし、もうあんな感じにならないようにしてくれれば平気だから。それに……」
俺はリーサに近寄って、右手をリーサの肩の上に置く。
「シン……?」
リーサは少し涙目になった目で俺を見てきた。
うるっとした目で見つめられ、俺はついドキッとしてしまうが、そのまま言葉を続ける。
「俺はいつも笑顔で明るい感じのリーサが好きなんだ。だから、そろそろ元気出してくれ」
「シン……」
俺がそう言うとリーサは顔を赤らめ、肩に置かれている俺の手に自分の手を重ねてきた。
「うん、ありがと。そうだね……いつまでも落ち込んでるなんて私らしくないよね。……よし!反省おわり!」
すると、落ち込んでいたリーサは自分に喝をいれ、いつもの調子に戻ってくれた、
やっぱり、リーサはこうでいて欲しいと俺は改めて思った。
「はぁ……」
すると、唐突にセシリーがため息をついた。
俺はセシリーを見ると、顔を少し膨らまして、どこかつまらなそうな表情をしていた。
「セシリー?どうしたんだ?」
俺はセシリーに問いかける。
「いやね、分かってはいたけど、目の前でこうも見せつけられると嫌な感じだなぁって。前は面白かっただけなのに、今はなんかイラッとしちゃうよ」
リーサが元に戻ったと思ったら、今度はセシリーが機嫌を悪くしてしまった。
「え……?どうして?」
「隙あらばイチャついてるからだよ……これからこんな光景を常に見せられるボクの気持ちにもなってほしいよ……なんか、リーサがあんな感じになるのも今なら分かる気がする」
リーサの問いにセシリーは不機嫌そうに答える。
「イ、イチャつくって、別にそんなこと……」
「本当に?今の自分の状態を見てみなよ」
そう言われてリーサは今の自分を見る。
自分の肩に置かれている俺の手に、自分の手を重ねている。
しかも、先ほどまではお互い見つめあっていた。
確かにその姿は傍から見たらイチャついているように見えただろう。
「あ、ああぁ……」
同じように今の状況に気づいたリーサは恥ずかしくなってきたのか、どんどん顔を赤くしていく。
相変わらずの耐性の低さだが、そんなところも俺は可愛いと思う。
「あーあ、好きとか言われてうらやましいなー。ボクもそんなこと自然に言われてみたいよ。ねえ、リーサ?今の自分の顔が見えてる?もうね、真っ赤かだよ?見てるこっちが恥ずかしいくらいだよ?どうしたの?今日ってそんなに暑いかなー?」
そんなリーサに追い討ちをかけるようにセシリーが言葉を言い放つ。
機嫌が悪かったはずなのに、徐々に面白くなってきたのか、楽しそうにリーサを煽り始めた。
すると、リーサはその場に座り込み、顔を隠してしまった。
「う、ううううっ……!」
その様子はまさに穴があったら入りたいといった状況だろう。
そんなリーサの姿を見て、セシリーは上機嫌になる。
「あはははっ!いやー!やっぱり、リーサはいい反応するなぁ!」
「もう、やめてやれよ……」
さすがにリーサが不憫になってきた俺は制止するように声をかける。
「怖い目に合わされたんだし、これぐらい可愛いもんでしょ?」
「まあ、それについては強く言えないが……」
俺がそう答えると、セシリーは俺に近づいてきた。
「……ところでシン?ボクには好きって言ってくれないの?」
「なっ……!」
俺はセシリーの唐突の発言に驚きの声を上げる。
そして、気のせいでなければその場で座り込んでいるリーサがわずかに体を震わせた気がした。
「な、なんでお前に言わないといけないんだよ?」
「だって、ボク、シンのこと好きなんだから、そりゃ言われたいよ」
「っ……!」
面を向かって好きと言われ、つい緩んでしまった顔を咄嗟に手で隠す。
「あー!嬉しそうな顔してる!もしかして、シンもボクのこと好きだったりして?」
「ばっ……!お前っ……!」
俺たちがそんな会話をしていると、座りこんでいたリーサがゆっくりと立ち上がった。
そのまま太刀を引き抜いてまた暴れてしまうのではと思った俺はつい身構える。
「もう、だめだよセシリー?急にそんなこと言われたらシンも困っちゃうじゃない?ねえ、シン?」
「え?あ、ああ……」
だが、俺の予想とは違いリーサはニッコリと笑っていた。
「……ふふっ。もう大丈夫みたいだね」
すると、その様子を見ていたセシリーが微笑みながら言った。
「えっ?もしかして、今のってわざと……?」
「まあね。毎回あんな感じになられても困るから、リーサには常に平静を保ってもらわないと」
セシリーはそう言ってリーサに笑いかける。
「そっか……ありがとね、セシリ―。もう、大丈夫みたい」
「まったく世話が焼けるんだから。いやー、好きすぎるっていうのも大変だね!」
「もう!なに言ってるの!そんなんじゃないから!
セシリーの意地悪そうな発言を聞いて、リーサは顔を赤くして照れていた。
「じゃあ、シンが好きっていうのも嘘なんだね?本気かと思って、驚いちゃった」
「え?それは本当だけど?」
「……え?」
リーサは一瞬安心した様子を見せたが、セシリーの言葉を聞いて驚いた様子を見せる。
「シンのことは本当に好きになっちゃったよ。だから、リーサとは仲間でもあり、ライバルだね!」
「な、な……」
セシリーの言葉を聞いて、リーサはわなわなと震えている。
「ほら!じゃあさっさと行こうよ!カフェでお茶するんでしょ?」
そう言って、セシリーは走っていった。
そして、二人の会話を黙って聞いていた俺は嫌な予感がしたため、その場から逃げるように動き出す準備を始める。
「……よし、じゃあ俺たちもいく……」
いくか、と言って歩き始めようとしたとき、俺はリーサに腕を思いっきり掴まれた。
「……ねえ、シン?」
「……なんでしょうか?」
痛い。女性のどこにこんな力があるのか。
俺は腕がこのまま握り潰されるのではないかと不安になり始めた。
「何があったのか……説明してくれるよね?」
「……はい」
暴走はしなくなったけど、冷たい怒りがこみあげるのは変わらないようだった。
「そうなんだ、シンがセシリーに……」
その後、カフェに移動すると、俺はセシリーと試合をして勝てたことについてリーサに話した。
どうやら、リーサはギルドに帰ってきた後、俺とセシリーが試合をしていることを聞いて、練習場に来たらしい。
「……でも、そこからシンのことが好きになっちゃったっていうのが分からないんだけど?」
「まあ、ボクを倒したっていうのも理由の一つだけど、やっぱり印象に残っているのは、ボクに倒されでも何度も立ち向かってきたところかなあ……普段はクールなのに、あんな熱いところもあるんだってびっくりしちゃった!」
セシリーが嬉しそうに言うと、当人の俺は恥ずかしくなる。
「へえ……見たかったなあ……たしかにそれは好きにな……」
リーサは言葉を途中で止めて、俺を見る。
「……こほんっ!でも、すごいね、シン!セシリーに勝ったってことは、実質Aランクみたいなものじゃない?」
「それはさすがに言い過ぎだと思うけど……」
露骨に話をすり替えたリーサに俺は言う。
「いやいや、ボクもそう思うよ。しかも、シンは魔法もある程度使えるんだし!」
「そう……か?」
そこまで言われたら、自信を持ってもいいのかもしれないと俺は思い始めた。
「ま、そういうわけで今後のシンの依頼はボクが同行するから。リーサは自分の依頼に集中するといいよ?」
「なっ……!?もともと、シンの依頼には私が付き合っていたんだから、私だって一緒に行くよ!ね!いいよね、シン!?」
「あ、ああ。もちろんだ……」
なにやら前途多難ではあるが、二人が頼りになるのは間違いないため、俺は感謝の気持ちでいっぱいだった。
そして、リーサとセシリーの言い争いが何度か続いたあと、夜も近くなったため、俺たちは解散することになった。
家に帰った後は、アーニャは今日も可愛いな、と気持ちを伝え、
「え……?いきなりどうしたの?そんなことないよ……」と言いつつも、少し顔を赤らめて嬉しそうにするアーニャを見て満足し、俺は明日に備えて早めの眠りについたのだった。
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