第30日 異世界VS日本食 補遺の9 30年前のレシピ

 なんだかんだで、とうとう30日目です。

 毎日700字程度の短文なのにこれだけしんどいという事は、長編連載をしている人はどんだけ大変なんだと改めて尊敬の念を抱きます。


 この「補遺」は、最近読んだり読み直したりした本の内、特に料理関係の本を選んでいますが本日は「レシピ本」です。


 ◇◆◇


 その本は京都で一人暮らしを始めた頃のある夏、下鴨神社の古本市で見つけた本でした。

 発行は1993年初版。丁度三十年前のレシピという事になります。


 サイズは新書版。料理の本としてはいささか以上に小さい本ですが、小さいゆえに荷物にならず、紙の本ですから電源も要らないので充電の必要なく、当たり前ですが完全オフラインですので、WiFi環境も必要ありません。

 勤め先からアパートに帰る途中、地下鉄東西線の車内で「えいや」と適当にページを開いては、晩の献立を考えていたという思い出の本です。


 全ての前提として、古本市に出ていて、しかもお手頃価格というのは「売れた」証拠です。


 古本屋さんにあるという事は沢山売れたという事。沢山売れたという事は沢山刷られたという事。最初の期待値が高くなければ、沢山刷られませんし、面白くなければ重版がかからず、読み終わってなお捨てられず古本屋さんに持ち込まれ古本屋さんが買い取ったのなら、その本はいったん役割を終えながら、必要とする誰かがいるのだと認められたのだということです。

 だいたい面白くなくて価値のない本なら、そもそも古本屋さんが引き取りません。


 それでも趣味に合わなければ流石に買わないのですが、鞄を脇に抱えて不自由な恰好で本を開いたのに、目に飛び込んできた一行で心奪われました。




 ――天ぷらとは、極論すれば、油の熱によっていかに材料から水分を抜くかという料理です。

          『日本料理 プロの隠し技』




 そうか。これが天ぷらか。と「すとん」と腑に落ちました。


 最終更新へ、つづく

           





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