第26日 異世界VS日本食 補遺の5 肉
――ゴビ砂漠の羊は、もっともうまいといわれている。
『世界ぐるっと肉食紀行』
ファンタジーだろうがサバイバルだろうが「生きる」というテーマで物語を書こうとする時、避けては通れないのが「肉」。
トカゲやワニの肉がトリ肉っぽいと小耳にはさんで、サラマンダーやコカトリスをから揚げにするなんてのはネット小説でも見かける話です。わたしもドラゴンさばいてタレに漬け込んで油で揚げたらコレがほんとの「竜田揚げ」なんてネタをいつかやろうとおもってます。とはいえ、いつまでもから揚げばかりというわけにもいきません。肉にもいろいろありますから。
しかしながら、いたるところに「タブー」の転がる難しい話題でもあります。
『世界ぐるっと肉食紀行』は肉を食べる人を追い自らも野心的に喰らう紀行文ですが、昨今の「グルメ紀行本」という言葉から連想する「美味しそう。行ってみたい。」的な本なのか、と問われると「人を選ぶ」と言葉を濁したくなる本。
頑固なまでに全編「肉」。目次の大見出しが、牛・豚・鶏・羊の後、「内臓」「あらゆる肉」と続くのがなにをかいわんや。
著者の西川浩氏は冒険心と好奇心のまま、異国の肉食の風景へ入り込み時にはタブーの際へと踏み込む。そうせずにいられないのは写真家としての本能かもしれません。その一方で
「もの言わぬ生き物は、微細なアメーバから鯨まで、おなじ価値であろうと考えるのは、宗教を知らぬ男のたわごとか。」
と呟きもする。日本人が、世界の文化が異なる人々の生活を目の当たりにした時に心に必ず抱く、波紋のような居心地の悪い戸惑い。ファインダーを貫くタフなまなざしの奥にあるこの感覚に共感を覚えるからこそ、私は、この人の旅に最後まで付き合おうと思えるのです。
肉を食べるという行為と相応の覚悟をもって対峙する気持ちがおありなら、是非にも一読をおすすめします。
でも、人は選ぶよ(笑)
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