第23日 異世界VS日本食 補遺の2 小説の中の食事

 ごはん。――食事のシーンや食べ物の描写は、どんな場面で登場するのだったか。


 まず

「太宰治の『斜陽』の最初の方に食事のシーンの回想があるぞ」

と思い出す方もおられるでしょう。

 物語の陰の主役「お母さま」のキャラクターが食事シーンを通して鮮烈に読む人に焼き付けられる名シーン。ここで焼き付いた印象は物語の最後まで読者の頭からはなれません。


「お汁粉とぜんざい? 三遊亭圓朝の『士族の商法』に出てくる「御膳汁粉」は江戸前の呼び方で、上方でいうなら漉し餡のお汁粉のことだけど、関東のぜんざいには汁気が無くて、関西で言う『夫婦善哉』の「ぜんざい」とは違うんだ。織田作は、食べ物関係が濃いぞ」

という人は、一見わかりやすく説明しようとしている様に見えて、ほんとは混乱させたいんでしょう(笑)

 お汁粉とぜんざいの、関東と関西で違う問題ですね。


「松尾芭蕉に『清滝の水汲みよせてところてん』って句があるけど、他にも白玉とか蜜豆とか、あと水ようかんも夏の季語で……」

等、俳句をやっている人なら食べ物関係は全部季語から見つけてきそう。

 山口素堂の「初鰹」の句もそうですが、俳句の季語と食べ物の旬の相性の良さは、特別です。


「池波正太郎の『男の作法』に鰻を食べる時の心得を見出す」

 ――焼き上がりをゆっくりと待つのがうまい、というやつですね。待っている時間を如何に過ごすかをふくめて「鰻を食べる」という事なんだという姿勢。

 池波作品には食事の場面が多いですが、それがキャラを立てることもあれば、ストーリーのインターバルだったりすることもあります。


 あるいは

「中勘助の『銀の匙』の駄菓子かなあ」

という方がおられたらさすがの「通」というほかありません。美しい光景の描写がちりばめられた珠玉の一篇で、登場する駄菓子もきらきらと輝いていて感じられます。


 他にもあると思いますが、とりあえず、文学関係はこの辺りで。

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