第2日 お題『本屋』

 KAC――カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップでは、毎回「お題」が設定されます。

 今年、KAC2023は『本屋』から出発しました。


 これを

「文字通り『書店』と捉える」

のが、がぜん王道。

 

 学校の帰り道。行きつけの本屋。ガラス越しの店内に見覚えのある横顔。

 手入れされたきれいな指先が本棚に伸びて、一冊の本の背表紙の角にかかる。

 ゆっくりと慎重に。引き出された表紙の三角形が30°・60°・90°の方の直角定規から、45°・45°・90°の二等辺三角形の方にかわって、ようやく、タイトルがあきらかに――


 で、その本がライトノベルか、ミステリーか、SM小説かでストーリーが分かれる――とか大好きです。誰か書いて。


 あと「出版社みたいな本を作る会社で『本屋』」みたいのも楽しいです。前回のエッセイにちらっと出てきた「蔦屋重三郎」は江戸時代の出版社である『版元』ですし、現代なら塩田武士さんの『騙し絵の牙』みたいのも面白いです。


 きっと大手出版社には経営方針と方向性と理想と情熱がまじりあった、どろどろのぐちゃぐちゃな権力闘争とかあるんです。そうにちがいない。


 あと、何といっても『古書店』! 古本屋さんです。こっちもライトノベルならば『ビブリア古書堂の事件手帖』がありますし、かたい目(?)なら京極夏彦氏の『書楼弔堂』のシリーズがあります。


 またリアルなら、古書業界を騒然とさせた『芭蕉直筆「奥の細道」発見』の経過などは、関連書籍を追いかけるまでもなく、ネットの記事を追っかけるだけでもスリリング。


 執筆され、出版され、書店に並び、人の手に渡り、古書店に並んで次の読み手を待つ。


 当たり前のように大量消費され、凄まじい分量が日々廃棄されていく『本』。そんな中、不思議な縁で人から人へと受け渡され、受け継がれていく本たちの、つかの間の居場所としての『本屋』、なんてのも読みたいなあ。

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