第四章 ~『遅れてきたヒーロー』~
仲直りしたマリアたちだが、彼女には唯一の心残りがあった。
(ティアラの顔の傷、どうにかして治せないのかしら)
シロの無実を証明しても、もう一つの問題は未解決のままだ。自分で傷つけたとはいえ、治せるなら治してあげたい。
そんな心の内を察したのか、ティアラは柔和な笑みを浮かべる。
「マリア、気にしないでくれ。この傷は自分への罰として一生背負っていく」
「……でも私は治したいですわ」
その呟きに反応するように、人影が階段を降りてくる。その人物は彼女の期待を叶えられるかもしれない男――ケインだった。
「ティアラくんの傷で困っているようだね」
「ケイン様、もしかして大司教様と連絡が付いたのですか⁉」
「僕の人脈を駆使したが、駄目だったよ」
「そうですの……」
「だが僕は簡単に諦める男じゃない。まだ可能性は残っている」
ケインは魔力を手の平に集める。激しく輝く光は、神々しささえ感じさせた。
「僕は大司教を目指している。だから一から鍛錬を積みなおしたんだ。おかげで僕の回復魔法は効力を大きく高めることに成功した……もしかしたら、大司教の高見へと辿り着けたかもしれない」
「それじゃあ……」
「でも期待はしないでくれ。呪いが解けるかどうかは試したことがないからね。もしかしたら失敗するかもしれない。でもね、僕は失敗しても諦めないよ。必ず、彼女の傷を癒してみせるから」
「あ、ありがとうございますわ」
ティアラのために努力してくれたケインに礼を伝える。彼はそれを受け止めると、ティアラの顔に掌を近づけた。
「さぁ、いくよ」
ケインが回復魔法を勢いよく放つと、光の奔流に包み込まれた。眩しさで瞼を閉じるが、次第に光は晴れ、ティアラの顔が露わになっていく。
結果、刻まれた傷が最初からなかったかのように消え去り、美しい顔だけが残った。彼はガッツポーズを決める。
「治療は成功だ!」
「やっぱりケイン様は救世主ですわ!」
嬉しさのあまり、マリアはケインに抱き着く。喜びを表現するようにギュッと手に力を込める。
「喜んでもらえて嬉しいよ。なにせ君の幸せは僕の幸せでもあるからね」
「本当にケイン様がパートナーでよかったですわ♪」
やはり彼は頼りになる。シロの無実を証明し、親友の傷も癒せた。最高のハッピーエンドに彼女は満面の笑みを浮かべるのだった。
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