本を産むフクロウ

石嶋ユウ

本を産むフクロウ

 たまごの中から本が生まれた。本屋のバックヤードでこれはどんな本だろうと手に取って読むとなかなか面白い。中身はファンタジーだった。不自由な生活を送る主人公が自らの強力な魔法の力で主人に反乱を起こし、自由を手に入れるという物語だった。これは良い。主人公のことを応援したくなってしまう。間違いなく売れる。

「この本をすぐに発売しよう」

 私はすぐにこの本を本屋の店先に並べた。


 私はたまたま拾った本を産むフクロウの世話をしながら、そのフクロウが産んだたまごの中から出てくる本を自分で経営する本屋で売って、生計を立てている。フクロウが生み出す本はどれも面白い。だからこそ、このフクロウを私はどんなものよりも大事にしている。


 今日も早速、お客さんが新作を手に取ってくれた。彼女は本のページをパラパラとめくると、どんどん話にハマったようで、気づいたら三十分も立ち読みしていた。私はあえて何も言わずにそれを見ていた。


 やがて、彼女は読み終えるとレジカウンターにいる私の前までやってきた。

「今日の本、良いですね。いつになく主人公の切実さが伝わってきます!」

「ですよね! 私も読んだのですが面白かったです」

「じゃあ、今日はこれを買わせていただきます」

「まいどあり!」


 フクロウのおかげで私の書店は上向きだ。これからもよろしくフクロウ。そう思って、フクロウにいつもより上等なエサを与えようとした瞬間、フクロウがいるケージの扉が外れる音がした。


「どうして?」

 私は予想外の事態に動きが止まった。私が動けない間にフクロウは開いた扉から飛び立つ。

 まずい。追わねばと思ったが、時既に遅しで、フクロウは店の外へと飛び出して、遥か遠くの空へと飛び去っていった。まるで、長い不自由から解放されたかの様に。


「そんな……」

 ようやく私は飼うということによって、フクロウに不自由を強いていたのだと気づいたのだった。

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本を産むフクロウ 石嶋ユウ @Yu_Ishizima

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