第5話 タスケテ
事の発端は小学校高学年。理由は分からない。急に暴力を振るわれ始めた。先生に相談しても、味方になってくれることなんてなくてむしろ敵側に立った。そんな奴らのために自分は人生を捨てようだなんて思っていなかった。逆にギャフンと言わせたかった。
「頼める?」
高校生となった今、加害者とは全く関わらないようにして過ごしている。中学までは受験をしないと離れることは出来なかったものの、高校は全員が入るのに絶対受験が必要だ。自分はこうはならまいと誓ってずっと生きている。
いや、正確には生かされているという方が正しいかもしれない。
このワケの分からない世の中で、生きろと叫ばれる。それが自分には全く分からなかった。誰かに助けられて生きてるわけでも、誰かに代わりに生きてと頼まれたわけでもない。それなのに、今生きることを強要されている。
「なにを?」
「わからない。けど、何かあった時、頼める?」
多分今の自分は、目の前にいる友達からすれば変人なんだろうなとは思う。急に頼める?なんて言い出して。既に素を出しているせいか変人なんだろうけど、よりそれっぽさが増したかもしれない。
「何か、あった?」
「ううん。」
この友達も、自分が過去にされてきたことを知っている。それがずっと残り続けていることも知っている。なんなら親も知っている。けど親は自分の心境を理解しようとすらしなくて、世の中全員悪い人じゃないとキレイゴトを吐いているだけ。
悪くない人は、誰なの?
その疑問は、抱いたっておかしくはないのに。それの真実を勝手に想像してしまった。
”私たちじゃないよ”
そうか。所詮親なだけ。この家を出ればただの親でしかない。自分を生み育ててくれたことは確かに残るかもしれないけど、自分を守らなければならない義務は無くなる。それなら、外で見つけてこいと。
「ねぇ、良い人になってくれる?」
とか聞けるわけなんてなくて。うん、と言われても完全に、いや、うんって言われればより疑うかもしれない。自分は友達にとっていい人なんだよ!っていうどこへどうするのか分からない自己満足のために自分を使うのか。
あの集団いじめから既に6年が経過している。あの時入学した子たちはもう中学生になるのか。それほどの時間が経ってもいまだ立ち直ることの出来ない自分の心は弱いのか。それとも彼らが強すぎたのか。
「未練、てあるのかな。」
「さあね。あるんじゃない?」
無きゃいいのに。あるから生きなきゃいけないのかもしれない。じゃあ今ここで無くそうか。それも出来ない。この世はどうにかしても自分をここに引き留めたいのか。残念ながらそうはいかない。未練があろうがなかろうか、自分はここから去る。遠くない未来で。
「じゃあさ、もし未練あったら、あげる。」
「要らないよ。私が先にいくからね。もらえない。」
いかせない、という意思をはっきりと出してきたけど、もう手遅れ。彼らに人生壊されたくなかったけど、今頃アホみたいに笑ってるのかなとか思ったらぶち壊されっぱなしだなって。
遺書にはあの時の事も全て書こう。そして、彼らの人生を狂わせる。フルネームで書いてやる。大した思い出なんて無いのにアルバムを保管していたのはそれ。復讐をするため。
大丈夫。それがちゃんと出来る頃には自分はもういないから。安心してやられてほしい。友達には悪いけどさ、これが迎えるべき結末なんだよ。迎えなければならない。それだけは許してほしいね。
「あ」
手を伸ばせば届いたかもしれない物を全てあげる。その代わり、悲しみも一緒にあげることになっちゃうかもしれないね。
それじゃあ、いこうか。
この世の中の果てまで。
書き手始めました おずんぼ @Ozunbo
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無題/おずんぼ
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
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