第2話 またね
「またね」という言葉はいつでもあいつとの合言葉だった。あの交差点で、あの昇降口で、あの家の前で。あいつと物心がつく前から一緒に居たからいつからそれを使い始めたのかなんて分からない。
いつだったか幼い俺は、幼いあいつになぜまたねを使うのかを純粋に問うた時がある。
「またね、ってまた会えるじゃん。もう会えないよってなったらじゃあねって言うんだ。」
俺が引っ越すことになってもあいつは「またね」を使った。だからまた会えるって心のどこかで思えて新しい土地でもやっていけた。
それなのに今俺が見ている、あいつのやけに整った顔には「じゃあね」という文字が浮かんで見えていて。もう二度と起きないし話さないって分かってるのに。俺はいつまで経っても「またね」って言いたい。
あいつとは「またね」しか使いたくないんだよ。使えるわけが無いんだよ。
「お前、約束と、ちげぇじゃんか。このっ。」
「「じゃあな」」
どこからとなく、あいつの声が聞こえた気がして俺は涙を流すことしか出来なかった。
もう俺に出来ることなんて、あいつの分より生きることしかねぇんだよ。だから、今日だけは泣かせてくれ。
何となくだけど、あいつがふんわり笑った顔が浮かんできて、そういやあいつも俺もお互いの前では泣かなかったな、なんて思ったりして。
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