50-6未来の誇りに懸けて

ーーーー ラナ・ウェイバー ーーーー


 終わったの。


 って思ったの。


 ベガオの放つ白い光は、天国への扉。


 そう思わせるくらいには綺麗で、神秘的で、圧倒的な力だったの。


 それでも、私達は生きていたの。


 光の中で、声が聞こえた。


「間に合ったと思ったらコレかよぉん!」

「真っ白だ。驚きの白さ」

「プッププー♪」


 おちゃらけた男の子の声、落ち着きのある男声、ふざけたような女の子の声。


「とりあえずこの真っ白を停めてるけど、どうしよう?」

「誰かに聞けば良い。父さん、どこだ?」

「ププ!? ププププッ、プッ!」


 ナニを言っているのか、分からないの。


 でも、ジェイド様だけは、分かっていたの。


「食べて良いよ」

「プップ〜!」


 女の子の喜ぶ声がしたの。


 次の瞬間、虫食いのように、元の世界が現れ、ジェイド様が綺麗に割る。


 そこに居たのは、勇者と魔王の貫禄を持つ何者か。


「さすがジェイドさん。すぐオレ達って分かったね」

「やはり父さんは、すごいな」

「ププ、プープププ!」


 え? 本当に誰なの?


 背中で語る者達は、名乗りを挙げて、最高神に挑むの。


「やっと見つけて、やっと来れたと思ったら大舞台! やるっきゃねぇよな!? オレはレックス・ペンタゴン! 初めまして、ベガオ! そして死ねぇ! 『アンティーク・ギア・クラフト』起動!」


「父さんには、必要ないと思うが、少しくらい活躍させてくれ。ロラン・フューチャー、参る。『水眼の水晶龍』『炎眼の黒鉄龍』『雷眼の黄金龍』起動」


「プププ、『弱点看破』ププー! …………。……パパー!? ププ、必要ないじゃーん!」


「「ププが喋ったァァ!?」」


 レックスとロラン……? ウーサーとジャックの子供なの。

 ロランはフランの子供。

 ププは、テンテンの子供。


 でも、ププが喋ったことに、未来の子供達がみんな驚いてるの。

 魔王城内で同じ叫び声がこだましているの。


「ププ、称号スキルの時はちゃんと喋ってる。ププー」

「いや、普段から喋ってーや! ロランも言ったれ!」

「レックスの言う通りだ。何となく意思疎通はできたが――」

「それで良いププー。でも、今だけは特別……ゴニョゴニョ」


 3人はなんだかんだと話し込んでいるけれど、レックスはベガオに劣らぬ機械龍を生み出し、ロランは3体の龍を召喚する。

 それらが、ベガオの【サイバー・ドローン】を止めていたの。


 その間に、ププが2人に耳打ち。


 2人はガックリと肩を落としたの。


「マジかー、ジェイドさん、マジ魔王だわ。もう魔神で良いじゃん?」

「……まぁ、目的はベガオの倒し方を知る事だ。叶うなら、何でも良い」

「プッププー」


 そして3人揃って、ジェイド様の後ろに体育座りしたの。


 見学する気満々なの。


 それを見て、ジェイド様は言ったの。


「見ててね。『未来の誇り』に懸けて、僕は勝つから」


 そうして、ジェイド様は空に手を掲げた。


ーーーー アイ・スクリーム ーーーー


 ベガオが叫んでるぜ。


「……なぜじゃ! なぜ動かん【サイバー・ドローン】!! 最高神ベガオ・ラスプーリンが命ずる! 動けぇ! そして、ノース・イート丸ごと滅ぼせぇ!」


 必死に叫ぶが、機械龍どころか戦闘機もホバリングして停止してら。


「無駄だよ、ベガオ。、僕の命令にしか従っていないから。機械龍、ベガオを捕らえろ」


 ジェイドが機械龍に命令すると、レーザーがベガオの手足を貫通して、魔法縄で縛り上げた。


「ふん……それで、ワシらをどうするつもりじゃ?」


 捕まってんのに余裕に見えるな。何かあるっぽいぞ、気を付けろよジェイド。


「殺すよ? 心臓を……核を確実に潰してね。……やっぱり……体内にあるね。小さく細かく、散りばめられてる。ガイの心臓もベガオの中だね」


 ジェイドは見抜いた。


 ベガオの表情が、明らかに変わった。


「僕の魔力は無くなったけど、それでちょうど詰みなの。残念だったね」

「ど、どうするつもりじゃ!?」


 さっきと同じセリフだが、必死さが違うな。


「ワシが死ねば、グリゴリー星に住まう全てのモノが、ここに押し寄せよう! ワシ程に強くはないが【神器】も豊富! 思い直せ! そうすれば――」


 もはや命乞い。

 死に物狂いだな。


「無駄だよ。これを見て、分かるでしょ?」


 そう言ってジェイドはモニターを展開する。

 なんか、宮殿を突き破って、でかい樹が生えてんだけど……。根が家屋を貫きまくってら。


「【神樹ユグドラシル】、魔力を糧とし、成長する樹だよ」

「いつの間に……いや、あの時かぁ!?」

「ハレに撒いてもらった種が、ようやく芽吹いた。まぁ、僕を怒らせなければ休眠状態のままだったよ」


 ハレの『あれかぁ……』という声が小さく耳に届いたぜ。


「それに言ったでしょ? 僕の本気を見せるって。テリちゃん、ヒデオから、アレを貰って持って来て」

「こちらにありマース。ついでに、ネムシスとモミザより【聖典】を受け取りマーシタ」


 仕事早ぇなテリちゃんよ。


 それでナニが始まるかと思えば、ジェイドがテリちゃんに魔王の系譜を渡す。


 テリちゃんは、魔王の系譜を右手に、勇者の聖典を左手に、装飾の派手な短剣を咥えて……光ってんぜ?


「この短剣はね。僕の血で作ったよ。テリちゃんと同じでね。つまり【神短剣スーテリア】。これだけじゃ解らないよね。ステータス、フルオープン」


 そしてジェイドはステータスを開いた。

 

ジェイド・フューチャーLv99999

力:1(Soul Guard Breaker)魔力:1000T

【神王】『称号スキル使用時覚醒』『全属性魔法使用可』『錬金術』『全テヲ超エシ者』『核融合Lv9999』『星ノ眼』『超未来技術Lv9999』『解体神書Lv9999』『未来眼』


 は? いやなんだよそのステータス。


「こんなので驚かないでよ。本番はこれからなんだから。美紗」

「おうよ、『動季同期するハート』起動! ついでにステータスオープン!」


 マジかよ、ミサ……ジェイドのステータスと同期するってことは。


ミーシャ・ヴァーミリオンLv99999

力:1(Soul Guard Breaker)魔力:1000T

【黄昏】『勇者』『全消シ』『黄昏時覚醒』『覚醒時魔力転換』『動季同期するハート』『全属性魔法使用可』『錬金術』【神スラ屠ル者】『星ノ眼』『ハートのエース』


 美紗はベガオの前に立つ。


 ジェイドはガイの横に立つ。


 美紗は拳を構え、ジェイドは剣と化したオーマテリアをガイの首に当てる。


「じゃぁな、ベガオ。俺とみーくんに手ぇ出したこと、あの世で後悔しな。そして、ありがとよ」

「じゃぁね、ガイ。いつか、また僕と遊んでね。楽しかった。ありがとう、さようなら」


 そして、美紗はベガオの腹に大穴を開け、ジェイドはガイの首を斬り落とした。


 最高神2柱の首が掲げられる。


 全てがひれ伏した。


 ジェイドと美紗以外の、全ての者がな。



ーーーー Norinαらくがき ーーーー


次回、本当の最終回

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