50-4最高神の全力

ーーーー フーリム・D・カーマチオー ーーーー


 最高神は、不敵に笑う。


 それがどういうことなのか。


 みんな理解しているはずだった。


 覚悟しているはずだった。


 それでも、恐怖で震える。


 それ程に巨大な魔力渦が発生しているわ。


 涼しい顔をしているのは、ジェイドとミサだけよ。


 高位神だって、遠目でも分かるくらいには震えているわ。


「そういうことならば、派手に暴れさせてもらおうかのぅ? どれだけ対策を練ってあるかは知らんが、ワシの全力で、壊れる程度のことは無いということじゃな?」

「少しだけでも全力を出すのは久方ぶりか。壊れても、直さんぞ? ノース・イートの、その全てをな!」


 ベガオとガイが叫び終えると、魔力渦は鎮まり、周囲も静寂に包まれる。


 そして紡がれるは神の言葉。


「【サイバー・ドローン】起動じゃ」


 ベガオの言葉に、ジェイドとミサは顔色を変える。


 そりゃそうよね。

 だって、そんな称号スキル、知らないもの。


「ワシらとて、何もせずにおった訳ではないわ。『超』の置き土産、参考にして創り上げた……光栄に思えぇい!」


 空に現れたのは巨大な機械龍。星ノ眼みたいな機械でできた龍。

 そして、無数の戦闘機。地球で見たやつと一緒だ。

 それらは、一瞬にして人型に変形し、その姿を見せつけた後、また戦闘機に変形して、エンジンを噴かせた。


「当然、我もいる。【夏星かせいの焚子】【黙星もくせいの大石版】起動せよ……。……効果が半分しか発動しない? そうか……そういうことか」


 ……気付かれたわよ、ジェイド、ミサ。


 あれ? 声が、出ない!?


 心なしか、気温も、上がってる。暑い。


「何か分かったのか、ガイよ?」

「あぁ。コイツらは、最高神の称号スキルすら無効にするが、範囲はヒト、魔族、そして、ノース・イートの大地に連なるモノ全てだ」


 ジェイドが何かを必死に叫ぶけれど、声が聞こえない。

 急いで何かを書いている。


「本来、大火災と石化現象を引き起こすはずのスキルが、気温上昇と沈黙の二種しか効果が出ていない。つまり、空、空気、空中、宇宙に作用する全体効果は通るということだ」


 ベガオとガイは、笑った。


 でもね、ジェイドも笑ってるのよ。


 プランBへ移行する、と掲げられたホワイトボード、全員が確認したわ。


ーーーー シッシ ーーーー


 プランBとはすなわち、我が君とミサで対処が難しいゆえに、事前の指示通りに動く者は動け、という実行プランさ。


 とは言え、ボクにやることは無い。


 魔王城から、戦況を眺めることしかできない。


 もどかしいが、しょうがないことさ。


 力が無いとは、当事者であっても傍観者にしかなれないということなのだから。


 我が君は風魔法を起動する。


「無力化を風魔法に乗せた! とりあえず、これで僕の声は通るね!?」

「さすがみーくんだぜ! とりあえずベガオとガイ殴っても効果無いってのはどうする!?」

「心臓どっかにやったかもね! 直接殴って確認しよっか! どっち行く!?」

「とりあえずベガオ行ってくらぁ! 後でスイッチ!」

「りょ!」


 そして、ベガオはミサと、ガイは我が君と対峙することになった。


ーーーー フラン・ハミンゴボッチ ーーーー


 私は、ロランとママと一緒だよ。


 ゆっくり孫の顔も見せてあげられないね。


 最高神なら、ジェイド様をイジメなきゃ良いのに。


 結局、返り討ちにしてやる?


 ってことになるんだもん。


 魔王城から、ちょうどベガオとミサがぶつかり合っていた。


 ミサの攻撃を全部避けるベガオ。


 ベガオは、機械龍からいっぱいビーム出してる。

 ミサも全部避ける。

 戦闘機が、ミサに突っ込むけど、飛び箱みたいにぴょんぴょんして避ける。

 ちょっと楽しそう。

 ミサが戦闘機を1つ捕まえた。

 真ん中から瓦割りした。


 真っ逆さまに落ちる戦闘機。


 でも、落ちながら、直っていく?

 落ちる直前には元通り。


 ミサ、イライラしてる。

 相性良くなさそう。


 ジェイド様はガイとバトル。


「【怒星どせいの破】起動せよ!」

「『BB弾』起動!」


 ジェイド様の体の前に突然大岩が現れて、砕けて、ジェイド様を取り囲んで、元の大岩に戻って……ジェイド様が潰れ……パァンって弾けた。水だね! ジェイド様の錬金人形だ!


 ガイにもジェイド様のBB弾が当たる。黒い渦に、手を吸い込まれる。

 手首から先が失くなる。

 でも、すぐ生える。


「うーん、さすが最高神」

「ここまで威力を落とされるか。さすが喧嘩を売るだけはある。だが、それまでだ。対処法さえ分かれば、やりようはある。【転横星てんおうせいの強制】起動」


 あれ? 視界が、横向きになった。首が横に倒れたような視界になる。こんなの、歩けないよ?


「方向感覚の狂う世界でどこまで動けるか? 【怒星の破】起動」


 もう一度、ジェイド様の周りに岩が集まる。


 ジェイド様は避ける。でも、すぐに次が……ジェイド様は目を閉じた。


 そして、二十連撃の全てを、避けきってみせた。


 さすが、ジェイド様。


「なんでみーくん動けんの!?」

「星ノ眼で画面固定!」

「あ、なるぅ!」

「ガイ! それを使う時は一言申せ!」

「……すまん、解除しよう」


 ……なんか、殺し合いのはずなのに、ジェイド様もミサも、ベガオもガイも楽しそう。


 だって、みんな、笑顔なんだもん。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

笑顔でしかいられない!

辛い時こそスマイル!

もっとも、本当に楽しんでいるのが四名程いますがね!

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