50-3神すら圧倒する魔王

ーーーー ドラン・ハミンゴボッチ ーーーー


 チゥ様を救出したジェイド様の力が発揮されようとします。


 とんでもない魔力の渦です。


「何をしておる!? 下位神よ! 今こそ功績を挙げよ! 【高位神】の座は功績順じゃぞ!」


 ベガオの言葉に、恐れ慄いていた下位神達が動きます。


 デュオチ・バイドッグですら私達では手も足も出ませんでした。


 それが、空に万を超える程にいます。

 もはや、神の軍勢。


 震えて、死を待つしか無かったことでしょう。


 相手がジェイド様やミサでなければ。


「ざぁこはすっ込んでろ! 『ハートのエース』起動だおらぁ!」


 ミサが空を殴る度、下位神は落ちます。


 好戦的な神を優先しておるようですな。


 尻込みする神には、まだ手を出しておりません。


 警告も兼ねているのでしょう。


 100を叩き落とし、第一波が止みます。


 しかし、ベガオの一言で一変します。


「家族諸共堕ちたいかぁ!?」


 もはや神の言葉ではありませんな。


「美紗、僕もやるよ」

「良いのか? ベガオとガイ、来るんじゃね?」

「来ないよ。だって、下位の神々を、捨て駒にしようとしてるんだから」


 ジェイド様の言葉が、まるで頭に重く伸し掛かるかのように響きます。


 下位神は、迷いながらもジェイド様やミサに突撃しようと急降下します。


 ただ、誰も、届きませぬ……。


「『BB弾』発射」


 ジェイド様が、黒の爆弾と称した黒い弾を射出します。

 素手で、指を銃のような形にして、放ちます。


 放たれた黒い弾は、どこぞの下位神に当たり、黒の闇の中に吸い込まれるようにして、消えました。


 嘗て見たことがあります。


 ウェスト・ハーラの魔王、ハーゲ・マルドゥーンを星ごと葬り去った魔法と同じ……。


 ジェイド様は、全ての神が効果を見届けたことを確認し、錬金術で対空機関砲を作り出しました。


 誰も、何も言わなくても分かります。

 我々ですら、神々ですら分かります。


 それが、空に浮く全てのモノに放たれることを。


「美紗、撃ち漏らしをヨロシク!」

「まっかせろぉ!」


 そこからは、もはや虐殺でしたな。


 さすが、ジェイド様、素晴らしき魔王でございます。


ーーーー ヒデオ・ラッシュ ーーーー


 まさか、ジェイド様とまた会えると思ってなかったんだぜぃ。


 だが、感動する暇すらねぇ。


 ジェイド様が戻ってくるってこたぁ、神々とやり合うってことなんだぜぃ、べらぼぅめぇ!


 かと言って、おいらがやれることはねぇ。


 ジェイド様より授かったビームセイバーを持って、みんなを守る。


 それがおいらの役目だぜぃ。


 戦況はモニターで見える。


 一言で言えば、ジェイド様とミサ嬢の二人で圧倒してるぜぇ。


 ベガオとガイは動かず静観してんのか?


 と、誰もが思っていたに違ぇねぇ。


「なぜじゃ……なぜ【最害】が発動すらせんのじゃ!」


「【吸星の魔邪】も効かぬ。【禁星きんせいの美怨】も……ナニをした!? ジェイド・フューチャー!?」


「発動してるよ? 僕が、完封してるだけ」


 ジェイド様が言ってることを理解できる者は少そうだぜぃ。

 おいらも、何となくしか分かんねぇな。


「【最害】はを文字っただけだろ。ノース・イートの天変地異でも起こそうとしたのかよ? 俺とみーくんがいる限り無駄だぜ。発動した瞬間に潰してっからな」


 ミサ嬢が魔王の如く笑ってるぜぃ。


「【吸星の魔邪】は次元の狭間に閉じ込める系でしょ? 座標特定済だからすぐ救出できるんだよね。【禁星の美怨】は怨霊系デバフ。僕らは無効にできるし、ノース・イート魔王城の内部には、彼女がいるからね。だーれだろーねー?」


 ジェイド様も魔王の如く笑ってるぜぃ……こえぇ……だが、味方で本当に良かったぜぃ。


 そんなジェイド様の発言に文句のある奴がいたぜぃ。

 おいらの後ろで守る彼女こそが、ノース・イートの護り神だぜぃ。


「ジェイドもミサもさっさと仕留めるにゃ! 時間食って良いことなんて無いにゃ!」


 むーちゃんとギリ様の娘、ニャス・ウーラ。


 彼女の『ブバスティスの女主』こそ、魔王城防衛の切り札1、らしいぜぃ。


 耐性無視の強制服従スキルが元らしいが、全ての状態異常を無効にした上で、魔王ジェイドの命令通りに動く、という命令を自分にも掛けているってよ。


 訳分かんねぇが、これで状態異常系の神の力は働かないってことらしいぜぃ。


「それでも、最高神の称号スキルに、なぜ対抗できる?」


 テイラ・ガイの言葉が、まるで耳元で囁かれるように響くぜぃ。

 それでもジェイド様は、余裕の顔で言われた。


「スキルの名前じゃない? だって、その女主って、バステト神のことじゃん」


 ジェイド様の言葉に、ガイもベガオ無言。


 そして、試しに、といった感じで発動する。


「【最症BUG】【最処で最檎】起動……やはり無駄か。ぐふふふ」


「【満月の狂兎】起動……反応無し……か。クックックッ」


 称号スキルを起動させ、そして笑う最高神。


 嫌な予感しかしないんだぜぃ。


 おいらは、ジェイド様に追加で授かった短剣を口に咥えて、その時を待った。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

デバフ無効は戦いの基本。

最終的には地力の戦いになるんだよ!

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