37-3勝利は勇者に微笑む

ーーーー ラナ・ウェイバー ーーーー

Bravers stopwatch 101:01:10


 私がジェイド様から授かったスキル『スーパードカンドライバーズ』は、土管を生成・設置し、土管間をほぼ瞬時に移動できるの。


 距離の制限と、設置数の制限があるから、今までは食事の配給ルートとして使っていたの。

 もちろん食堂のすぐ外から謁見の間にも繋げているの。


 でも、今は非常時なの。


 上書きされるのは承知で、土管を生成・設置していくの。


「ちょっと余裕出てきたな」


 ミサの言う通り、勇者ああああから余裕を持って逃げられるようになってきたの。


「ギリだけじゃなく、ムーちゃんや……ミシェリーのおかげだよね」


 土管から顔を覗かせるジェイド様が感心するくらい、ギリくんだけじゃなく、ムーさんとミシェリー様の活躍が見て取れたの。


 ムーさんの『発情時覚醒』は、どうやら今のギリくんとステータスが同じみたいなの。

 ミシェリー様は、僅かに回復した魔力で炎を生成し、勇者ああああの視界を制限していたの。


「勇者ああああは『魔王の系譜』の位置や気配には敏感だけど、それ以外は自分の目に頼っていたんだね……じゃあ物理的にマスクを被せて視界を塞げば、今までの戦闘時間がちょっとずつ延ばせるかな? それで、クリアできそうだね。ミシェリーにはみんなよりちょっと良いお願いを聞いてあげようかな」


 もう早速ご褒美の話をしているの。


 それもそうなの。


 勇者ああああは、100時間を超え、明らかに自壊する速度も上げていたの。


 これなら、きっと大丈夫なの。


「それなら、すみませんなの。ジェイド様、お願いがあります」

「んー? 良いよ。そのお願い、聞いてあげる」


 ジェイド様は、少し悩んだ素振りを見せたけれど、聞いてくれたの。


 だから、ゴメンなの。ムーさん、ミシェリー様。


ーーーー ギリ・ウーラ ーーーー

Bravers stopwatch 109:52:38


 魔王城、天蓋の更に上に立つ。


 例え食料が尽きようが、私には関係無い。


「まだまだぁ!『【勇魔方陣】グルメライフストリーム』起動!」


 この称号スキルを使えば、望むままの食材が出てくる上に、加工食品まで出てくるからな。


 今は飴しか生成していないが。

 レシピの表示もある……後日たっぷり作ってやる!


 その『ペロペロキャンディ』なる飴を頬張り、勇者ああああと対峙する。


 もう10時間は経ったのではないか?


 いくら私が無敵とは言え、肉体的な疲労や精神的な疲労も相当に溜まった。


 しかし、勇者ああああは、身体の所々に穴が開き、両腕はすでに崩れ落ち、足も……たった今、右膝から下が崩壊した。

 後ろに倒れ、動かなくなる。


 私は構えを解く。


 もちろん、油断はしない。


 ここで油断して死ぬ勇者も、魔王も、その手下も、散々見てきた。


「僕も、最後を見届けよう」


 右腕のないジェイド様も、ミサに降ろされて、立つ。


 そこに、勇者ああああが反応し、顔を上げた。


 しかし、それだけ。


 ただ、3人の勇者を貼り合わせた歪な顔は、笑っていた。


 不気味な笑いではない。

 清々しいまでの、笑顔だった。


「イースト・キーンの勇者に告ぐ。ここまで、よく戦った。敬意を表し、1つ、事実を伝えよう」


 ジェイド様は、左手を自身の胸に当てながら、勇者ああああに伝える。


「見ての通り、そして理解している通り、サウス・マータでも、ノース・イートでも、君達が殺した人間・魔族は1人もいない。守れたよ、君達の信念を」


「アリが……トゥ」


 ジェイド様の言葉に、一言の言葉を返す。


 そして、勇者ああああは再び天を見た。


 その目いっぱいに涙を溜めながらも、決して零さず、笑顔のままで、その身体、顔を崩壊させていった。


 完全に消えた。


 そして、ジェイド様は振り返り、私に微笑む。


 いや、私だけにではない。


 全ての……ノース・イートとサウス・マータを生きた者に微笑む。


「間違いなく! 世界は救われた! それはひとえに、全ての人類・魔族の勇気があってこそだ! 誇れ! 人類、そして魔族よ! 皆が勇者だ! そして、勇者の勝利だ! 備えろ! 宴に! そして、盃に、魂を、捧げるぞぉおおお!」


 ジェイド様が叫ぶと同時、世界が震えるかのような歓声が沸き起こる。


 これには、さすがの私も胸が高鳴る。


 いや、そんなことを思っている場合ではない。


「宴と言えば、料理。料理と言えば、このギリ・ウーラ! 『食』の勇者になってしまったからな! 仕方ない。本気で、貴様らに、腹いっぱいの、料理を振るってやろう! ラナ!」

「うん。頑張るの、ギリくん!」


 ふはははは!


 褒美? そんなものは後で良い!


 さぁてどんな料理を……くくっ、笑いが止まらんなぁ!


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

最後は、他力本願で勝利を納めたジェイドくん。


Norin:ご感想は?

ジェ:ホントに今回はダメかと思ったよ?

Norin:次の質問ですが……おや? なぜギリから

   オーマテリアを?

ジェ:諸悪の根源はお前だぁぁあ!

No/rin:アーッ!!


四界統一編フィナーレまでもう少し!

もうちょっとだけ、続くんじゃ!

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