37-2勇者ああああ VS 伝説の■◆

ーーーー ○あああ ーーーー


 何が君の幸せで、何をして喜ぶ。

 分からないまま、終わるんだ。

 そんなのは、嫌だと。

 拒絶は、もう手遅れだった。


 忘れるな、勇者よ。

 恐れるな、死を。


 だから勇者よ逝くのだ、何度でも。


 そうだ、恐れるな。

 生きよう共に。


 希望と勇気だけが、勇者を導く。


 あああ……僕アンドリュー、ジョー、カリー、メロー、そして、勇ましき君よ。


 逝け、僕らを止め、護るた――ああああ。


『あ』『あ』『あ』『あ』時、超覚醒、起動。


『A Punch』試撃成功。エラー解消済。獲得。常時起動。


 完了。


ーーーー ギリ・ウーラ ーーーー

Bravers stopwatch 99:46:31


 胸を貫かれたにも関わらず、力がみなぎる。


 代わりに声が出ぬ。

 どういうことだ?


 ……あぁ、餅を食っていたな……。


 それにしても咀嚼する程に力が湧く。


 咀嚼時に何かあるのか?


 そう思っていたら、ステータスが勝手に開かれた。


 勇者ああああの仕業だな。


ギリ・ウーラLv1001

力:20000(×100×6) 魔力:80000(×10×10)

『魔王四天王』『魔王の忠臣』『伝説の勇者』『食』『大魔導師』『全属性最大強化』『食事中勇者覚醒&無敵化』『声援時超覚醒』『【勇魔方陣】グルメライフストリーム』


 ほほぅ、???が全て消えたな。


 そうか、食事中のみ勇者になれるのか。

 しかも無敵化とは……。

 だから私は死んでいないのか。


 とりあえず、私に腕を突っ込んだまま動けなくなっていた勇者ああああの腕を抜いてやり、そのまま真上に殴って打ち上げる。


 私のステータスを見ていたジェイド様は、腕で涙を拭い、眩いばかりの笑顔となっていた。


 ミシェリーを見習え。

 開いた口が塞がっていないままでいろ。


 ジェイド様が口を開こうとしたが、私が先んじる。


「私の願いは、私の個室に、ジェイド様が思う最高の家庭用キッチンを敷設していただくことです。宜しいですね?」


 ジェイド様は、用意していた言葉を口に出せず、パクパクと口を動かすだけだった。


「うん! もちろん!」


 子供みたいな邪気のない笑顔を向けてくるな。


「しかしながら、魔力がほぼ有りませんゆえ、ヒデオにやったように私にも武器を何かいただければと思います」


 さすがに素手でやり合う訳にはいかんだろうからな。


「じゃあ、これをあげる。ちょっと待ってね。あ、その前に胸の穴も塞いどくね」


 そう言って、私の胸に開いた大穴を治療するなり、ジェイド様は自身の右腕を肩から切り落とす。


「は? いや、ジェイド様、ナニを?」


 パニックになる。

 こんなもの見せられたら誰でもなるだろう?


「『超』魔王の利き腕、その右腕を、『錬金術』の贄として差し出し、武器を作る。さぁ、何ができるかな?」


 いや、何ができるかな、ではないのだが……。


 しかし、何てモノが作られたのだ……。


 ステータス表示のある武器等、初めて見たぞ。


『【神剣しんけん】オーマテリア』


 勇者には聖剣くらいが丁度良いと思っていたが……うむ、考えるのは後だ。


 もう勇者ああああが落ちてくる。


「ギリ! あとは、任せるよ!」


 ふんっ、魔王など、玉座で踏ん反り返っていれば良い。

 

「僕だけじゃない。世界中の人々が、もちろん魔族も、ギリを応援してるからね!」


 そう言って、ジェイド様は、世界各地を映すモニターを展開する。


 割れんばかりの拍手と歓声が、ゴチャゴチャになって聞こえてくる。


 その全てが、全てが私の名を呼んでいる?


 そんな馬鹿な。


 私が何をした?


 世界各地を回って、珍味を貰う代わりに料理を振る舞っただけではないか。


 対価を払ったに過ぎん。


 それなのに……ふんっ、人類とは、愚かな者よ。


「全てが終わったら、また料理を作りに行ってやる! 覚悟して、腹を空かせて待っていろ!」


 私は、勇者ああああが落ちると同時に、神剣オーマテリアを振り上げた。


ーーーー 夕暮 美紗 ーーーー

Bravers stopwatch 99:50:57


 勇者ああああにぶっ飛ばされて、みーくんがミシェリーに突き飛ばされて、ミシェリーもギリに突き飛ばされて、ヤラれたと思ったわな。


「ははっ、マジかよ。『伝説の勇者』って。魔王の四天王が? 魔族が?」


 やべ。だんだんテンション上がってきた。


「うおおお! ギリ! がんばれぇギリ!」


 隣に戻ったが、みーくんのテンションが超ヤベェよ。

 こんなに目をキラッキラにさせてるみーくん見るの、この異世界来てから初めてじゃね?


 まぁ、何はともあれだ。


「これで足りねぇあと1つが足りたってことだな。みーくん、良かったな」


 俺はみーくんの左腕を掴んで支える。

 いきなり右腕を錬金しやがって……気持ちは分からないでもないけどな。


 だが、みーくんは急にスンッとなる。


「いや、これで五分五分だね。だって勇者ああああのステータス見てよ」


 嫌な予感しかしないが、みーくんに言われるまま、ステータス・フルオープン中の勇者ああああを見る。


ああああ Lv1001×3

力:1000000(×3×4)  魔力:1000000(×3×4)

『封』『勇者X3』『アンドリュー・パンマーチ(右)』『ジョー・クッパアマン(央)』『カリー・パンクエアー(左)』『メロー・アンナ姫の心(繋)』『暴走覚醒』『攻撃の無力化』『全魔法・状態異常無効化』『魔王の系譜ブレイカー』『コノ命尽キルマデ』『闘ウコトヲヤメナイ』『スてーたス・フるおーぷン』『全テヲ砕クモノ』

感情ステータス:『あ』『あ』『あ』『あ』時、超覚醒、起動。『A Punch』


 もうバグってんじゃねぇかコイツ。


「ね? だから、五分五分。それに……ミーシャにはまだ仕事してもらわないと。ぃよっと」


 おっ? どーした? でへへ。みーくんからお姫様抱っこさせてくれるなんて、普段なら女の子扱いしないで、って全力拒否しやがるのに……。


 俺は冷静に考えた。


 ある結論が頭をよぎる。


 それと同時、勇者ああああは、ギリを弾き飛ばし、コッチ来たァアアア!


「さぁて、あとはリアル鬼ごっこだ。美紗、僕が殺されないよう、頑張って逃げてね!」


 ……任せな。


「みーくんは、この手で絶対に守ってみせらぁ!」


 今度こそ、絶対に、みーくんを守ってやるからな。


ーーーー ミシェリー・ヒート ーーーー

Bravers stopwatch 99:58:15


 やっと頭が追い付いて来た。


 ギリが、なぜか『伝説の勇者』になっとんねんな。


 まぁ、そらエエわ。


「生きてた。ギリ。生きてる。良かった。本当に……良かった」


 思わず口に出しとったし、涙も止まらんかった。


 動きは速過ぎて全然見えへんけどな。

 腕とか武器とかどう動いとんねん。


 かと思えば、勇者ああああがギリを弾き飛ばしてジェイド様に一直線や。


 ギリが、剣を鞭に変形させて勇者ああああの首に引っ掛けたおかげで、ミサがジェイド様を抱っこして逃走を開始する。


 はら? ギリが目の前に?

 いきなしおんぶされた。

 って、速いわぁ! ぶつか、壁ぇ!? 急停止ヴォぇえ! 腹に力入れとかんと内臓グッチャやん!


「ミシェリーよ。ジェイド様が無事で嬉しいのは分かるが、泣くのは後だ。手伝え。モグモグ……。戦闘に集中したい。作戦立案及び指示を頼む。モグモグ……」


 だーれに泣かされた思ぅとんのやぁ?

 思わず首に回した手をキュッとしてまう。


「すまん、ミシェリー。無敵化ゆえに力が入るのはダメージ的に問題無いのだが、飲み込めん」


 ……後で、許さん、絶対に、覚悟しとれや……ウチも、たったの今や……覚悟決めたったからな。


「ナニをモッチャモッチャしとるか知らへんけど、『食事中』に拘るんならアメちゃん舐めとらええんちゃうん?」

「確かに! 飴は……ある! これでわざわざ咀嚼しなくても戦える! 勇者ああああよ、覚悟するが良い! ふはははは!」


 これが『伝説の勇者』か……。

 伝説の威厳、あるんかいな?


 ミサに追い付きそうな勇者ああああに追い付き、武器を鎌に変えて、その身体に引っ掛ける。

 なんちゅー武器や……。

 まさか自在に変形するんか。

 勇者ああああはすぐさま振り返り、パンチを繰り出す。


 ジェイド様の核魔法すら消したパンチをギリは左腕一本で軽く受け止め、武器を長刀に変形させて叩くように振り落とす。


 衝撃波だけで、ウチ死にそうなんやけど。


「ミサ! ジェイド様! こちらへなの!」


 前方でラナが土管? から手を差し伸べていた。

 なんでそんなところに土管があるんや?


 ミサとジェイド様がラナの手を取り、土管の中に入り込む。

 間髪を入れずに、勇者ああああもギリの攻撃を避けて入り込もうとする。


「お前はお呼びじゃないぴょん!」


 土管から魔王ムーが飛び出し、両足で勇者ああああを蹴り出した。


 そのまま、魔王ムーはギリの横に立つ。


「ふふっ、ワタシの目に狂いは無かったぴょん。『発情時超覚醒』起動ぴょん。ギリ様、これが終わったら、ワタシとラヴラヴするぴょん」


 は?


「は? 魔王ムー、何を言って……」

「ナニ勝手なことゆーとんのや! ウチがさ……」

「……ミシェリーよ?」


 ……せ、セーフ……。

 顔も耳も赤いけれど、ギリには見えていないわよね、位置的に。


「そのような勝手、許されるはずがないでしょう! もっとも、その判断を下すのはジェイド様です!」

「え? 私の意思は?」

「それもそうぴょんね! ふふふ、じゃあまずは、勇者ああああを片付けるぴょんよ!」

「私の意思は……」


 ごめんな、ギリ。

 そして申し訳ありませんジェイド様。


 私も本気で……事に当たらせていただきます!




ーーーー Norinαらくがき ーーーー

バケモノ勢揃い!

1200万の数値がどれだけ異常か……。

インフレの成れの果てですね!


魔王に魔改造された勇者 VS 伝説の勇者


勇者ああああ

『A Punch』:最強のパンチ

      絶対に間に『ン』を入れないように。


神剣オーマテリア:所持者の思うままの武器に即変型。

オーパーツ&マテリアル(オリジナル)


勇者ああああの超覚醒は時間経過と共に必ず現れます。

ゆえに、並行世界のヤラれたジェイドくんは、どこに逃げていても狩られていた訳でございます。


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