37-1伝説の■◆~伝説を為した者

ーーーー ギリ・ウーラ ーーーー


 認めん。

 絶対に、認めんぞ。


 何か違和感があると思ってステータスを見てみれば、とんでもない称号スキルが付与されていた。


 確かに、頭によく分からん声が響いていた。


 魔王討伐の強い意志があるとか……これは確かにある。次期魔王は私だからな。


 人類の希望であるとか……意味不明だ。


 魔王を3体の討伐もしくは屈服させるとか……そんなこと……あったか?


 全ての条件を史上初めて達成したからどうのこうのと……何が『■◆の聖典』だ忌々しい。


 他にもいくつか称号スキルがあり、その内容が内容だけに、ほんのちょっぴり気になってしまったので、こうして調理場にいるのだが、何のスキルも何の効果も発動せん。


「ギリくん、そろそろ避難、しない?」


 料理長に、何度目か分からぬ避難を勧められる。


「何度も言わせるな、ラナよ。ここでこうして料理を作ることが、ジェイド様含め、全ての何かに役立つはずなのだ」


 自分でも何を言っているのか訳が分からなくなるセリフだがな。


 条件がまるで不明。

 

 『食』であることは理解している。


 私と言えば、料理だからな。


 だからこうして『??中■◆覚醒&??化』と『??時超覚醒』の解明を急いでいるのだ。


 それをミシェリーのヤツめ……。


 魔力0の役立たずはさっさと戦場から離れろだと?


 確かに、今の私に魔力は皆無。

 多少の魔力は戻ったが、勇者ああああの前ではゼロに等しいだろう。


 しかしだ。


 魔王四天王たる者、ギリギリまで魔王城にて留まることも必要であろう。


 他の魔族の避難が優先ではあるがな。


 魔王城に四天王不在はマズイだろう?


 そう思い、私はここに残ると言ったのだ。


 それをプンスカプンスカしながら私を散々に罵り、挙げ句の果てには好きにしろと言うのだ。


 だから、好きにさせてもらっている。


 もっとも、この行為は危険が伴う。

 いつ巻き添えを食うか分かったものではない。


「ラナ、そしてムーよ……いい加減避難すべきだ。私もさすがにそろそろ避難せねばと思っている」


 事実、しばらく前から戦場が地上へと移行したのか、外がとてつもなくうるさい。


 障壁のおかげで声くらいは通るがな。


「ギリぃ! まだここにおんねんな! さっさと避難しろゆーたやろがぁ!」


 は? なぜミシェリーがここにいる?


「ちょうど避難しようと話をして……」


「だったらはよせぇやぁ!」


 どうしたミシェリー、顔が真っ赤だぞ?


「落ち着けミシェリー。ラナもムーも何か言え……ん?」


 外の音が止んだ。


 と、同時に爆発音が一発。


 さらに、シェルターが、調理場に現れる。


「……あかん、ジェイド様!」


 しかし、ミシェリーはシェルターから離れるどころか、調理場を飛び出して行った。


「なんなのだ……」


 呆気に取られたのも束の間。


「ギリくん、行ってなの」


 ラナに背中を押される。


「これは行った方が良いぴょんね」


 厶ーにまでよく分からんことを言われる。


「女の勘なの」

「女の勘だぴょん」


 まるで意味が分からんが、私は走り出すことにした。


 その時、ラナから投げ渡される。


「ギリくん! それ、食べながらなの! 全然、ご飯食べてないからなの!」


 私が受け取ったのはモチモチの餅。


 私が下拵えして、ムーが突いたモノだ。


 私は餅を頬張り、ミシェリーを追い掛けた。


 うむ、餅はダメだな。

 噛み切れんし、下手に飲み込もうとすると喉に詰まりそうだ。


ーーーー ミシェリー・ヒート ーーーー


 ギリのアホ!


 なんなん? ギリ、ホンマなんなん?


 はよ避難せぇゆーたのはウチやけど、この状況で避難は有り得へんやろ。


 どう考えても、ジェイド様の危機や。


 別にジェイド様が死んだところで、ウチらがどうこうなる訳やない。


 混乱の極みに陥るやろうけど、魔王軍に対しては立て直す自信さえある。


 でもな、ジェイド様が魔王になって、なんだかんだみんな楽しいやろ?


 ウチも、魔王軍におってこんなに楽しくて、明日が待ち遠しいんは初めてなんや。


 ウチが人見知りやて知らへんやろ?


 ジェイド様が、そうさせてくれとんのや。


 余計な仕事をウチに与えず、総司令室でのんびり仕事させてくれたり、休みには部屋で籠らせてくれたり、スイーツの匂いで釣ってもろぅて食堂でみんなと自然にお喋りしたりな!


 一昔前のウチじゃ考えられへん。


 しかも有能なジェイド様や。


「絶対に、最初に、死なせてたまるものですか!」


 決戦場所は、謁見の間。


 ジェイド様が核魔法を起動するも、勇者ああああのパンチ1つで消し飛ばされる。


 間に合え。


 シェルターが割られる。


 ミサが払い除けられる。


 ナイスや、ミサ。


 だからウチは、ジェイド様を突き飛ばせた。


 あんたの旦那、ギリがおらんかったら……ウチも……。


 でもな、なんで、ウチを突き飛ばすん?


「ギリ? ぇ、あ……」


 そこには、勇者ああああの手に貫かれたギリがおった。


ーーーー ギリ・ウーラ ーーーー

Bravers stopwatch 99:45:31


 咄嗟に、体が動いていた。


 ミシェリーが何をしようとしているか、追いながら理解した。


 それはそうだ。


 魔王四天王たる者、魔王様より後に死んでどうする?


 他の魔王は別に構わんのだがな。


 私? 私は例外だ。


 いずれ魔王になる者だからな。


 しかし、ミシェリーだけではなく、ドラン……フランやノウンは、ジェイド様に相当入れ込んでいる。


 事実、よく笑うようになった。


 笑顔の絶えない魔王城というのはいかがなものかと思う時期もあったが、結果として、全て良い方向に進んでいたから良しとした。


 私も、なんだかんだ、楽しかったのかもしれない。


 だから、ジェイド様には死んでいただきたくないと、ミシェリーが思うに至ったと気付けたのだろう。


 だから、そんなミシェリーを先に死なせる訳にはいかないと思ってしまったのだろう。


 だから、ミシェリーを突き飛ばした私は、笑顔でいるのかもしれない。


 愚かな行為だ。


 私のやったことは。


 そうだろう?


 ミシェリー、そんな泣き顔をするな。


 そして、ジェイド・フューチャー……。


 ミシェリーよりもひどい泣き顔をするな。


 魔王だろう?


 …………。


 こうなった以上、仕方あるまい。


 受け入れてやる。


 その称号をな!



ーーーー ■◆の聖典 ーーーー



 再認証、許可シマス。



 本人ノ受諾、確認。



 ギリ・ウーラLv1001へ。



 称号、仮ヨリ、正式付与へ。



 伝説ノ条件1、魔王討伐ノ強キ意思。クリア。

 


 伝説ノ条件2、人類ノ希望。人望有リ。クリア。



 伝説ノ条件3、魔王3体ノ討伐or屈服。


 魔王、アム・ノイジア、討伐。


 魔王、マザー・ムーンサイド、屈服。


 魔王、オメガノ・サークル、討伐。



 クリア。



 コレヨリ、称号ヲ、付与シマス。





 オメデトウ。






の聖典』ハ、祝福シマス。





 ギリ・ウーラ、『伝説の』ノ称号、付与、完了シマシタ。













ーーーー Norinαらくがき ーーーー

魔王のぉ!

四天王なのにぃ!

伝説の勇者にぃ!

仕立て上げましたぁん!


〘魔王になれないなら

勇者にしてやれば良いじゃない〙

     〜ノリーン・アルファネット〜


この構想を思い付いたのは、ウェスト・ハーラ戦を書いている時でした。

四界統一編の後半プロットを大幅に変更してやりました。


というか、

変更する前からずっと勇者ムーブしてましたからねギリ君。

気付かなくてゴメンね!


ギリ:魔王になりたかっただけなのにぃ!

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