35-6Dragon's Scream~ノース・イート撤退戦

ーーーー ○□?あ ーーーー


 どういうこった?


 突然、メロー姫の声が消えた。


 おいら達は、いつも一緒のはずたろ?


 アンドリュー、ジョー、おいら達で、タナシンのヤロウを倒すって誓ったもんな。


 そのために、見知らぬ地で、見知らぬ人間と戦って……人間と? 戦う?


 なんでだ?


 おいら達は、タナシンの……魔王を……倒すって……倒され――。


 ああああ。


ーーーー ドラン・ハミンゴボッチ ーーーー

Bravers stopwatch 70:04:58


 見事。


 その一言に尽きますな。


 ヒデオを先頭に、ノウンと連携してサウス・マータに押し戻しました。

 勇者ああああを締め出して、勇者アイの氷魔法で蓋をします。


 それを幾度も繰り返し、最後は氷を作る魔力さえも無くなり、ノウンとヒデオが直接闘って倒されました。


 命に別状は無いようです。


 戦意を失った者に興味が無いのか、トドメを刺す時間さえも惜しいのか。


 後者に見えるのは、きっと私だけでは無いはず。


「『称号喰らい』『ディスアペアリング・ロンリネス』起動」


 走り始めた勇者ああああに、特大のブレスを降らせます。

 それしきで止まる勇者ではありませんが、地形が変われば話は別でございましょう。


「ふぁれ? パパ、おはよ。もうフラン、出番?」

「ようやっと起きたわ! この眠り姫め、寝顔が可愛過ぎるのがダメじゃのぅ!」


 気持ちは分かりますが、フラン、サラン、早くやりますよ?


 と、口に出さずにニッコリします。


「パ、パパジェイド様みたいな顔、やだー!」

「ドラン、それはやめるのじゃ。分かったから、やめるのじゃ」


 効果は抜群でしたな。


 フランは私の空けた大穴に粘土の高い酸を落とします。


 勇者ああああは溶けません。しかし、行動の制限はされるようですな。


 この調子で粘りましょうぞ。


ーーーー フラン・ハミンゴボッチ ーーーー

Bravers stopwatch 77:44:31


 うーん……これマズいかも?


 もっと足止めしなくちゃいけないのに、もう半分も来ちゃった。

 ドロドロの地面でも、勇者ああああはひたすらに走る。


「ドラン、このペースだと予定より5時間早く着いてしまうぞぇ?」


「ジェイド様は移動時間が削られると言っておられましたが……なんとかもう少し……」


 パパとママが相談中。


 でも、勇者ああああは爆進する。


 深い谷と山を作っても、ただ真っ直ぐに、突き抜ける。


 なんか、ちょっとだけカッコいいよね?


 でも、ジェイド様の敵は止めるよ。


 本当は殺したいけど、それは無理って、私でも分かったもん。


 パパとママが向き合って頷いた。

 何か作戦、できたのかな?


「フラン、辛いですが、やれますか?」


 私は内容を聞く前に頷いた。

 やるもん。それが、私の想いだから。


 だから、ありったけの愛を込めて叫ぶの。


「ジェイドさま! だーいすきぃ!!!!」


 私の口から放たれるのは、腐乱のブレス。


 勇者ああああは、ほんのちょっとだけ足を止めるだけ。


 雨にも負けず、嵐にも負けず、腐乱にも負けず、真っ直ぐに、突き進む。


 止められないって、知ってるよ。


 でも、私は少しでも止めるんだ。


 大好きで、愛してる、魔王ジェイド様の、のために。


ーーーー サラン・ハミンゴボッチ ーーーー

Bravers stopwatch 81:54:10


 勇者ああああの進軍は、全く以て止めることは叶わんかったのじゃ。


 何もしなければ、ゲートから魔王城まで1時間程度とは聞いておった。


 12時間かけて魔王城までやって来させた。


 それだけを聞けば戦果ではあるのじゃ。


 でも、本来ここで20時間掛けさせるはずじゃった。


 あと20時間程度……20時間程度を魔王城内で?


 無理じゃろう。


 だから、ドランも、フランも、出ぬ声を出して……枯れ切って血を吹きながらも、ドラゴンブレスを放ち続ける。


 妾の魔力はとっくに枯れたのじゃ。


 もう、回復魔法は使えぬ。


 妾にできることは、もう無い。


 この身を投げ出したところで、秒すら止められぬであろう。


 しかし、妾もドランもフランも、それは出来ぬ。

 やりたくても、出来ぬ。


 ジェイド様の命令は、生き抜く事じゃから。


 だから、勇者ああああには近付かぬし、近付けぬ。


 もう、遠くに魔王城が薄っすらと見えてきた。


 情けなさと、皆への申し訳無さで、涙が溢れそうになる。


 泣いたって、どうにもならぬことは分かっておる。


 その時、星ノ眼から声がした。


『サランさん! サランさんは、無事ですか!?』


 この声、勇者ルナかの?


「無事は無事じゃが、飛行する魔力くらいしか残っておらぬぞぇ」


『肉体的ダメージが無いなら、それで十分です! 一足先に、魔王城前まで戻ってください! 至急です!』


 妾は、ドランとフランを見る。

 

 二人して、妾に背を向けたまま、拳を突き出し、親指を立てる。


 妙なところで親子そっくりにならんでも……。


 ふふっ。


 じゃが、ここは任せたぜのじゃ!


 妾は魔王城の前へと急いで戻った。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

勇者ああああの言葉。

素っ頓狂に聴こえておりますか?

そう聴こえていれば正解です。


洗脳されているの?

違います。


生きたまま、ベリベリと剥がされ、くっつけられたのです。


まぁ正常な思考なんて出来ないでしょう。


ちなみにタイトルは、

ノース・イートの中心でドラゴンが叫ぶ

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