35-4South Gate Guardian~ゲート前、防衛戦

ーーーー ○□?♡ ーーーー


 おいらは走る。どこまでも。


 左足しか感触がないのに、目にも止まらぬ速さで景色が流れる。


 遠い場所にある『魔王の系譜』を早く破壊しなくちゃいけねぇのに。


 遠い。


 だから走る。


 感覚で分かるんだよ。


 絶対に間に合うって。


 約束だもんな。メロー姫との。


 魔王を倒して、みんなでパーティーするんだからな。


ーーーー ロドラ・コンクエスト ーーーー

Bravers stopwatch 28:47:34


 サウス・マータのゲート前ゾ。


 ゲートそのものはアーオ・チルンジャー城の中ゆえ、城の外に陣を張るゾ。


 ワレ、アイ、ショーコだけでなく、ミーシャ、閣下、ポンまでいるゾ。


「ポンはここにいて良いゾ?」


 魔王ジェイドから色々と指示されていたみたいだが。


「ぁあ? 俺っちもここで『龍の城』張ってろとよ。勇者ああああを止める手段が多いに越したことはないっしょ」

「メイド2人もゲットすれば、それくらい気合いは入るもんゾな」

「ちょ、ロドラ、なんでソイツを……」


 星ノ眼とやらで中継していたからに決まっているゾ。


 ワレ含め、冷たい視線が一斉にポンへ向かう。

 だが、それは一瞬だけゾ。


「これだけ活躍して、しっかりアピールできれば誰も文句は無いゾ。あとは、死なずに乗り切る。それだけゾ」


 ポンも、おちゃらけた感じではなく、真面目に頷くゾ。


 見て分かった。

 閣下やミーシャ、ポンは肌で感じただろうゾ。


 対峙して、生きているだけ、儲けモノ。

 それ程までに、凶悪な……勇者?


 勇者が世界に牙を剥く。


 本来はあってはならぬことゾ。


 せめて、ワレらの手で、止めてやりたいものゾ。


「ッ!? そろそろ来るぜぇ! 全員構えろ! ここからは、サウス・マータの勇者全員で食い止めるぜぇ!」


 ミーシャの男顔負けのドスの利いた声が響く。


 そう言えば、初めてゾ?


 サウス・マータの勇者全員で、揃って戦うのは?


 少しだけ、やれる気がしてきたゾ!


ーーーー ショーコ・ライトニング ーーーー

Bravers stopwatch 29:06:36


 本当は、もう出番は無いはずだったの。


 でも、ジェイド様が言ってくれた。


「せっかくだ。サウス・マータの勇者、全員で戦っておいで。光速移動の残り時間は全部消費して良いよ。もちろん、無茶はしちゃダメ。分かった?」 


 髪を撫で、頬に優しく触れながら微笑まれたら……そうね。ハッキリ言っておくわ。

 もう魔王ジェイドの手に堕ちたの、私。

 堕ちるわよね? 堕ちない訳がないわよね?

 だって可愛い上にカッコ良いの。

 ミーシャが心酔するのも納得よ。


 女心が分かっている訳では無いの。


 ただ、尊重してくれる。

 私の、大事な部分だけを丁寧に、優しく扱ってくれる。

 魔王ジェイドの人心掌握術。感服ね。


 ミーシャも、アイも、閣下ですら……実はポンやロドラも、魔王ジェイドのために、こうして戦うくらいだもの。


「ポン! あと『龍の城』何回だってぇ!?」

「あと10回!」

「じゃあソイツは温存してろ! ロドラ! アイ! そのまま切り上げ続けてろ!」

「んな無茶ゾォ!?」

「じゃ、あたいに合わせな! 水魔法寄越せ! からのぉ! 『永久なる暴風雪』起動!」


 ミーシャは地面に両手を当てたまま動かない。

 そこにロドラが剣を振り上げつつも水魔法を垂れ流して勇者ああああに浴びせる。

 アイの称号スキルで、水を凍らせて動きを完全に止めた。


「ぬぉらぁ! いけ! ネイ爺さん!」

「任せるのである! ぬぅん!」


 ミーシャが錬金術で大地に大穴を開け、閣下が叩き落とす。


「全員、水魔法、連続起動だぁ! ショーコ姉!」


 私は水魔法を大穴に流し込みつつ、飛び上がる勇者ああああを穴に剣で突いて落とす。


 私と閣下で、勇者ああああを突き落とす行為を繰り返す。


 勇者ああああは飛べない。跳躍するためには、大穴の底を蹴らなくてはならない。

 でも、底には水が溜まる。


 水に足を取られて跳躍力の落ちた勇者ああああなら、私だけじゃなくて閣下も対応できる。


 その内、水嵩が増して、勇者ああああは泳ぐように這い上がることしか出来なくなる。


「チャンスね。このままここで足止め出来れば……」


「ショーコ姉! 楽観視すんなよ!? それでもコイツは魔王の手に罹った勇者だ! やることは全部、やるんだよぉ! なぁアイ!」

「おぅよミーシャ! まっかせなぁ! もっぱつ! 『永久なる暴風雪』起動!」


 大穴に溜まった水は、アイの称号スキルによって、完全に凍結したわ。

 もちろん、勇者ああああは氷の中。


 ミーシャの言う通り、私達は誰も油断しない。


 今の内に、携帯食料と水を頬張る。


 ピキピキ、バキバキと、段々氷が割られる音が聞こえてきたわ。


「まだ10分も経っていないゾ……」


「何言ってんのロドラ? 勇者ああああはその内対応してくるから、もうこんなに休ませてくれねぇよ。だが、5分割るまでこの戦法で行くぜ。そっからは、何か考える」


「今は何の案も無いって言えってーの、ミーシャ……」

「は? じゃあどうしろって? ミーシャ、ハッキリしろっしょ」


「そうなった時に、やることは1つ! 根性、あるのぉみ!」


 開き直ったわね。

 私も閣下もヤレヤレのポーズ。


 それでも、笑顔は耐えない。


 何とかなる。


 そうじゃないのよね。


 何とかするのよね。


 だって、それが勇者だもの。


 私達、サウス・マータの勇者だもの。



ーーーー ロドラ・コンクエスト ーーーー

Bravers stopwatch 32:27:48


 なんゾ、この勇者ああああは?


 周囲を凍り付かせても、もはや1分で割られるゾ。


 ワレやミーシャで打ち上げるも、閣下やポンの防御で攻撃を止めねば、打ち上げることすらままならぬゾ。


 こんなものを相手に四天王ノウンがあれだけの時間を?


 見て理解したつもりだったゾ。


 しかし、実際に対峙すると全然違う。


 まるで、戦いの中で、さらに強くなっている感じがするゾ。


「ロドラァ! 足も腕も止めんなぁ! 今がふんばり時だろ! 勇者ああああは体力が落ちねぇ! 俺達の体力が落ちる分、戦況は段々不利になる! だから、1秒でも長く、押し留めんだよぉぅおらぁ!」


 ミーシャがハートのエースでひたすらに殴る。

 ダメージは無い。

 僅かに押され、足の動きが鈍るだけゾ。


 閣下とアイで、勇者ああああを止める。そこで、ワレがもう一度かち上げるゾ。


 ただ、3時間ぶっ続けゾ。


 力が、ほんの少しだけ入り切らなかった。


 100%が、90%になっただけゾ。


 それなのに――。


 勇者ああああは、翻って、すぐに地面に降り立つ。


 閣下が止めに入るも、最小限の動きで振り払われ、真っ直ぐ、ワレに……殴り掛かられた。


 そして、遥か彼方へ、ぶっ飛ばされたゾ。


 空の色が黒になるくらい空を飛び、背中から落ちたゾ。


 ここは、森の中。


「――勇者じゃなかったら死んでいたゾ……」


 身体を起こそうとするゾ。

 でも、力が入らないゾ。


「ワレの役目も、ここまでゾ」


 やるだけはやったゾ。

 これ以上、ヤレと言われても無理ゾ。


 これで、守れなくても、しょうがないゾ。


 守れなくても、所詮は、ノース・イートのことゾ。


 本当に?


「……ワレ……いつから、こんな――」


 勇者として、あるまじき思考。

 いや、勇者としてでは無い。

 ヒトとして、さもしい奴ゾ。


 一般人ならともかく、ワレは勇者ゾ。


 何とかできる力を持つ勇者ゾ。


「……こんなところで、終われるかゾ。ジェイドよ、いるゾ?」


 ワレの呼び掛けに、丸っこい機械が反応したゾ。


『僕のために、そこまで無理する必要はないと思うよ? 十分にやってくれたと、僕は最大の評価をしよう』


 星ノ眼とか言うやつゾ。

 そして、ジェイドの言う通りゾ。


「それでも、護るべきモノがいるのは、ワレもジェイドも一緒だゾ」


 ふと、二人の姫の顔が思い浮かんだのは、一生の秘密ゾ。


『……用件は?』


 ジェイドの声色が変わったゾ。いつになく、真面目……いや、本気の声ゾ。


「どれくらい、離されたゾ?」

『20km以上離れてるね』

「じゃあ、大丈夫ゾ」


 ワレは、なぜ自分の行いが虚しく、さもしく感じるのか、その答えを知っているゾ。


 まだ、ワレは、全力じゃないからゾ。


「ジェイド・フューチャー! 失敗したら、後は頼むゾ! 少なくとも、この距離では味方にデバフは掛からんゾ!」


『ふふっ、任せて。そして、ありがとう、ロドラ』

 

 魔王に礼を言われる勇者など、ワレが初めてかもしれないゾ。


 だが、やる。


 ワレの全力。『運』を全て注ぎ込んだその力――。


「今こそ役に立つゾ! いい加減起動しろゾ!『運帥』起動! ……起動したゾ!? 『100面ダイスロール』行くゾ! 『アブラカタブラ』も、全部起動するゾオォオ!」


 ココより先、ワレに記憶は無いゾ。


 ぼんやりと、夢の中にいるような感覚で、勇者ああああと――。


ーーーー アイ・スクリーム ーーーー

Bravers stopwatch 39:56:39


 くぁー!


 あたいら、頑張った!


 もう……もう良いよな?


 もう限界。眠気が、特に、キツイんだぜ!


「頑張れよぉ! アイ、もうちょっと頑張ったら、みーくんと『おはようからオヤスミまで3泊4日のノース・イートorサウス・マータ選択制リゾートツアー』だぞォ! あと3分!」


 くっ、頑張りたい。

 ジェイドとイチャラブハネムーンのためなら頑張りたい。

 でもマジで限界だっつーの。


「ふふ、ふふふっ。ねぇジェイド様、私との子供、名前は何にしましょうか? 可愛い女のコみたいです。ふふ、天使みたいな名前が良いので、セラフ、なんていうのはどう? フフッ」


 ショーコなんて目を閉じたままトリップしてんだからな。

 一応指示出せば、そこを殴ってくれるし魔法使ってくれるから居てもらってるけど。


 ちなみに、ロドラとポンはもうダウンしてんの。


 ま、正直2人はよくやったよな。


 やるだけやって、3時間保たせたは良いけど、もう打つ手無し、ってなった時よ。


 ぶっ飛ばされたロドラがダイスロール100の超覚醒引き当てた上に、アブラカタブラでバーサーク引いて300万戦闘力で戻ってきたのよ。


 なんで知ってるって?

 ジェイドが教えてくれたぜ。


 そっからガチの殴り合い。


 ロドラ登場シーンとか、閣下にトドメ刺す手前だったかんな。

 初めてロドラがイケメンに見えたぜ。 


 しかもそっから6時間。


 ポンの『龍の城』使いまくって、あたいらも援護して1時間。


 そして今に至るって訳。


 ロドラの誘導とポンの援護で休む間もなく動いてたもんな。


 何より閣下だ。

 天下百日はもう使用不可能になり、意識はあるけど足がもう立っていない。


 閣下、頑張り過ぎたんだよな。


 もう良いぜ。そこで休んでな。


「ミーシャ、最後に、ド派手に、ブチかまそーぜ! 『パワーイズパワー』『永久なる暴風雪』起動!」

「よし来た。『錬金術』起動! みーくん嫁ズ連携技! いくぜぇ!」


 あたいの技とミーシャの技が合わさって何ができるって?


 そんなん、超巨大なアイスゴーレムに決まってるよな!


 ちなみに、見た目だけ派手で、動く訳でもないし、操縦出来る訳でもない。


 じゃあなんで作ったって?


 はっ、決まってら。


 そこに居るだけで意味あんの。


 大質量の中々砕けない氷の塊が、城の中のゲートの前に置いてあんだからな。


 あとは、任せたぜ。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

○□◇♡←の意味は?


お 察 し く だ さ れ !


時間耐久タワーディフェンスって書くの難しいですね。


時間飛ばすタイミングがね!

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