31-0魔王様、魔王と笑う

 ヌエ、強いぞ?


 スキル強制発動されたら、僕は一発でこの世からおさらばだね。


 あれ? 今があの世か。


 この世とあの世で死んだら次はどこなんだろ?


 その世かな?


「ったく……どいつもこいつも役立たずばっかり」


 僕の頭を脇に抱えるハーゲがぶつくさと言っているけれど、本気で言っている感じじゃ無い。


 それもそのはず。


 現在の局面は二正面作戦のノース・イート側のみが超優勢に傾いているだけ。


 ハーゲがここにいるから勝利じゃない。


 逆にサウス・マータ方面はボロ負け。


 ハーゲがここで囮になっている間にサウス・マータを取り込まれたらまぁまぁヤバい。

 ハーゲを仕留められれば良いんだけど、敵地ど真ん中に入ってくるくらいだから、逃走の準備もあるはずなんだよね。


 サウス・マータを落とされた上でハーゲに逃げられるのが展開としては1番マズい。


 サウス・マータのことが無ければ、すぐにでもぶん殴ってやるところなんだけどなぁ。


 逃げないように牽制するのが今の僕の最適解なんだよね。


「……おい、アム。何してるの? まだ要塞落としてないの? 『破一梟』切っている間にやっとけっていったよね?」


 おーっと、サウス・マータに設置したウェスト・ハーラゲートに一番近い位置にあるプリンニャー要塞を落とすだって?


 名前からしてすぐに落ちそうな要塞なんだけど、落ちてもらっちゃ本気で困るよ?


『やろうとしてるっちゃ。でも、雷を全部吸収されてるっちゃ』


 魔王アムの焦っている声がした。


「だったら中に入って中から吹き飛ばせ! 魔王ならそれくらいできるよね!?」


 僕の声で怒鳴らないでくれるかな?

 見てよ、美紗の身体がビクンビクンしてるじゃん。


 でも、やっぱりそうなっちゃったか。


「逃げてって言ったんだけどなー、クククッ」


 僕は笑いながら魔王ハーゲに歩み寄る。


「お? どーしたの? 僕が全力で逃げると思ってソコに居たんだよね? ふふふ、逃げて良いのかな?」


 ハーゲは、まだ気付いていないらしい。


「知らないの? あの要塞には『勇者』がもう一人いるんだよ」


「クククッ、ハーッハッハー! なんの冗談だジェイド・フューチャー! 勇者は全員把握している! 料理長の元勇者すら! だいたい、やられた勇者以外全員ここにいるよね? 四天王だって、全員ここに……ここに……?」


 ハーゲはブレッドが表示するモニターを全てを確認する。

 モニターに映されるのは、ミシェリー、ノウン、フラン……そしてドランだ。


「あの要塞に、四天王ギリ・ウーラがいるだと!? ふんっ、それがどうしたのかな!? 勇者に劣る四天王風情が、魔王アムを倒せるとでも? ハハハ! それを『勇者』だって? フハハハ! おんもしろい冗談だ! これから一生笑ってあげるよ! ジェイド・フューチャー!」


「勇気ある者を『勇者』と呼んで何が悪いの? その吠え面が、これからどう変わるのか、じっくり観察して年末特番で毎年放映してあげるよ! 視聴率取れなくなるのはいつかな? 今から楽しみだねぇ! ニヒヒ、イヒヒヒ!」


 おっと、僕としたことが笑ったことない笑い方しちゃった。


 ねぇ、みんな。

 ハーゲよりも僕の笑いで引くの、ヤメヨーネ?


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

今度は忘れていなかった。


次回、頑張れギリ・ウーラ


 

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