29-2西の魔王、降臨

ーーーー ジャック・ザ・ニッパー ーーーー


 上と連絡が途絶えると困るからな。


 射矢角イヤホーンはフーリムに付けたままにしといた。


 すると、ドランが庭園から地下に向けて大穴開けた直後に、ジェイドが帰ってきたとよ。


 早過ぎじゃね? となったが、ジェイドのやることだからそんなには気にしねぇ。


 だが、フーリムの心がおかしくなった。


 一言目、絶叫。赤いことに対しての。


 二言目、恐怖。どうしてジェイドが赤いのか。


 三言目、絶望。こんな赤色見たことない。


 フーリムはともかくとして、俺様が敵認定するには十分だ。


「悪いウーサー! 上がやべぇ! 俺様は戻る!」

「上で何かあったのであるか!?」

「多分下もやべぇ! 下は任せたぞウーサー!」

「ぬおーい! じゃーっく! だからもう少し説明をぉ!」


 急いでんだよ。

 実際、それで間に合った。


 俺様は出ていった窓から戻り、ジェイドの背後から斬り掛かる。

 その首を目掛け、俺様の最強の技を振るった。


 とんでもねぇ硬さだった。


 呪い付きの必殺技以外じゃ、絶対斬れねぇヤツだ。


 迷わず使って正解だった。


 飛んで回って転がるジェイドの首は、俺様の方へ向くなり、ニッと笑いやがった。


「あーあ、どうしてバレちゃうのかなー。フーリムのために3ヶ月も時間を掛けて用意したって言うのに」


 そのジェイドは、転がったまま口を開く。

 首から下が、歩いて拾う。


 拾った首を付けようとするが、くっつかねぇ。


「あー、これ『呪い』かぁ。勇者の呪いって厄介なんだなぁ。でも、『真=亜マニア』はまだ解きたくないんだよ。だって、3ヶ月かけて完璧にしたんだよ? 誰がとう見ても、僕はジェイド・フューチャー。あーあ、もったいない」


 ジェイドみたくケタケタ笑う。

 そして、その笑みを止めた瞬間、怒りに顔を歪ませた。


「ユルサナイ、死ね! フーリム!」


 大量の蛾がフーリムに襲い掛かる。


 俺様は動かねぇ。

 もっとも、助けに動かねぇだけだ。


「焔帝、起動。大丈夫よ、フーリム。この程度なら、私が守ってあげるわ」


 なぜなら、そこに四天王がいるからな。


「じゃ、そろそろ殴って良いなっ? ジェイド様のニセモノだから、盛大にかまして良いよな? ジャック、頼むっ」


 それも二人だ。


 俺様は手持ちのナイフで横に来たノウンを斬り刻む。

 薄皮一枚だけを、20連撃。


 この3ヶ月、俺様達だって何の用意もしてねぇ訳じゃねぇ。


 四天王ノウンを最速の最効率で100万パワーを引き出す方法も編み出した。

 ジェイド監修の下でな。


「予想以上に硬ぇぞ?」

「みたいだなっ」

「それでも弱点は作っておいた。分かってんだろぉな?」

「もちろんっ! さんきゅーなっ!」


 俺様と触れるようなハイタッチをかました瞬間、ノウンは消えるように踏み込んだ。


 偽ジェイドのボディに、挨拶代わりの一発が食らわされる。

 貫通した衝撃が反対の柱にヒビ入れやがった。


「ふーん、僕でもちょっと痛みを感じるとか、バウアー並のパワーっていうのは本当だったんだね」


 身体をくの字に曲げながらも、脇に抱えられた頭から出る声色にダメージはねぇな。

 

 それに驚くヤツはこっちにもいねぇんだが。


 俺様は思わずニヤけて言っちまった。


「ぶちかませや、ノウン」

「まっかせろぉぉおっ! ふぅんっ!」


 今のは、身体をくの字に折るための一撃。

 そして、首から見える俺様が作った断面に、ノウンの全力パンチがぶちかまされる。


「クギャアアアアア!」


 超音波みたいな金切り声出しやがって。

 ニセジェイドの頭の口から紫のドロドロが出てきた。

 きぃもちわりぃ。


 ノウンも思わず引いて、汚物を払うように手を振りまくってら。


「……さ、サスが勇者、弱点にしやがったネ? この首の断面、そういう呪いか」


 お? 目が虚ろだが、まだヤんのか?

 俺様もノウンも、まだまだヤり足りねぇぞ?

 グロッキーだからって容赦しねぇからな?


 俺様とノウンはウッキウキで手をバキバキと鳴らしながらニセジェイドに近付く。


 だが、ニセジェイドはクククと笑い始めた。


「これしきで、勝ったツモリか? 笑わせる!『十≡加トミカ』起動! 僕にシタガエ! ノース・イートの魔王達! これからたっぷり、地獄を見せてやる! これが『ごく』の魔王、ハーゲ・マルドゥーンの力だァ!」


 ニセジェイドこと、ハーゲ・マルドゥーンが宙に浮き、マントの裾が広がって、そこから6つの棺桶が現れた。


 その1つが、今開こうとしていた。


「僕の力を2つ、教えてアゲる。『破一梟はいちオウル』は死体を不死者とする梟を召喚デキる。精密操作は2体分しかデキない。もっとも、ある程度は動きを指示するだけで勝手に動くんだケドね」


 棺桶から現れたのは、燃えるような深紅の長髪を纏う、どこか見た影の女だった。


「そして『十≡加トミカ』は、『破一梟はいちオウル』で不死者とした者に生前の人格を与え、僕の下僕とする能力だ。当然だけれども、逆らえば自壊スルよ。僕が操っても強いけど、ある意味コッチの方が強い。クククッ」


 最後に、笑って言い放つ言葉に、俺様達は少しの間、言葉を失うことになった。


「『十≡加トミカ』は最大で十三体同時に付与デキる。この意味、分かるカナー? ノース・イートの歴代魔王十三体! 同時に相手して、勝てるもんなら勝ってミロォ!」


 同時に、外で爆発する音も聴こえた。

 ウーサーの方も、おっ始まったみたいだな。


 だが、気にしてる余裕はねぇ。


 コッチも、さらに4つの棺桶が開き始めたからな。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

ノース・イート歴代魔王戦スタート。

いわゆるボスラッシュ。

□ック○ン✕シリーズ大好きでした。

え? まとめて出てきてない?

大盤振る舞いこそ、我が正義!

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