27-2対ウェスト・ハーラ戦略会議

ーーーー ミシェリー・ヒート ーーーー


 気が付けば、ムフフな話は終わっとった。


「ミシェリー、今の話を聞いてどう思う?」


 ジェイド様から急に話を振られる。


 正直、話の内容は何も頭に入ってきてへん。


 でも、ウチが分かりませんでしたとは総司令の立場上言えへん。


「細かく言うと長くなりそうなので簡単に……主旨から逸れるかもしれませんが、ノース・イートの魔王城に待機する者と攻め入る者の2部隊編成ということですよね? それ自体に異論はありません。しかしながら、正直に申し上げます。ジェイド様の出方次第で全て変わります」


 誤魔化せたかぃな?


 みんなウンウンと頷いてくれとる。

 ギリも腕組んで首を縦に大きく振っとるから正解だったみたいやな。

 ふぅ、良かったー。


「まぁ、僕もそう思うよ。さすがミシェリー、よく分かってるね」


 苦笑いするジェイド様。

 頼むで? フーリム、後でバラすなんてことやめてぇよ?

 ジャックはウチの趣味話を聞かされとぅなかったら黙っときや?

 分かった? うん、良い子やな、よしよし。


「僕の動きはウェスト・ハーラの魔王に合わせる。まだ名前も分からないんだっけ? 仮で『西の魔王』と名付けよう。アム・ノイジアに対してはネイをぶつける。任せるよ?」


 ジェイド様は睨むように勇者ネイに視線を突き刺した。

 

「――承知」


 せやけど、ネイも気合十分みたいやな。

 ジェイド様の気迫に微塵も動じとらん。


「ウェスト・ハーラの異界ゲートをサウス・マータに設置されるとあらば、我ら勇者だけに任せてもらう。サウス・マータには、ウェスト・ハーラへ攻め入る時以外、魔族は誰も立ち入らない。良いな?」


 それどころかジェイド様に要求しよる。

 負けた癖に図々しいヤツやで。


 ジェイド様は不敵に笑い、頷きかけた。

 けど、そこで待ったを掛けたのは、ギリやった。


「ジェイド様、お待ちを」

「どうしたの? ギリ、何か都合悪かった?」


 ギリは慌てた様子やった。

 珍しいな? こーゆーことで慌てるの見たことないんやけど。


「近々サウス・マータで私が主催の料理教室があります。向こうの民の頼みで、こちらも調整し、調理設備も整え、やっと開催にこぎつけました。その期間、私だけでもサウス・マータへの滞在許可を願いたいのですが」


 そっちかい。

 もう戦争始まるんやで?

 さすがにソレは通らんやろ。


「そう言えばそうだったね。分かった。僕の権限で許可しよう」

「どういうことじゃ? 魔王ジェイド?」


 ジェイド様はあっさり許可するんかぃ。せやけど、勇者ネイはそれを許さずって感じやな。

 まぁ、ジェイド様が良い言えばそれでオシマイなんやけど、面倒なことになりそうやな。


「サウス・マータで君らの悪評をこれ以上広める必要は無いと思うよ? 料理って、つまり民の食事であり、兵站な訳で、結構な人々が僕らの料理を楽しみにしてることは知ってるよ? 味なら、ネイも知ってるでしょ?」


 ジェイド様の方が何枚も上手やったな。


 ギリが有給休暇中にサウス・マータで寄るところ全部で料理振る舞ったって言いよったからな。

 料理教えてくれってゆー話がぎょーさん有り過ぎてこうなったみたいやし。


「ぐぅ……分かったのである。四天王ギリ・ウーラのみ、サウス・マータでの滞在を許可する」


 生命の3大欲求の1つには敵わんってことやんな。


 ギリも御満悦や。

 ギリのそんなニッコリ笑顔なんか見たことあらへんで。料理長のラナともハイタッチや。相変わらず仲良ぇなぁ。

 

「美紗とアイはこの魔王城で絶対安静、ショーコは連絡役として行ったり来たり、残りが魔王アムに対応。3人で、勝てるね?」


 最後の確認やろうけど、ジェイド様の言葉が重い。とんでもない重圧を感じるわ。


「勇者3人、十分過ぎる戦力じゃ」


 その重圧を見事に跳ね返しよったな。

 ジェイド様に対してここまで出来るんはさすが勇者っちゅーとこやな。


「あとはウェスト・ハーラに攻め込むタイミングと、西の魔王がどう出るか。ふふっ、僕をどう楽しませてくれるか……ふふふっ」


 でもな、ジェイド様。

 魔力放出しながら笑わんといてぇな。


 みんな足が震えて動けへんで。

 ウチも含めてな。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

なぜギリは戦時なのにお料理教室を?


戦時とは言え、内政も疎かには出来ません。

ゆえにギリにはサウス・マータの内政(兵站管理)に向かわせます。

首脳部はそのことをしっかり理解しておりますよ?

きっとね!

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