26-0 魔王様、宴を始める

 僕は美紗と共に魔王城へと降り立つ。


 先にみんな戻ったけど、集まってくれてるかな?


 会場は謁見の間。


 その扉の前に美紗と共に立つ。


 そこに静寂は無い。

 むしろうるさいくらい。


「もうおっ始めてんなコレ」


 美紗は苦笑いしているけれど、僕としてはそれで良いと思ってる。

 美紗も腹を立てている訳では無い。

 恥ずかしい思いをしなくて良いとホッとしている感じだ。


 僕はそっと扉を開けた。

 人一人入れるだけの隙間。

 そこから、僕と美紗は入る。


 戦勝記念の宴だ。


 人類軍の王達は立場上来ていないみたいだけど、ルナ、ウーサー、ジャックは来ている。

 サウス・マータの勇者も5人いる。

 魔王軍も四天王がいて、フーリムやテンテン、シッシにヒデオとその家族、ドランとサランはフランの傍に。

 ギリと一緒に料理長のラナもいるね。


 あとは給仕のメイドや執事が数名。


 みんなで、ワイワイガヤガヤ。


 僕は四天王やドラン、サランの集まっている料理の置かれた台の前に、ひょっこりと顔を出す。


「ビュッフェ形式なんだね。でも、そこにみんなで固まってたら、料理が取れないよ?」


「「「「ジェイド様!? いつの間に!?」」」」


 見事にハモった。


 そして、一斉に視線が僕に向く。

 

 気にしなくても良いのに。

 と、一瞬だけ思ったけど、傾聴してくれてるみたいだし、ついでに言っておこう。


「みんな、お仕事お疲れ様でした。今日は無礼講なので、魔王モードは解除! 交流会も兼ねてるから気兼ねなくだよ? ただし、ハメは外し過ぎないようにね。はい、みんな、グラスを持ってー」


 僕は改めて音頭を取る。


「次の戦いはしばらく先だ。それまで、しっかり休み、しっかり働く。そのための、今日は休み、そして宴だ。敵だった者には居心地が悪いかもしれないけれど、ここにそんなことを気にする者はいません。まだまだ心配事はあるだろうけど、今日くらいは忘れたってバチなんか当たらないよ。だから、みんな、お疲れ様でした! カンパーイ!」


 みんな、最初こそ驚いたけれど、すでに出来上がってる人も多かったみたいで、結構ノリノリでグラスをぶつけてくれた。


 意外とウェーイな人材揃ってるんだね。


 でも、さ。


 僕が、この輪の中にいるって思うと、ちょっと込み上げてくるものがあるよね。


 誕生日ケーキは何度も食べたことあるけど、ちょこっとだけ。

 僕の体は、弱過ぎた。

 

 クリスマスパーティーだって、ハロウィンだって、お正月だって、僕はいつも控えめだった。


 全て僕のためだって分かってる。


 それでも、僕は全力で何事もやりたかった。


 僕が唯一全力を出せるもの。

 それはゲームだった。

 大会こそ全力は出せないことも多かったけど、一人でする時や美紗とする時は全力だった。


 今までは、中々に楽しむ余裕は無かったけれど、美紗も居て、新しい仲間もいる。


 家族とお別れになったのは、少しだけ寂しい。


 でも、その家族のおかげで今がある。


 感謝だけは、絶対に忘れないよ。


 ありがとう、お父さん、お母さん。


「僕は、これから美紗と幸せに暮らすよ。そのための障害は、僕が全て打ち払う」


「お、おいみーくん。いきなりのラブコールは嬉しいんだけど、魔王モード全開じゃね?」


 あ、僕から何か出てたみたい。

 ニトログリセリンじゃないよね?

 溢れてない? 大丈夫かな?


 フーリムとジャックが、僕のちょっと高度なギャグと解釈してくれて、元の賑やかな宴会に戻った。


 ああ、楽しい。

 ご飯も美味しい。


 さぁ、宴が終わったら、美紗とのハネムーンだ。


 ノース・イートをたくさん満喫していこう。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

第一部! 完!

というより、前半終了。

なので、半分完!

健全? なラブコメ編終了でございます。

次回より、第一部、四界統一編の後編、スタート!


 

 

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