23-5アイシテルミッツ三帝会戦⑤

ーーーー ポン・デ・ウィング ーーーー


 あったま来た。


 魔族のクセに生意気過ぎっしょ?


 ちょうど良い感じに、人間は戦場から引き離したことだしな。


 俺っちの魔法はちょいと特殊で、『天力』を使った魔法が使える。

 天力は魔力から変換できる。

 効率は悪いがなー。


 天覧爆は『天力』を少しだけ混ぜた普通の火魔法よりちょいと強力な魔法。


 だが、もう出し惜しみはしネェからな?


 火魔法を軸に、ありったけの『天力』を混ぜる。


 空に浮かべた天覧爆は、『天力』の力で蜘蛛の巣のように繋がり、広範囲を、同時に、十倍の威力で爆撃する。


「一撃でノシてやるよぉ! 『天空の巣』起動!」


 赤い空の下で繋がり合った天覧爆が、髭面と中ボスみたいな女に落ちる。


 はい、ドーン!


「だーっはっはー! ざんまぁ見ろってーの!」


 爆風は真っ直ぐに立ち昇る。


 これで人間の兵士には被害ナシ。


 多少は目を瞑ってもイイんだが、やっぱり勇者が人殺しってのは外聞か悪いからな。


 特に、ここにいる兵力は連れて帰ること前提っしょ?


 悪い噂だけは広めさせちゃなんねーってのが、ちょいと面倒だよな。


 爆煙が晴れる。


 一応、黒焦げだろうが、死体は確認っと……んなっ!?


ーーーー ミシェリー・ヒート ーーーー


 あふぅ!


 生きてるって素晴らしい、Part1!


 Part2とかいらへんからな!


 フリやないからな!


 ウチ、ちゃんと生きとるでぇ!


「ナイスやヒデオ! よぉ穴開けたな!」

「死んだかと思ったぜぇ……」


 ヒデオが空の塊を何個か撃ち抜いてくれたおかげで穴ができたんや。


 爆風はそれなりにあったけど、ウチもヒデオも鍛え方が違うからな。


「たっはー! しぶといヤツらだなぁ! もうイっぱつブチかましてやるよ!」


 んげっ、連発できるんかぃ。


「総司令! 次はちょいと厳しいですぜ!?」


 ヒデオの言う通りなんやけど、逃げようにも逃げられん。


 アイシテルミッツの丘の上空で俯瞰されとったら、どこにおってもターゲットロックオンや。


「なら、撃たせないようにするしか……」


 どーやって?


 ウチは周囲を見渡す。


 アマエ隊が帝国軍と、勇者軍も結構掴まえとるな。

 帝国軍は勇者軍をめっちゃ掴んどるけど。


「ん? 勇者軍? あー、そーゆーことかぃな」


 ウチは全力で声を上げた。


「アマエ隊及び帝国軍に告ぐ! 全力で! 勇者軍を! この戦場に引き込めぇ!」


 今まで、勇者は、ウチらしか狙ってきとらん。

 魔王軍の先頭はウチやから、後方には被害無しや。


 帝国軍にも、手ぇ出しとらんとこ見ると……。


 そらそうやろな。


 勇者ともあろう者が、人間を手に掛ける訳にはいかへんもんな。


「どーしたぁ!? 鎧も武器もねぇのは魔族も一緒だろぉ!? 人類軍の底力、見せてやれよぉ!」


 勇者は、振りかざした手を下ろせない。


 たった1人の犠牲すら覚悟できへん勇者に、ウチらは負けんわ。


「ヒデオ! やれ!」


 ヒデオは狙い澄ましてトリガーを引く。


「甘えぇ! 『龍の城』起動!」


 勇者の周りに金色の盾が現れる。

 まるで空に浮かぶ城壁やな。

 勇者の姿すら、見えへん。


「甘ぇのは、お前さんだぜぃ」


 でも、ヒデオはトリガーを引き続ける。


 その壁には、穴が開いた。


「壁、3つ重ねても、ダメ……かよ」


 勇者は堕ちる。


 致命傷にはなっとらんけど、あの高さから落ちればタダじゃすまへんやろ。


 ふぅ、一時はどーなるか思ぉたけど、勝ったな。


ーーーー ポン・デ・ウィング ーーーー


 俺っちは、堕ちている。

 地面に向けて、真っ逆さま。


 翼は穴だらけ。

 肩にも穴。


 致命傷じゃねぇけども、もう当分飛べねぇな。


 魔族、あんなに強いのか?


 キングヨジラやモースギュドラみたいな魔獣と比べるのはおかしいかもしんねぇけど、似たようなもんだろ。


 俺っちはサウス・マータの魔王がいなくなった後に召喚されたが、魔族の残党と戦ったことがある。


 こんなに強くネェよ。


「これ、魔王専用の称号スキルだったんだけどなぁ。俺っちにも、勇者としての意地がある。いっくぜぇ」


 俺っちは、叫んだ。

 地に落ちる寸前、最後の大技だ。


 『βパルス』起動。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

Norin:3分間待ってやる!

ポン(落下中):そんなに時間いらねぇっしょ!

Norin:答えを聞こう!

ポン(落下寸前):βパルス!


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