23-3アイシテルミッツ三帝会戦③
ーー ヒャッハー・エンドセントリー7世 ーー
ああ、もう終わった。
「イヤだアああァァアあ! じにだぐないぃいい!」
目の前には槍衾。
止まろうにも、押され続け、止まること叶わず。
あとはもう串刺しになるのみ。
最期に空を見た。
アイシテルミッツの丘に、雪が降っていた。
幻想的だ。
そんな中で死ぬなら、少しは良いように語り継がれるであろう。
ヒャッハー・エンドセントリー7世、先陣を斬り裂き、雪降る丘に眠る。
「フッ、良き響きだ……ぐふぅ!?」
我は、何かにぶつかった。
何だ? しっとりとした、ややヌメヌメした、生温かく、とてつもなく不快な柔らかい感触……。
「んふぅっ」
人肌だ。
「いやぁん」
それも肉付きの良い男達のだ。
「なーにが、いや~んだぁ! 槍衾は!? 重装歩兵の壁は!? って、押すなァァアア! ウァワアアア!?」
周囲を見回そうにも、押し合い圧し合いのシッチャカメッチャカであるわ!
生きている。
それは良かった。
だが、何がどうしてこうなっておる!?
なぁ!? 異界の勇者よ!?
ーーーー ポン・デ・ウィング ーーーー
いや俺っちに聞かれても知らねぇよ!
最前線の重装歩兵だけじゃねぇのよ。
突然、何の前触れも無く、俺っちの剣も含む全ての兵士の武器と鎧が消え去るように、武装解除されちまった。
前触れもなく?
「いや、原因は、この雪っしょ」
だとしたらマズィねぇ。
対応できるか?
すぐに魔王軍は一気に攻め込んで……来てねぇじゃん。
おいこら、原因はそっちなんしょ?
ーーーー ミシェリー・ヒート ーーーー
大混乱の原因はウチ。
絶対にウチ。
でもな、ジェイド様がくれた称号スキルなんやもん。
ちょっと説明してくれてもエエんちゃう?
『Phase A:Wonder Snow〜Special Color』
としか書かれてないんは不親切やと思うなぁ!?
解読不能やん!
まぁ、初めて見た時から嫌な予感で心ザワザワやったけどな。
もう起動させてもーたから止められへんし、止まらんわ。
でもなんで?
敵はともかく味方の武器まで一緒に消滅すんやねぇん!
「ヒデオ! 魔王軍の武器はどれだけが無事!?」
「おいらの武器だけですイエッサー!」
マジかぃなー! あぁーんもぅ!
「天幕に予備が少しあったと思うんで、部下に取りに行かせてます。届くまでお待ちください、サー!」
……ヒデオ、切なくなるくらい優秀やん。
周りが変なんばっかやからアレやけど、ジェイド様が気に掛けるのも頷けるなぁ。
天幕まで全力で駆けて往復30分程度。
ウチの想いは届かへんやろな。
悔しいけど、武器も消滅した現状、下手すると現戦力で真っ向勝負になりかねへんし、多分なる。
「ヒデオ、装備は全部無事?」
「いえ、ライオットシールドだけやられやした。おかげで武器は守れたぜぃ……守れやした」
ふむふむ、活躍申し分無く、ウチの補佐もできとる。勲章もんやな。
あとは、生き残るだけ。
「ヒデオ、普段通り喋りなさい。総司令ミシェリー・ヒートの名の下に許可するわ」
「あ、は……へぇ、了解でさぁ」
ウチは混乱しとる現場に通達する。
「ヒデオ以外の者は、私達の援護を。武器は無いけれど、それは向こうも同じ。我ら魔族は人間型になろうが、鍛え方が違うわ。人間共に、その差、見せつけてやりなさい!」
みんなに、ウチの声は通った。
こういう時にちゃんと傾聴してくれるんが、魔族の優秀なとこやな。
混乱して変な熱が出とる戦場やけど、躊躇はアカン。
完全な劣勢やないんなら、飛び込むで! 勇者軍に!
「シッシ! なんとしてもテンテンを叩き起こしなさい! この戦場にいるのはほぼ男、武装解除された今、魅惑耐性も無いようなもの。テンテンが力を発揮できれば、敵軍を一気に掌握できるわ!」
シッシは、テンテンの肩と足を持ち、担ぎ上げて、空中でブリッジさせたままサムズアップ。
間違いなくカギはテンテンなんやから、息の根は止めんよーにな?
背骨から折れそうやで。
と思ったんも束の間。
『Phase A Final:Special color is red』
え? まだ何かあるん?
ホンマ堪忍し……空が一瞬で真っ赤になった。
マジで堪忍してぇなぁぁああ!
ーーーー Norinαらくがき ーーーー
Norin:空から降ってくるのは本当に雪ですか?
ミシェ:じゃあなんなんよ!?
Norin:石鹸である可能性も微レ存。
ミシェ:薬用石鹸〇〇ーズちゃうからな! 称号スキルの由来もコレやないからな!
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