22-2勇者VS勇者①

ーーーー ノウン・マッソー ーーーー


 勇者アイとの打合いを始めてどれくらい経った?


「ハッ! なっかなかやんじゃん! 口だけなヤツじゃなかったな! そこは訂正してやるよ! ほぃ、アイスソード追加な」


「さんきゅっ! でもあたしの全力マックスなのに、よくついてこれるな」


 あたしはアイから新しいアイスソードを受け取り、また斬り掛かる。


 あたしは完全に覚醒状態になってるから100万パワーのはずなのに、アイは息を上げながらもあたしと打ち合っている。


「覚醒状態のあたいと闘うヤツはデバフ付くからなー。攻守半減的な?」


 それでかっ!

 なんかチョーシでないと思った。


「あとはアイスソードがあたいに力を与えてくれる感じがあるからな。トータルで50万パワーくらい」


 それ、いいねっ。


「つまり、互角じゃんっ、さいこーのヤツッ!」


「まおーじゃないとツマンネーって思ったが、それはあたいが間違ってたみたいだな……お前と戦うの、すっごく面白い!」


 チョーシは出ないけど、アイの言いたいことは分かる。


「お前じゃないっ! あたしは、ノウン・マッソーだっ!」


 あたしは、アイに斬り掛かり、受けられる。


「イイゼ! ノウン! あたいのことは、アイって呼びな!」


 返す刀であたしが受ける。


 ギリギリの戦いが、ずっと続く。


 あーもう、メッチャ楽しいっ!


 あたしとアイは、身体に傷を増やしながらも、剣戟を加速させた。


ーーーー ルナ・ティアドロップ ーーーー


 距離を取っては、ネイさんに砲撃魔法を放ちます。


 その度に、腕で弾かれ、接近されて太い剣を叩きつけられます。


 でも、ジャッ君が必ず割り込んでくれて、私を守ってくれます。


「てんめぇルナ! これで50回目だろ! そろそろまともに喰らわせろ!」


 ジャッ君、キレてまーす。


「だってぇ! 全力全開だったらネイさん消し炭にしちゃうかもだしぃ!」


 私はムーンエナジーフォースで魔力をインストールして全回復させながら、次の砲撃準備に入ります。


 次は火と水と雷を混ぜようかな。


「聞いたかよ、ネイ・ムセル。まだ毛も生え揃ってねぇ雌ガキに手ぇヌかれてザマァねぇな。それとも、世話してほしい年頃かぁ?」


 あー! お爺ちゃんイジメ良くないよー!

 しかーも!


「ちゃんと生え……って乙女にナニ言わせようとしてるのかなぁ!!!?????」


 ジャッくん?

 フフフ、一発だけなら誤射かもしれないね?


「ぃよーし、やっと俺様の方見やがったな。さっきから無視しやがって。雌ガキの尻ばっか追い掛けてるからそーゆー趣味のヤツかとオモッーー!?」


 あーあ、ジャッくんが怒らせるからー。


 ネイさんの太い剣をガンガンと叩き込まれています。


 私はその隙に。


 火と水と雷の魔法をぶっ放します。


「おいルナ! 俺様もい……」


 ジャッくんは私の素敵なスマイルを見て悟ったのか、黙って離脱しましたね。チッ。


 ネイさんはところどころ素早いのですが、私の魔法はなぜか全て受け止めてくれます。


 でも、今回の魔法は違うよ?


 ネイさんが、受ける手前で、水と雷魔法を交錯させます。


 すると、水は酸素と水素に電気分解されます。


 実はこっそり風魔法も使っています。


 水素と酸素を逃さない為に。


 そこに火魔法で、ドーンです!


「ふふっ、ジェイドくん直伝、ボンバー魔法!」


 戦隊モノも真っ青の大爆発ですね。


 おじいちゃん、消し飛んじゃった?


 あ、なんか飛んできました。


 私の前に、クルクル回って華麗に着地。


「てんめぇルナ。俺様ごと吹き飛ばそうとしやがったな?」

「ジャッくんなら大丈夫かなって。チッ」 

「なんでまた舌打ちしやがった!?」


 また?

 さっきのも聞かれてたみたいですね。

 私としたことが、手加減しちゃったみたいです。


 とりあえず、スマイルで誤魔化しておきます。


「……なんか、ジェイドに似てきやがったな……」

「ぶふっ!」


 ななななんてことを言うのかなぁジャッくんは!?


 でも、もう遊んでる暇は無いみたいです。


「ふむ、さすがは勇者なだけはある。攻撃魔法、威力申し分無し。魔力無尽蔵。単なる遠距離戦であれば、吾輩ですら足元にも及ばぬ」


 ネイさんに誉められた。

 誉めてくれて嬉しいんだけど、無傷無表情で言われると何ともなぁ。


「相方が守りの、もしくは近接戦闘のエキスパートであれば、吾輩は屈するところであったわ」


 煽るネイさん。

 これにはジャッくんも、ビキビキです。


「やはり、まずは『月』の勇者を無力化せねばならんな」


 フッと、ネイさんは消えました。


 ガキンッ!


 私の目の前に、大剣を振り下ろすネイさんと、それを受け止めるジャッくんがいました。


「ほぉ、今のが見えたのであるか?」

「うっせー……ウーサーみたいな喋りしてんじゃねぇよジジイ。ッォラァッ!」


 え? 私は何が起きたかサッパリだよ?


 ジャッくんは腕をプルプルさせながらも大剣を弾き、ネイさんを後退させました。


「では先に、お主から片付けるとしよう」


「ハッ! そういや自己紹介がまだだったな。俺様は『殺』の勇者、ジャック・ザ・ニッパー。バラバラにして家畜の餌にでもしてやらぁ!」


 うーん、何か普段よりジャッくんの口が汚いです。


 なんてゆーか、目力が無いというか、自信が無い感じに見えます。


 私は、隙を突くように砲撃魔法を撃ち込みますが、ネイさんに掠りもしなくなりました。


 ジャッくんの顔が、だんだん泣きそうになっていくのが、少しだけだけど、見えました。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

ルナ:ステンバーイ、ステンバーイ……ゴーッ!

ジャ:おいルナ! 俺様もい……チュドーン!

ルナ:ビューティフォー(* ´Д`)y━~~



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