18-0魔王様、表彰される

 ありがたいことに、みんなのおかげで武闘会には優勝できた。


 デキレースと言われてもしょうがないけれど、目的はみんなの力を見せ合うこと。


 それを考えればとても良い武闘会だったと思う。


 僕はファンファーレと共に、表彰台に上がる。


 首にメダル(製作者、僕)を掛けてくれるのはキレーヌさんだ。


「もうあなたで良いわ。結婚しましょう」

「???? すみません、僕にはもう心に決めた人がいるので」

「ごふっ……」


 小声で求婚されてしまったが、即断らせてもらった。

 血を吐いたように見えたので、すぐに治癒魔法を掛けてあげた。


「がるるるる……」


 野獣の目をしている。怖い。

 キレーヌさん、そんなキャラクターだったっけ?


 僕は混乱する頭で、観衆に応えるため顔を上げて手を振った。


 その瞬間だった。


「ステータス・フルオープン」


 僕は発していないのに、僕の声がしてステータスが開かれる。


 僕以外も、試合に出た者全てのステータスが開かれていた。


ジェイド・フューチャーLv2112

『超』『魔王』『全属性魔法使用可』『錬金術』『全テヲ砕ク者』『木?魔法(装填完了)Lv1961』『星ノ眼』『超??技術Lv2022』『?体新?Lv1850』

力:10 魔力:10000


 ハテナがちょっと見えている。

 あれ?

 称号も1つ増えてる。

 『超』って何さ?


 そして魔王の系譜が、僕の手にあった。

 手帳サイズだったそれは、映画のスクリーンのように広がる。


 魔王の系譜の仕業だな?

 一体何をしてくれるのかな?

 みんなビックリしてるじゃん。


「皆よ、静まれ。これより、魔王の系譜から何かあるようだ。しばし見守ろうではないか」


 僕の一声で、ざわつく周囲はすぐに静寂を取り戻す。


 そして、魔王の系譜に、文字が記されていく。


『おめでとうございます、ジェイド・フューチャー。貴方は力を示し、ノース・イートを統一しました。褒美として、部下に称号スキルを付与できる時間を与えます。3時間(残り1分)しかないため、有効に使用してください』


 待って。それ待って。

 残り1分って何?

 しかも3時間ってちょうど武闘会が始まるくらいの時間だったよね?


『本人が潜在的に力を望み、且つ互いに信頼関係が無ければ開放されないので注意してください』


 注意も何も、時間無いよね。


『称号スキルの付与時間が終了しました。実りある時間だったかと思われます』


 僕、何もシテナイヨ?


『それでは、ワタクシ『魔王の系譜』より、1000年のフェーズ1を一足早く終えた世界に、フェーズ2の説明を開始します』


 今、それ、来ちゃうんだ。


「ミシェリー! フーリム! 記録を取れ! 法皇キレーヌ! ウーサー! そちらの陣営はそちらでやれ!」


 僕は2人と勇者組に指示を出すが、予想外の答えが返ってきた。


「ジェイド様は読めるのですか!?」

「転写の魔法、効かないんだけど!? あの記号みたいな文字の丸写しは厳しーよ!?」


 ミシェリー、フーリム、読めないの?

 まさか僕にしか見えない文字?


「ジェイド! それは日本語である! ルナが読めるのでこちらは任せてもらおう!」


 ナイス、ウーサー。

 日本語だったら別の方法がある。


「ならばフーリム! 『真詠』で我の心を見続けろ! それで翻訳されるはずだ!」

「分かったわ! ミシェリー総司令、ジェイドの心を読み上げるので記録を!」

「よっしゃ! 任せときぃ!」


 ミシェリーは腕を捲り上げてメモを取り始めた。

 紙とペンはギリとドランが手早く用意して勇者組にも渡している。


『ノース・イート、サウス・マータ、ウェスト・ハーラ、イースト・キーンの四界の内、最も統一の早かったサウス・マータには先行侵略権、異界ゲート及び偵察用異界ゲートを1セット付与済み。2番手であるノース・イートは侵略権を行使されます』


 それって、攻められるから不利なだけでは?

 もしかして2番手って損なだけのやつ?

 というか異界は4つで確定なんだね。

 初代魔王のメモの通りか。


『但し、異界ゲートの設置場所は、ノース・イートにおいてのみ、ノース・イートが指定できます。偵察用異界ゲート(1往復のみの使用で消失、2名まで)以外の異界ゲートをノース・イートに設置することはできません。設置依頼を受けた場合、24時間以内に設置してください。時間内の設置が行われなければ、設置権利は依頼者に移動します』


 なるほど、いきなり攻められちゃう展開だけど、守りでは非常に有利だね。


 偵察用ゲートだけは気を付けないと。

 サウス・マータ以外のね。


『尚、異界ゲート、偵察用異界ゲートは1000年のフェーズ1終了時に2セットが、ノース・イート以外の全ての世界に順次、付与されます』


 ウチは守りに全振りってことね。

 攻城戦は基本守りが有利だからね。


 人魔歴1000年まであと3ヶ月だったかな。

 つまり、最速でもう宣戦布告されるってことか。

 まぁ、ミーシャがサウス・マータにいるなら速攻は無い。

 余程向こうの準備が万全じゃない限りはね。

 こっちの戦力の詳細が漏れていなければ、3週間……いや、2週間後と見た。


 ミーシャはどんな戦法で来るかな?

 可愛い笑顔でジェノサイド、って方針はいつも通りだとして、うーん……まぁ、魔族皆殺しは確定。

 人類を前面に出しても幻術・洗脳対策で皆殺しだろうし、サウス・マータの司令官が誰になってるかだよね。


 ミーシャが総司令なら、まずは全殺しスタートだから、それを念頭に準備しようかな。

 ミーシャも僕が戦略を練ると思ってるだろうし。


 司令官が他にいるなら、ミーシャさえ抑えれば作戦は瓦解する。

 作戦の立案はミーシャだろうけど、心理的ハードルが高過ぎるもん。

 率先してこなすミーシャさえ、僕がキッチリ抑えれば、あとは普通の戦争だ。


 早くミーシャに会いたいな。


 いやー、情報山盛りだね。

 まだ何かあるかな?


『最後に、ワタクシから、魔王へ称号を与えまし……タ……。オメデトウ……ジェイド。貴方を表彰……シマス。コレデ……スベテノ……マ……ヲ…………』


 ぬああああぉあ!


 最期にブルースクリーン!


 ヤメテ、それだけは僕、見てられないから!


 僕が目をギュッとしている内に、『魔王の系譜』はフーリムに始めて貰った時と同じ分厚い本になり、魔力すら感じ取れなくなってしまった。


 役目を終えた……と言うことなのかな?


 何か最後がちょっと意味深だったけど、とりあえず、みんなにも言っておかないとね。


 僕は、ノース・イートに生きる全ての者に言い放った。


「これより、戦争の準備に入る! 敵は異界、サウス・マータだ! 人魔連合軍など、このノース・イート以外はいないだろう! 各国王とその家臣、そして勇者とこれより軍議を行う! 詳細は各国王より後程説明を受けよ!」


 そして、僕はアイシテルミッツの丘で、再び会議を行うことになった。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

四世界の名前、出揃いました。

由来

ウェスト・ハーラ:西=WEST→ウエスト=腹

イースト・キーン:東=EAST→イースト菌(パン酵母)


由来なんか書かなくても分かりますわね!


予想が当たった人、おめでとうございます!

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