17-2第一試合~第三試合

ーーーー ノウン・マッソー ーーーー


 武闘会やるって、あたし、すっげぇワクワクしたっ。


 でもな、初っぱなからジェイド様は無理っ!


 全力でも勝てないのに、どうしろってーの?


 あたしは、調印式があるからって急いでやってきたドランの肩を借りる。

 ドランの反射ダメージで、あたしが覚醒するためになっ。


「あたたっ、これで覚醒っと……あたしの骨はちゃんと拾ってくれよなっ、ドラン」

「それくらい、御安い御用ですな。まぁジェイド様も無茶はされますまい。ジェイド様の胸に飛び込むつもりでドーンと行かれるのが良いのではないですかな?」


 変なこと言いやがって!


「胸を借りるつもりで行けっつーのっ!」

「ほっほっほ、そうでしたな」


 でも、ドランのおかげで緊張は解れた。


 ジェイド様の前に立つと顔が青ざめるのは条件反射みたいなもんだから勘弁なっ。


 そこに、ジェイド様がとんでもないことを言ってくる。


「ノウンだけではなく、皆に告ぐ。本気で来い。我に勝った者には褒美を取らせよう。何でも言うことを聞く、というのはどうだ? 魔鉱石を砕くこともできるし、錬金術で望むモノを創造してやろう。我の知識には限りがあるが、その中でなら好きにせよ。難しかったか? 我ができることなら、何でも1つ、願いを叶えようと言うことだ」


 なんでも?

 あたしの言うこと、なんでも?

 ジェイド様にできることなら、なんでも?


 あたしには、またアノ声が聞こえた。


『いきなり子作りはハードル高いもんね。チューにしときなさい。はいっ、ジェイド様に勝ったらチューしてねって! 言っちゃえば、負けてくれるかもよ?』


 だーからっ! 母ちゃんは成仏してろってーのっ!


 負けてくれなんて思ってないしっ!


 負けてくれたら、チューなんてっ……チューなんてっ! チューナーンーテー……。


『チューできたら、あとは結婚ね! ん? あ、ヤバ。ジェイドさまー、あとはおまかせー』


 ケッコン……チュー……ケッコン、ちゅ。


 あたしの目の前に、なぜかステータスが沸いてきた。


『マリッジゴールド【炉心融解】』


 なんか称号スキルが追加された。

 あたし、体の自由が全く効かなくなったんだけど。


「ジェイド様、何でも、何でも言うこと……」


 頭は、急に冴えてきた。

 でも、体も口も、勝手に動く。


 気付いたら、目の前にジェイド様。

 あたしが、瞬時に移動していた。

 拳の速さも、あたしじゃないみたいに速い。


 ジェイド様の横っ面にあたしの拳が炸裂した。

 ジェイド様の頭は、文字通り水風船のように消し飛んだ。


 中身は水。


「水魔法で創ったとは言え、強度があまりにも足らんな。錬金術でガワだけでも創るか」


 ジェイド様は別のところに立っていた。

 偽物と区別つかないよっ。


『勝ったら、ジェイド様人形もおねだりネ』


 うっせー! もぅ出てくんな!


「ちゅき……ジェイドさま、ちゅき……」


 ぬああぁあ! あたしもナニ言ってんだ!?


 まだ小声だから聞こえてないだろうけどさっ!


「ちゅきちゅきちゅきちゅきちゅちゅちゅちゅ……」


 もぉやめろっ!

 死ぬっ! 恥ずかしすぎて死んじゃうからっ!


 あたしはちゅきちゅき言いながらジェイド様を囲むように走り回り、数多の残像を生み出す。


 こんなこと今までできなかったけどなっ!


「残像拳……まさかこの目で見ることができるとは……良いだろう。来い! ノウン!」


 いや!

 近付いたら、聞かれるっ!

 やだやだっ!


 でも、あたしの意思とは勝手に、残像を引き連れてジェイド様に飛び掛かる。


 あぁ、もう絶対聞かれた。


 そう思った瞬間。


「爆裂反射装甲、オールパージ!」


 ジェイド様が爆発した。

 正しくは、ジェイド様を中心として、その周囲が爆発した。


 全方位爆破。


 これにはお手上げだよっ。


 気持ち良い負けっぷり。


「あれ? 威力抑えたんだけど、吹き飛んじゃった? ごめんノウン、勝っちゃった。でも、すごく盛り上がったよ。ありがと」


 最後に、やけに優しいジェイド様の幻を見た気がした。


 あたし、いつものジェイド様も良いけど、こんなジェイド様も大好きだよっ。


ーーーー ドラン・ハミンゴボッチ ーーーー


 とんでもない第一試合でございます。


 真っ青なノウンがリングに上がる時は憐れみの気持ちもございましたが、ジェイド様の何でも望みを叶える発言から、存在が変わったかのような力を纏って戦闘を行うノウン……狂戦士化のような力でした。


 黄金のオーラはその上をゆくモノを感じましたが……。

 ジェイド様もジェイド様です。


 『殺』の勇者の覚醒時を優に上回る速度のノウンをいとも簡単に蹴散らすなど、恐ろしい。


 私やフランであっても、厳しい戦いとなるでしょう。


 であるなら逃げれば良い?

 ご冗談を。


 ジェイド様が何でも望みを叶えてくれると言っているのです。


 戦場に身を置く者ならば、挑んで当然でございます。


 ですが、ジェイド様に提案させていただきます。


「ジェイド様、これより第二試合でございますが、私とフラン、同時に挑んでよろしいでしょうか? もちろん、もしそれで勝利しても、願いは一つだけで構いませぬゆえ」


「ふむ……二名揃って完全龍化するなら良いだろう。…………派手だし」


 最後に何か言われたようですが、よく聞こえませんでした。

 ですが、完全龍化で良いと?

 私だけでなく、フランまで?


「パパ、フラン、うまくせいぎょ、できないかも……」


 フランも完全龍化できるのですが、ドラゴン特有の破壊衝動を抑えきることが難しいようです。

 ですが、心配いりません。


「フラン、ジェイド様が良いと言っているのです。構いません、全力で、ぶつかりましょうぞ」


 そうして、フランと共にリングへ上がり、ジェイド様の前で完全龍化して待機します。


 フランが完全龍化したところで、試合は始まりました。


ーーーー フラン・ハミンゴボッチ ーーーー


 ジェイドさま、ちっちゃい。


 ひさしぶりに、かんぜんりゅうかした。


 ドロドロしてたから、好きじゃなかったけど、ジェイドさまと出会って、ドロドロなくなった。


 パパは、キレイなぎんいろ。

 フランは、むらさきいろ。あんまりきれいじゃない。


「ふむ、フランはアメジストみたいで綺麗な体をしているな」


 ジェイドさまが、ジロジロ見てくる。


「ジェイドさま、えっち」


 なんで?? って顔。

 えっちな顔だったもん。


 でも、ジェイドさま、だいすき。


 パパがにっこり。

 フランはうなづく。


 フランたちのおねがいはただ1つ。


 フランが、ジェイドさまの、おヨメさまになるの!


 ノウンも、ジェイドさまちゅきちゅきって……さっき、きこえた。


 フランが、いちばんだもん!


「だから、ジェイドさま、シんじゃえ」


 フランが吐くのは『腐乱』のブレス。

 パパもあわせて、『破滅』のブレス。


 うずまくブレスはシニガミのパレード。

 ジェイドさま、どうする?


「なかなかに派手ではないか。これはこれで盛り上がるが、次は直接来るが良い。水、雷、火魔法、起動!」


 ジェイドさまは水のかべを作った。

 それでブレスをふせぐの? ムリだよ?


 でも、かべにかみなり魔法をぶつけてる。

 ジェイドさまが作ったかべだよ?

 どんどんうすくなってるよ?


 さいごに火魔法だ。


 ドーンって、大ばくはつ!


 ブレス、きえちゃった。


 じゃあ、しっぽ!


 パパといっしょに、びたーんびたーん!


 ドーンドーン?


 しっぽーぉおっ!


 しっぽだけ、とんでった!


 いたーいの!


 おこったー!


 からだで、どーん! つぶれちゃえ!


 パァンって、つぶれたよ?


 あれ? ジェイドさま?


「残念、それは私の水魔法と錬金術で作った人形だ。うむ、もう少し水を減らして土を混ぜるか……。皮膚の感触の再現が難しいな」


 むずかしきことゆーてる!


 でもかっこいいの、さすがジェイドさま。


 じゃあね、じゃあね。


 これが、サイゴ。パパ、やるよ。


「フラン? それをやるのですか? ……ジェイドさま……そこそこの最終奥義です。お覚悟を」


 まだパパの力をかりないとできないの。


 パパがお空にブレス。

 それにフランの力、ねるねるねーる。


「大きな木ができたよー! このぉ木なんの木はめつの……」

「それ以上はマズい!」


 ジェイドさまが何かゆーてる?

 でも気にしなーい。


「くさったリンゴがおちちゃうのー」


 光でできた大きな木からまっかなリンゴがおちる。


「リンゴがおちーたらー、ぜんーぶ、くさるでしょー。ぜんーぶ、はめつでしょー」


 リンゴにはフランの『腐乱』がぜーんぶ入ってるから、じめんにおちたらじめんがくさるよ。


 たぶん、おしろまで。


「派手で危ない演出だが、そうか、我ならどうにかできると踏んでのことか。良いだろう。こんなこともあろうかと、素材は持ってきている。錬金術! イリジウムにて器を生成!」


 白くかがやく大きなうつわ。


 それがわたしのリンゴを止めた。


 でもとけない、なんで?


「では我も派手にゆこう! 痛いだろうが、ちゃんと治す。我慢するが良い! まずはドラン!」


 ジェイドさま、イヤイヤするけどうごけないパパに向けて、大きなヤリ、なげた。


 ささった。さきっちょだけ。いたそー。


 でも、ジェイドさま、ヤリのうしろ、ばくはつさせた。


 そのイキオイで、パパかんつー。


 ジェイドさま、フランに、それ、するの?


「大丈夫だ、フランよ。熱が出て、お尻に座薬を入れるようなものだ」


 ぃやだぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁあ!


「フラン様、場外。ドラン様、戦闘不能。そのため、ジェイド様、勝利」


 あ、リングのおそと、出ちゃった。


 しんぱんのテンテンが、ジェイドさまのかちって。


「うーむ。フランにも勝ってしまったか……早々に負けると思っていたが……あぁ、我に気を使ってくれているのか」


 ジェイドさま? ふつうに、つおいよ?


「フラン、ドラン、よく戦った。褒美は無いが、良い内容だった。これからも精進せよ」

「身体も治していただいた上にそのような……勿体ない言葉でございます」

「ごほうび、なし……うぅ」


 ごほうびあったの、わすれてた。

 負けたから、しょーがないの。


 でもね、パパが、リングをおりるときに、おしえてくれた。


「フラン、称号を見なさい。ジェイドさまは、もしかすると、最初からこうするつもりだったのかもしれませんな」


 フランは、ステータスを見た。


『【生贄之絆】サウザンドチェリードラゴン(現在使用不可)』って。


 パパもステータス見せてくれた。

 おそろい。


 なんだろう。

 あったかい。

 そんなかんじ。


 パパもよく分からないみたい。


 でもね、でもね、うれしい!


 じぇいどさま、ありがとぅ!


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

デレデッデレデッデーンデーデデッデッデッデデーンデーンデーンデデッデ♪


フラン:このー木なんの……

ジェ:もう止めて! Norinのライフはもうゼロよ!

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