17-0魔王様、武闘会に出る

 僕が作った兵器とは言え、一兵卒どころか、ただの鉱夫が魔鉱石を破壊してしまったのはやり過ぎた。


 ついね、ついだよ?


 錬金術でRPG7と弾を作ったら、『防御貫通』乗っかっちゃったんだもん。


 どうも僕の作る爆弾系には特殊な効果が乗るらしい。


 嬉しいよね。

 僕ってステータス弱いけど、役に立つモノ作れるんだもん。


 そりゃ量産しちゃうよね。

 1万発分。

 RPG7そのものは30個しか作らなかったんだけどね。


 でもさ、なんで全部ここにあるのさ?


 僕、ちゃんと管理をお願いしたよね、テンテンに。


「はい、管理、任された。だから、持ってきた。ジェイド様専属部隊ごと。ジェイド様の、兵器だから。管理、完璧」


 僕がちゃんと指示しなかったのが悪いね。

 そうだね。

 みんなゴメンね。


「ジェイド様、先程は言い過ぎましたが、きちんと報告していただかなければ、軍の運用に支障が出ます。一応、私は総司令ですので、独自運用されるにしても、報告、連絡、相談くらいはお願いします」


 いつものミシェリーだ。

 さっきは関西弁で……。


「なんなんあれなんなん、なんでなん、なんでこないなことになっとんやねぇぇん! じゅぇいどさまぁ? きっちーと教えてぇなぁ? それともなにぃ? ウチら、必要ないゆーん? ふぇぇん! って泣くでぇ!? ええんかぁ!? 四天王泣かせてエエんかぁ!?」


 と目を見開いて発狂していた。

 ちなみに、ギリは泡を吹いて現実逃避しており、ノウンはヒデオにストリーファイトを挑みに行った。

 フランはラナ料理長お手製のサンドイッチを食べながら、花火大会に来たみたいにキャッキャと喜んでいた。

 キャッキャッ(σ≧▽≦)σ←こんな感じで。


「本当です。事前協議に無いことな上、世界の法則を乱すのは止めてください」


 キレーヌさんも、今でこそ落ち着いているが、さっきはまぁまぁ酷かった。


「魔鉱石を容易く砕く? ふふ、神は言っているわ。そんな兵器で大丈夫かって。大丈夫じゃない! 大問題よ! 一番良いものを頼んだら、世界が滅んじゃうくらいダメじゃない。あなたなんなの? この大地ごと、相手の世界も消す気なの? お願いだから私の結婚相手まで消さないで!」


 目からハイライトを消さないで。

 危うく漏らすところだったよ。


 僕はきちんと説明した。


 魔王の威厳を保ちながら丁寧に説明した。


 ゴメンね、ミーシャ。


 ミーシャがどれだけ人外魔外の存在か説明したら納得してくれた。


 視界に入った瞬間にどこからともなく殴られ、死なない程度に痛め付けられ、情報や資源を徹底的に奪われ、搾り取るモノが無くなった段階でトドメを刺してくる見た目だけが可愛い女ってね。


 最初は誇張が入ったかもしれないけど、それが美紗のプレイスタイルだ。

 この世界をゲームと同じように考えているなら、これくらいは平気でやる。


 みんな、白目を剥きかけながらも、ちゃんと理解してくれた。


「これでも準備が足りているとは思わん。『黄昏』は間違いなく我の想像の上をゆく。話した者もいるがもう一度言う。我ですら、『黄昏』に勝てるかは怪しい」


 むしろ不利って話はしたよね。


 そこから先はトントンと進んだ。


 調印式が行われ、サインをする。


 これでようやく、人魔和平案が成立した。


 でも、これで終わりじゃない。


 ようやく、ここから始まる。


 間に合うかどうかは、きっと僕次第。


 ミーシャ、僕は君が大好きだ。

 愛してる。


 だからこそ、絶対殺す。


 あぁ、早く会いたいな。


 僕は美紗のことを想いながら、調印式の後に行われる催し物へと足を運んだ。


 何の事はない。

 勇者や四天王の個人技を、互いに見たいがための催し物だ。


 武闘会らしいけど、トーナメントの形式がおかしい。


 厳選な抽選の結果とは言うけど、実質的な勝ち抜き戦だ。

 参加者は12名なのに、10試合やらないと優勝できない。


 第一試合、僕VSノウン・マッソー。


 ノウンは試合前からげんなりしている。

 以前、僕が腕を爆発させたもんね。


 ノウンだけじゃない。

 みんなやる気が無さそうだ。


 実は僕もそんなにやる気じゃない。


 だって、最弱の魔王だよ?

 弱いところを見せつけてどうするのさってなるよね?


 一応僕がどれだけ弱いか知ってもらうって言うのは有りなんだけど、観衆の前でやることじゃない。


 だから、僕は盛り上げ役に徹する。


 それが、全体士気に関わるからね。


「ノウンだけではなく、皆に告ぐ。本気で来い。我に勝った者には褒美を取らせよう。何でも言うことを聞く、というのはどうだ? 魔鉱石を砕くこともできるし、錬金術で望むモノを創造してやろう。我の知識には限りがあるが、その中でなら好きにせよ。難しかったか? 我ができることなら、何でも1つ、願いを叶えようと言うことだ」


 だから、大盤振る舞いだ。

 もちろん、僕にできることだよ?

 できないことはできないって、ちゃんと断るからね。


 だからねノウン、急に無表情になって金色のオーラを発しなくても良いんだよ?

 目の色が赤くなって十字に輝いてるように見えてるよ?


 他の皆もアレだ。赤とか青とかよく分からないオーラを出している。


「ジェイド様、何でも、何でも言うこと……」


 ノウンに、もう僕の声は届かない。


 僕は派手に負けるつもりだったけど、死なないように頑張った。


 でもね。

 みんな優しいんだ。

 なんだかんだ、手加減してくれた。


 結果、僕を優勝させてくれたからね。


 世界一武闘会は、すごく盛り上がって、大成功で終わったよ。


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

Norin:パターン金、ヤバいです!

デンッデンッデンッデンッドンドン♪

???:制御不能! リミッター解除! 1ターンの間、攻撃力3倍! 繰り返すわ! 制御、不能!

ジェイド:゚Д゚)ナ、ナンダッテー!!(゚Д゚;(゚Д゚; )



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