15-4外伝3ハートのエース

 俺はアイ・スクリームとロドラ・コンクエストと言う勇者2人に鉄槌を下した。


 だってそうだろ?


 みーくんは俺のだってわざわざ通信してまで言ったのに、殺しに行って失敗して帰って来たってなぁ?


「あたい! そんな話、聞いてねぇし!」

「魔王といい、ミーシャといい、理不尽……だゾ……ガクッ」


 アイはまだまだ元気だな。

 ロドラは力尽きて動かない。

 大丈夫。死んじゃいない。

 ここは城の地下にある模擬戦闘試験場。


 鉄槌と言っても、俺と模擬戦しただけなんだけどな。


 収穫は2つ。


 1つは、みーくんが異界にある『ノース・イート』に居たこと。

 本当にいたとは思わなかった。

 嬉しくて、胸がいっぱいだ。

 だが、懸念事項が1つ。

 みーくんからの伝言だ。


 返り討ちだ。


 ってさ。

 どーゆーことだよ?

 俺との運命的な再会を、とーっても喜んでくれると思ったんだけど、なんかコレ、バトる流れになってないか?


 いや、みーくんのことだ。

 ゲーム感覚でいるのかもしれない。


 うーん……下手すると殺し合いだな。


 いや、下手しなくてもそうなるか。


 良いねぇ。みーくん、その気だな?


 雌雄を決しちゃう?


 じゃあ俺も訂正だ。


「魔王、ジェイド・フューチャーは俺が殺す。悪いが、ネイ爺さんにも譲れない。良いな?」


 満場一致で許可は出たけど、俺は相当不気味に嗤っていたらしい。

 後でネイ爺さんとショーコ姉に叱られた。


 もう1つの収穫は、俺のスキルと力についてだ。

 アイとロドラの二人を相手に、俺は難なく勝ってしまった。


 ポンくんもショーコ姉も唖然としていたし、ネイ爺さんは目が見開いていた。


 でも、俺が一番驚いた。


 力は10でも防御貫通だから、相手がどれだけスキルや魔法で硬くなっていても普通に殴れる。

 覚醒した時だけなのかと思ったが、防御貫通はパッシブスキルみたいでずっと効果が発動していた。


 アイの氷剣だけは特別仕様みたいで、何回か耐えた。

 もちろん無条件に最強の矛って訳じゃない。

 物理的な盾とか鎧には防がれるし、鉄を殴ったら痛いのはこっちだ。


 防御貫通だけでもだいぶ反則級だが、『ハートのエース』がさらにえげつなかった。


 ネイ爺さんが提案してくる。


「では、これより我輩含め勇者5人と、ミーシャで一戦交えるぞ! アイ、ロドラ、立てぇい!」


 提案じゃなくて命令だよな。

 ネイ爺さんの声で2人が立ち、背筋が伸びる。


「閣下、良いんすか? やり過ぎると『老い』が……」


 ポンくんが何か心配しているが、ネイ爺さんが手で制す。


「構わぬ。じゃが、時間は3分である。全力でゆく。各々、手を抜くな。魔王に挑むつもりでかかれい!」


 そう言って、もう始まった。

 俺、良いって言ってないんだけど。


 まぁ、俺も構えていたから、初動は完璧だ。


 まずはショーコ姉を強めの足踏みで潰す。


 ショーコ姉に直接蹴りを喰らわせた訳じゃない。その場で床を蹴り付けただけ。


 それでショーコ姉は胸を抑え、倒れ込んだ。


 背中の翼で羽ばたいたポンくんに、拳を見せ、殴る。

 俺が空を叩くと、ポンくんは墜ちた。


 ネイ爺さんが一番に肉薄してくる。

 錬金術で床の素材を利用し、石の剣をいくつも作る。

 ネイ爺さんとはまともに打ち合わない。

 馬鹿力だからな。

 石の剣は受け流しのため、盾のために使う。


 たまーに石の剣をひょいと担いでネイ爺さんにぶつける。

 ネイ爺さんではなく、ロドラとアイが口から血を吹いて倒れる。


 それから数合、ネイ爺さんと打ち合い……とは言っても俺の出した力は蚊を叩く程度だが……それでネイ爺さんの膝が崩れた。


「こ、これまでじゃ。なんという……スキルよ。制限無しで、この力。これが『黄昏』か……」


 勝っちゃったよ。

 これはヤバイな。


 『ハートのエース』


 別名『心臓の撃墜王』ってところか。


 俺が敵意を向けた相手を対象とし、俺の如何なる攻撃も心臓部に直撃する。

 さすがに心臓を直接ぶん殴る訳じゃない。

 ゼロ距離で、心臓付近の胸を殴る感じだ。

 防御貫通だから、殴ったらそのままの力が相手に入る。

 当然、オンオフも可能。それもいつでも任意のタイミングで。


 どう防ぐんだよ?

 殴られた瞬間に治癒魔法かけるくらいか?

 それでも痛むからキツいだろうな。

 あとはサイボーグとか、心臓の無い相手は無理だな。

 俺の視界に入ってないと発動しないっぽいからな。

 ロボに乗られると無理だな。


 ……みーくんならやりかねない。

 対策を考えとこう。


 一応、なんちゃって治癒魔法を使えるので、アイとロドラから治していく。

 放っておけば治るけど、練習はしなくちゃいけないからな。


 一通り治癒魔法を掛け終わったところで、頬を膨らませたショーコ姉に文句を言われた。


「私から潰すの、ズルい。良いとこ何にもない」


 閃光なんて見るからに速そうな勇者は速攻でやるだろ。

 普通に初見殺しだもんな。


「あたいのアイスソード拾えよ! あたいが覚醒できないだろ!」


 アイも便乗してくる。


 誰が取るかよ。


「次は取れ、ミーシャよ。ショーコではなく、最初は我輩を倒せ。まだ30秒しか経っておらん。あと2分半。やるのである」


 縛りプレイ、ハードモードが始まった。


 断れる雰囲気じゃない。


 だが頑張った。

 必死で頑張った。


 俺は視界を紅に染めながら、他の勇者達を倒し切って咆哮をあげた。


 さぁ、みーくん。

 俺もスパルタで仕上げていくからな。

 覚悟しとけよ!


ーーーー Norinαらくがき ーーーー

アイ:なんであたいのアイスソードって、奪ってくれないと覚醒しないんだ?

ミーシャ:メ几

     木又してでもうばいとる!

アイ:な、ナニをするミーシャ、アーッ!

ミーシャ:ねんがんの、アイスソードをてにいれたぞぉ!

Norin:おめでとう

ミーシャ:次はお前だぁ!

Norin:アーッ!

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