14-0魔王様、追い掛ける
勇者達とは、思った以上にとても有意義な時間を過ごせた。
完全に敵対するようなら、錬金術で天幕に仕込んだ大量の爆弾を起動させて、その混乱に乗じて逃げる算段だったけれど、僕の杞憂だったね。
まさか『勇者の教典』が使用不能になってるとは思わなかったけど。
でもアレって、ゲームで言うと完全にアレだよね?
続編の予告だよね。
下手すると、まだチュートリアルの可能性あるよ?
全ては『魔王の系譜』次第か。
嫌な予感しかしないなぁ。
「まおーさまー! たのしー! ふぁーーー!」
僕の背中でフランは、はしゃいでいる。
フランが楽しそうで本当に良かった。
お、魔王城が見えた。
夕方に帰ると書き置きしたのに、お昼前に帰って来た。
まぁ、ランチボックスのサンドイッチは全部食べちゃったし、夕方までいたら腹減りで大変だっただろうから、早く帰るのは良いんだけどね。
みんなの予定が僕のせいで狂わないか心配だよ。
庭園に降り立つと、ミシェリー、ドラン、ギリが揃って腕を組み、頭を悩ませていた。
「パパー! ただいまー!」
しかし、フランは関係無く突撃する。
それでようやくこっちに気付いた3名は、ドランはしゃがんで手を広げてフランを待ち、ミシェリーとギリは恭しく頭を下げてきた。
「良い、面を上げよ。予定より早い帰還となったが、各々の業務は続けよ。だが、何かあったのか?」
僕らのことで困っている感じではないね。
それは良かったけど、何か問題でもあったのかな?
ミシェリーとギリは顔を見合わせ、少し悩んでから言ってくれた。
「いずれにせよ、ジェイド様に報告することではありますのでお伝えします。まだ詳細が分かっておりませんので、経過報告とさせていただきます」
「それで構わん。ミシェリーよ、続きを」
物事に報告、連絡、相談は大事だからね。
「実は、つい先程、魔王城とエルフD村の、限り無く村に近い地点にて、ギリが強大な魔力を感知したのですが……数分で消えました。詳細はギリからどうぞ」
「とても強大な『氷』の魔力だったのです。私も勘違いかと思いましたが、魔王城の感知システムを確認したところ、感知された記録が残っているとテンテンより連絡がありまして……ノウンが別件でそちらにすでに向かっておりまして、対応するように言ったのですが……」
何か言い淀んでいる。
「ノウンやし……」
「ノウンか……」
「ノウンですからな……」
ノウンに対する扱い、ちょっとひどくない?
まぁ、魔力1のノウンにお願いすることじゃないのかもだけどね。
「そうであればギリが向かえば良いだろう? 他に適任な者でもいるのか?」
「はい、この手のことならば、私と同等の知識を持つフーリムがおります。ノウンは、今料理長と共に、フーリムを迎えに行っているところですので」
ん?
今、どういう状況? なぜ料理長も?
「ドランよ、簡潔にここまでに至る状況を説明せよ」
「はっ、宴の後、まずフーリムが勝手にエルフD村へと抜け出しました。恐らく忘れ物でもしたのでしょう。それをノウンと、フーリムと仲の良いらしい料理長とで迎えに行きました」
「なるほど、そして魔力を感知したという流れだな?」
「左様でございます」
流れは理解した。
「では少し見よう。『星ノ眼』を起動する。視覚を共有したい者は我に触れよ」
あれ、ここに4人しかいないのに、5人の手が触れている。誰か両手で触ってない?
ん? みんな両手で触ってる?
12個の手を感じる。
更に1人増えたよね?
変なとこ、触らないでね?
「ノウンと料理長と……フーリムと…………。ダレダコイツラ!?」
見つけた。けれども。
ノウンと料理長が、簀巻きにされたフーリムを庇うように陣取り、そこに立派な剣を携えた2人の剣士が今にも襲い掛かろうとしていた。
僕は即座に『星ノ眼』を解除する。
僕に触れていた謎の2人はテンテンとシッシだった。
「くっ、さっきの今でもう動いたというのか!?」
嫌な予感がこうも早く的中するのは止めてもらいたい。
「魔王様、何が起こっているのです?」
ミシェリーの疑問はもっともなんだけど、説明している時間が無い。
「恐らくだが、ヤツラは『勇者』だ! 詳細は後で話す! まだ他にも『勇者』がいる可能性がある! ミシェリーは魔王城の防備を固めよ! そして魔王城内部の徹底的調査だ! 羽虫一匹見逃すな! ドラン、フランは龍化して周囲の哨戒! ギリは他に常時では有り得ん魔力の検知が無かったか事細かに調べよ! テンテン、シッシはミシェリーの指示で動け! 我は……」
僕はどうする?
いや、選択肢は1つだけだ。
「フーリムを、追い掛ける!」
僕は全力で魔法を使い、フーリムのいるところへ翔んだ。
ーーーー Norinαらくがき ーーーー
フーリムの知能指数はギリと同レベル帯。
魔王城図書館にて、ガリ勉フーリム嬢として魔族間では結構有名。
いるよねー。
才色兼備で文武両道の高嶺の花って。
フ:ふっ、実は知らないクセに。
Norin:ヤメて! 真詠で見ないで!
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