13-2アイシテルミッツ三勇魔会談②
ーーーーキレーヌ・タイムカードゥ24世ーーーー
200年生きてきて、こんなに緊張したのは初めてです。
選択肢を間違えば死ぬんですよ?
分かりますか? この気持ち?
うっかり若返り魔法が解けたらどうなるのかしら?
魔王、逃げます?
いや、多分私、殺されるでしょうね。
この美貌で生かされていると言うことにしましょう。
まぁ、先程と違って余裕はほんの少しだけ出来ました。
勇者と同郷というのは、朝食が口から出そうになりましたが。
「魔王ジェイド、あなたが嘘偽りなく言葉を述べていることを勇者によって確認しました。魔王とは言え、先程の非礼を詫びましょう」
「良い。我がそちらの立場でも同じようにしたであろうからな」
なんで魔王口調に戻っているのですか!
さっきみたいにフランクに!
声が震えてしまいます!
「ねぇ、ジェイドくん。その口調、怖いから今は無しにしない?」
「えー?」
「おねがいっ!」
「しょうがないなー。じゃあ、一応、僕も魔王だから、キレーヌさんって呼ぶね」
感謝! 圧倒的、感謝!
ナイスですルナ!
後でたくさんの褒美をあげましょう!
「ジェイド……さん……が仮にこのまま和平を結ぶとしましょう。ですが、大きな問題があります」
「民の感情ですよね」
「そう。戦争なので当然死傷者が出ています。まぁそれも互いに金銭などで補填し合えば良いだけなのですが、替えの効かない者がいます。誰だか分かりますか?」
私は露骨にとある場所へ視線を向けます。
「なるほど、『勇者』ですか。『殺』は……生きているんですか?」
「今は辛うじて生きています。勇者は民にとって『希望』です。その勇者を害したまま和平と言うのは、虫が良過ぎると思いませんか? もちろん、これは魔族側にも言えるでしょう。最古の最強四天王を害されて、魔族も黙って、はい和平、とはいかないでしょう?」
さぁ、魔王、どうします?
「うーん、ねぇウーサー、『時』で『殺』の何を停めてるの?」
「血液と体組織である。思考は遅いが、最低限の反応はできるようにしている。まさかとは思うがテキトーな治癒魔法は掛けるなよ? 無駄であるからな。『時』で停めている上に、一瞬で全快する程の魔法でなければ即座に失血死するであろう」
「へぇ。じゃあ『時』を停めてる上から治癒魔法掛けたら良いんだね。って言うか、その方が治療効率も良いのでは? 良いなー。すっごく便利じゃん『時』の力」
ふふんと鼻を鳴らすウーサーですけど、ジェイドに乗せられていませんか?
大丈夫ですか?
ジェイドは立ち上がり、ウーサーの傍へ。
そして見上げ、ジャックを見つめます。
そして、微笑み、頷き、手を翳す。
「もう『殺』の勇者は全回復したよ」
え? 何を言っているのですか?
『ウーサー、出せ。マジで、治された』
ウーサーの目が点です。
分かります。
おそらく私も同じでしょう。
ウーサーは『時』の力を解除します。
ジャックは自らの足で、その場に立ちました。
「悪ぃな、ジェイド。俺様はジャックだ。好きに呼べよ。話の流れは理解してらぁ。今はてめぇを殺さねえ。この借りはいつかキチッと返してやる。だが、ドランをヤッたことに関しては謝らねぇぞ」
ですが、いきなり挑発的です。
もっとも、言っていることは何も間違っていませんので、このまま様子を見ましょう。
ーーーー ジャック・ザ・ニッパー ーーーー
天幕に魔王がやってきやがった。
俺様はもう殺されたと思った。
だが、生かされている。
それどころか、全快にしやがった。
一瞬でな。
「構わないよ。突発的な戦闘は、未だにどこでもあるみたいだし。その内の1つでしょ。勇者と四天王がかち合わせたとなれば、お互い戦うしかないし」
生かして詫びでも入れさせようとすんのかと思ったが、どうも違うらしい。
「それに、ドランも治療済みだよ。あ、これ機密情報だった。ここだけの話ね」
うっそだろ?
魔王すら屠れる最強の一撃ってスキル説明に書いてあったんだが、治されんのかよ。
勝つ手段なくね?
「という訳で、ドランも『殺』の勇者も完治しましたけど、他に和平交渉を妨げるナニかはあります?」
うっへー。
笑顔だが、目が笑ってねぇ。
こいつ、元から強ぇヤツだ。
魔王、なるほどな。
俺様がなんで魔王じゃなく勇者として
こいつ、なるべくして魔王になりやがったな。
殺すにしても、今は殺せねぇ。
やり合うにしてもだ。
一旦こいつを退かせねぇと、俺様達は確実に消し炭。
それが分かってっから、ウーサーもキレーヌ様も、下手に動けねぇんだな。
って訳で、この状況を何とかできんのはルナ、てめぇだけだ。
マジで、人類の未来、任せたぜ。
ーーーー Norinαらくがき ーーーー
キレーヌ様、お名前公開。
ブーラック法国法皇キレーヌ・タイムカードゥ24世。
由来、要る?
神の名の下に、24時間休みなく働きます。神事なので無償労働。
死ぬのでは?
タダ働きだから、疲れたら勝手に寝ます。
給料は?
お布施や寄付を募ります。
どこの世界もブラックはあります。
魔王領は現代日本社会と比べてもそこそこホワイト。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます